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不敗のアルマゼル


「退屈だなー」


かび臭い部屋の中、月明かりにその青い髪を照らされて呟く少年。


「ヘルムートもそう思うだろ?」


仮面を被ったピエロはひらひらとおどけてみせる。


「ほほほ、ワタクシはぜ~んぜんこれっぽっちも退屈などしておりませんよ」

「……チッ、お前に聞いたぼくがバカだったよ」


不機嫌そうに月を見上げる少年。


「他のやつらは?」

「みなさん勇者が現れたので忙しくしているようですねー。これから本格的に戦争が始まるでしょうから」

「ふーん…………ああ゛!?」

「はい?」

「聞いてない!」

「なにがですか」

「勇者!現れたって聞いてない!!」


目の色を変えて少年はピエロを見やる。


「いつだ!いつからだ!?」

「つい先日。もちろん他の幹部はみんなご存知ですよ」

「なんでぼくに知らせない!?」

「あーたずっと眠ってらっしゃったではなーいですか」

「それは退屈だったからで、勇者が現れたってことは動けるってことだろ!」

「まあそーいうことではありますねー」

「こうしちゃいられない!ぼくは部屋に帰らせてもらう!」

「あら、どちらに行かれるので?」

「決まってるだろ!勇者の顔拝みに行くんだよ!ずっと手出しを禁止されてたんだ。勇者が出たなら問題ないだろ!急いで準備しなくちゃ!」

「ほほほ、確かにそうですねー。で・も・まだ殺しちゃダメですよ?」

「大丈夫だって、ちょっとちょっかい出すだけだから」

「くれぐれも魔王様のお怒りを買わないでくださいよー」

「わかってるよ!」



































ぼくはアルマゼル。元魔王だ。

今は訳あって現魔王の下で幹部をやっている。

で、現魔王ってのが世界に喧嘩を売ったのはいいけど、相応しい敵がいないってんでなかなか本格的には動いてくんないの。

その敵って言うのが勇者のことなんだけどさ。

そいつが出てくるまでは動くなって命令されたんだよね。

まあぼくら幹部が動けば王国だろうが帝国だろうが3日で滅んじゃうだろうしね。

そんなつまんないことしたくないってのはわからなくもないけどさー。

ずーーーーーっと待機でお預け状態じゃ、いい加減なまっちゃうよ。

だからさ、ちょっとだけつまんじゃってもいいよね。



















































「という訳でやってきましたー」


巨大な翼を生やした怪物が、王都の街に影を作る。

空を見上げ、悲愴に震える人族の目に晒され、怪物の背に乗っていたぼくは満足気に顔を歪めた。

あー、ちょっとつまむだけのつもりなのにさ。

そんないい反応されたら、困っちゃうなー。






















「あー、愚かなる人族ヒューマンどもに告げる。僕は魔王軍 八雷神はちらいしんが1人、不敗ふはいのアルマゼルだよ。これは挨拶代わりだ」






















狂気の悲鳴が王都を包んだ。










魔王軍。動き出す。

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