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女王と騎士とマッドサイエンティストとおっさん

退院しました。

全然書けなかったです笑

週一では更新できるようにします。

大広間に溢れんばかりの拍手が巻き起こる。

生まれてこの方、歓待とは無縁の人生を生きてきた。

だからといって特に嬉しいとは思わず、ただ戸惑ってしまうだけだった。

ああ、サクヤさんとお話していたい。


大広間の奥、階段を上がった上には女王様が座っている。

私は階段の途中にある壇上まで通された。


「よく来てくれた、勇者殿」

「お招き頂きありがとうございます女王陛下」

「皆に勇者殿を紹介したいのだが、構わないであろうか」

「はい、もちろん、です」

「うむ」


女王様は近くにいた従者に促す。


「ご静粛に!」


拍手もなりやみ、静けさに包まれる会場。


「これより、この度の王国を救って下さった英雄をご紹介致します」


「7代目勇者 スズキ・ヨシオ様であらせられます!」


またも盛大な拍手。


「勇者様には、女王陛下より勲章が授与されます」


階段を上がるよう指示を出される。

え、どうしよう、受け取り方とか知らないぞ。

や、やばい、そういう段取りはあらかじめ教えておいてほしい。

卒業証書の受け取り方では駄目かな。

……駄目だよね。

階段を一段上る毎に頭が真っ白になっていく。

ついに女王様の前まで来てしまった。

近くで見ると小さいなーほんとに。


(勇者殿、片膝をついて下され)


女王様の小声が聞こえた。

幻聴かと思い顔を見やると、天使の様な笑顔でそれが幻ではないことを教えてくれた。

私は片膝を付き、首を差し出す。


「此度の働き、誠に大儀であった。よってこの王国英雄勲章を授ける」


勲章が首に掛けられる。

けっこう重い。


「次に、魔王討伐連合軍の勇者の証を授ける」


なんだそれは、王国公認と言うことか。

よくわからないが、貰うほかない。


(立って下され)


促されるまま立ち上がると会場に向かわされ、会場より一段上がった所で制止された。


「これより先に魔王軍との戦いはさらに過酷を極めるであろう。しかし!我々には勇者殿が付いておる!今宵は歓待の宴だ!存分に楽しんでくれ!」

















「勇者様、私は××××と申しまして、しがない×××でございます。いや~勇者様のご活躍は――」


……もう何人目だろうか。

貴族だの商人だのが私の所に来ては勝手に自己紹介して去っていく。

覚えられないよ!せめて名刺を持って来て下さい!

別にパーティーを楽しみたいと言う訳ではないが、辛いのは勘弁してほしい。

マリアンヌさんは遠目からこちらを見ているけど近付いてくる気配もないし。

知り合いがいないパーティーと言うのは苦痛だ。


「にはは、お疲れのようだね~」

「あ、シェリルさん」

「やっほー!シェリちゃんだよー!だよ!」


にこにこ笑顔のシェリルさん。

なにか楽しいことでもあったのだろうか。


「パーティーでも白衣なんですね」

「そうだよー、楽だしね~。シェリちゃんだってすぐわかってもらえるし~」

「確かにそうですね」

「ふふふ」

「楽しそうですねシェリルさん。パーティー好きなんですか?」

「いんや~。こういう席があってもいつもはスルーしちゃうかな?かな?」

「そうなんですか?王宮で働いているのに大丈夫なんですか?」

「まあシェリちゃんが変わり者だってことは周知されてるからね~」


そういうことか。いいのかそれで。


「そんなことよりさ~あ?」

「はい?なんでしょ、うお!」

「おじさま、この後時間ある~?よかったらシェリちゃんとあま~い夜を過ごさないかな?かな?」


急接近したシェリルさんは私の胸に指を這わせる。


「な!なにを!?」

「? どうしたのおじさま、もしかして緊張しているのかな?かな?」

「は、離れてください!」


なんとか硬直する前に距離を取れた。

なんなんだいったい。


「もしかしておじさま……童貞さんなの?」


どどどど童貞ちゃうわ!

とは言えない。


「ふ~ん、そっかあ~、そうなんだ~」


「おもしろくなってきたぞ」というような顔。

舌なめずりしている。

まるで捕食者だ。


「あのねおじさま、シェリちゃんはね――」

「その辺にしてもらいましょうか、ホフマン博士」


マ、マリアンヌさん!ようやく助けに来てくれはりましたか!


「ありゃ、お邪魔ものさんがきちゃったよー」

「失敬な、私は陛下より勇者様をお護りするように仰せつかっているのです」

「シェリちゃん、別に取って食べようなんて思ってないないよ?よー?」

「勇者様が困惑してらっしゃる、不用意に近づかないで頂きたい」

「もしかしてー妬いてるのかな?かな?」

「な!なにを馬鹿なことを!?」

「にはは!やっぱり図星じゃーん!まあわからなくもないけどねー」

「と、とにかく勇者様を困らせるような事はやめて頂きます」

「困らせるなんて、シェリちゃんはただ、おじさまとお近づきになりたいなーって思っただけだよ?だよ?」

「なにを騒いでおる」


少し下の方から凛とした声が響く。


「へ、陛下!」

「あ~女王様~」

「楽にしてよい。それより何事だ、あまり騒ぎ立てるでないぞ」

「申し訳ありません陛下」

「ごめ~んね?」

「勇者殿、臣下が無礼を働いた時はすぐに言ってもらって構わないのでな」

「いえ、大変よくして頂いていますよ」

「そうか、それならばよいのだが。連れの者の1人の調子が悪いと聞いておるがいかがであろうか」

「今はまだ眠っていますが、いずれ目覚めると思います」

「なにかわらわにできることがあればいつでも言ってくだされ」

「お心遣い感謝します」

「ではゆるりと楽しんでくだされ」


すごいなー。

どうしたらあんな風に振る舞えるのかな。


「あれで9歳とは思えんよなー。やっぱり環境かねえ」


ん、急に隣から野太い声がする。

見やるとそこにいたのは冒険者と言うか、歴戦の猛者っと言った風体の男性だった。

大柄で顔や露出している肌の所々に傷痕が伺える。


「シーガンフ!」


マリアンヌさんが声を上げる。


「よう、マリアンヌ。相変わらず美しいな!」

「気安く話しかけるな!」

「なんだよ連れねえなー」

「シーくんおっすおっす!」

「おお、シェリル嬢じゃねえか、ちっこくて見えなかったぜ。だが乳はでかくなったんじゃねえか?ちと揉ませろよ」

「にはは、相変わらずだねーシーくんは」


わきわきと伸ばされたいやらしい手をするりとかわす。


「あの、この方は?」

「紹介が遅れやした。俺は『四方聖』、南方のシーガンフっていいまさあ」


『四方聖』、ってことはマリアンヌさんと同じ軍人と言う訳か。


「そうでしたか、私は――」

「おおっと!みなまで言わなくてもわかりやすぜ。勇者様でございんしょ」

「そ、その通りです」


変な言葉遣いだ。一応気を遣っているのか。


「シーガンフ、なぜ貴方がここにいるのですか」

「そりゃあ陛下の召集があったからに決まってんだろ」

「陛下の?」

「まあ俺も詳しいことは聞いてねえよ。まださっき着いたばかりだから。そんなことより、お前負けたんだって?」

「!」

「聞いたぜ、やっこさんの幹部が来たってなー。ほんでお前さんが負けたってこともな」

「……」

「だから前から言っただろう?お前さんにゃこの仕事は荷が重いって。おとなしく陛下付きの護衛をやってりゃよかったんだ」

「た、確かに私は負けたが、貴方だって――」

「俺でも同じ結果だったと?『四方聖』最弱のお前に言われてもな」

「あの、それくらいにされては」


なんだか雲行きが怪しいので口を挟んでおく。

というか負けたとは言えあれだけ戦った人を悪く言われるのは気分が良くない。


「今はこれから先のことを考えて行動するべきでは?マリアンヌさんは十分お強いですし、貴重な戦力だと思います。第一、あの場に貴方がいてもアルマゼルさんに勝てたとは思えません」

「ほお……なかなか言いますね勇者様」


空気が張り詰める。シェリルさんだけニヤニヤしているけども。

ちょっと余計だったかな。

しかしやがて緊張を解すようにシーガンフさんが笑う。


「はっはっは!勇者様がそうおっしゃられるのであればそうなんでしょうな!」


なんとも豪快に笑う人だ。耳が痛い。


「いやーすまんすまん。国の危機に何もできなかった歯痒さもあるのだ!許せマリアンヌ!」

「え、ええ」

「では勇者様!またどこかで!はっはっは!」


……なんだったんだ。

なんとも体育会系と言うか、苦手なタイプの人だ。


「……申し訳ありません勇者様。ご迷惑をおかけしました」

「迷惑だなんて、それにしても豪胆な方ですね」

「『四方聖』ですが、傭兵上がりなので礼儀も弁えておらずお恥ずかしい限りです」

「傭兵?」

「『四方聖』は武力や知力、魔力など、特別に秀でたものがあれば、身分に関係なく授かれますので」

「そうなんですか」


あの人は見るからに武力に秀でた、って感じだったな。


「あれー?マリちゃんとシーくんて付き合ってたんだっけ?」

「え?」

「な!」


え、そういう関係だったの?

さっきの会話も痴話喧嘩みたいのものだったのだろうか。

そうだとすると真剣になっていた私は確かに笑い飛ばされてしまうな。


「違ったっけ?」

「断じて違う!昔剣の稽古をつけてもらっていただけだ!」

「ふふ、顔真っ赤~。マリちゃんはかわいいな~」

「シェーーホフマン博士、いい加減な話はやめて頂きたい」


どうやら違うようだけど。

なぜマリアンヌさんはこちらをチラチラ見てくるのだろうか。


「いーじゃん別にー。それよりさー、そろそろこのパーチイ抜け出してシェリちゃんのラボにでもいきませんかおじさま」

「あんな所に勇者様をお連れできるわけないでしょう!?」


どんな所なのか逆に気になる。

しかしもう大分時間も経った。

これだけ顔を出せば女王様の顔も立つだろう。

そろそろおいとまするとしよう。

決して逃げる訳ではない。


「マリアンヌさん、私はそろそろ失礼してもよろしいですか?連れも心配なもので」

「あ、ああそうですね。もうよろしいかと存じます。陛下には私からお伝えしておきます」

「えーもう帰っちゃうの?ラボは~?」

「すみません、またの機会と言うことで」

「ちぇ~」

「それじゃあ失礼します」


















ルミさん達の部屋に戻ると、ベッドに突っ伏す形でサクヤさんが寝ていた。

ずっと看ててくれたんだもんな。ほんとにいい子だ。

ルミさんはまだ目覚めていないようだ。

……このまま目覚めないなんてことはないよね。


ルミさんの髪を撫でるとえもいえぬ不安が募った。

早くまた笑顔を見せて欲しい。

私を笑わせて欲しい。


月明かりが差し込む。


照らされた彼女は、今まで見たどんなものよりも綺麗で、ゆっくりと瞼を開いた。


「ルミ……さん?」


胸が熱くなるのを感じる。

それもその筈だ。





















私の胸には、ひと振りの刀が突き刺さっていた。






戦いたくなくても。

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