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ランクアップとおっさん


2人の調子が戻るまでしばらくかかったが、元に戻ったので冒険者ギルドまで足を運ぶ。

ギルドに入ると、冒険者の数はまばらであった。

恐らくまだビトーの森に残っている冒険者も多いのだろう。

ウェンディさんは帰っているといいのだけれど。


冒険者ギルドはどこも同じ様な作りのようで、カウンターがあったのでそちらに声を掛ける。


「ウェンディさ――ギルドマスターさんはいますか?」


受付嬢に声を掛ける。

なんだか忙しそうに書類をやっつけていたけど、彼女しかいなかったので仕方なし。


「え?――あ、お名前をお願いします」

「スズキ・ヨシオと申します」

「スズキ……あ!す、すぐに呼んできます!」


随分焦っていたけど、なんなんだ。

するとロビーにいた冒険者からひそひそ話しが聞こえる。


「おい聞いたか」「あのおっさんがそうなのか?」「なんでもランクSの魔獣を瞬殺したってよ」「嘘だろ、流石に」「まじだって、森から出てくるところ見たもん」「ほんとかよ」「しかも魔獣を倒した後にその場で飯食ってたらしいぜ」「魔獣の出る森でか」「バカだろ」「おい聞こえるぞ!」


聞こえてます。

この世界のひそひそ話しって筒抜けがデフォルトなんですかね。

勇者の耳がいいだけなのか。

そうこうしているうちにウェンディさんが現れた。


「来たわね!」

「お待たせしましたか?」

「こっちもさっき戻って来たところよ。大急ぎで魔獣を運んだんだから」


そういえば森の外のスパイダーなんとかさんは置きっ放しだった。

帰りに持って来てあげればよかったかな。


「おいやっべえよ」「ギルマスが話してるよ、本物だよ」「だからそう言ったじゃねえか」「サイン貰ってくるか?」「バカ、殺されるぞ」「てか後ろの娘達かわいくね?」「俺もそう思ってた」「俺も」「まじ抱きてー」


こいつら結局そっちに行くんかい。

気持ちはわかるが聞こえていると気分はよくない。

これ2人には聞こえてないのかな。


「ここじゃあれだから、こっちきてもらえる?」

「あ、はい」


カウンター裏から2階には上がらず別室に通される。

どうやら魔獣を解体する施設と繋がっていたようで、巨大な机の上には私が殴り殺したスパイダーなんとかさんがいた。


「改めて見ても信じられないわね。こいつをあなたみたいなおっさんが倒したなんて」


全長5メートルを超えるカメレオンのバケモノ。

うーん、よく見ると結構キモイな。ウケる。


「こっちの都合で悪いんだけど、今回の一件の事後処理が山積みなのよ。だから手短に済ませるわね」


ウェンディさんはいくつかの書類を確認する。


「まずは今回の依頼について。内容はビトーの森の調査だったのだけれど、異変の元凶である魔獣の討伐にて依頼は完了ってことで処理させてもらうわ。そしてこれが報酬ね」


ウェンディさんはインベントリから袋を出して近くに机に置く。

かなり重い音がした。


「今回の依頼難度は魔獣のランクに比例してランクS難度として処理するわ。これはそれに対する報酬ね」


軽く袋の口を開けて見せる。

中にはぎっしりと金貨が詰まっていた。


「それとランクアップさせるって言う件だけど。あなたは特例でランクSにまで引き上げるわ。ルミちゃんとサクヤちゃんはランクAね」

「いいんですか?」

「ランクSの魔獣を倒したんだから、当たり前よ。むしろ単独で倒せる力があるならランクSでも低いくらいよ。2人は森での活躍を見てランクAの実力はあると判断してのことよ」

「やっりー☆いちいち上げるのめんどっちかったんだよねー」

「やりました~!」

「みなさんよかったですねー」

「ギルドプレートは持ってるわよね?ランクアップは後でカウンターでやるから」


一気にランクアップした。

ランクが高ければ色々と融通が利くらしいし、高いに越したことはないとエーリンさんが言っていた。

素直に喜んでおこう。


「じゃあ今回の依頼についての話はこれで終わりね。次に討伐した魔獣の件よ」

「魔獣って、これのことですか」

「そうよ。討伐した魔獣の所有権は討伐者にあるわ。通常魔獣の素材なんかはギルドが買い取って市場に流すの。ランクSの魔獣なんて滅多に出回らないから、これとあなたが持ってるもう1体も是非ギルドに売って欲しいのだけれどどうかしら?」


そうなのか。

後で死体は燃やすつもりだったのだが。

しかし皮とか剥いでバッグにでもするのだろうか。

まあ特に装備に困ってはいないので売っていいだろう。

肉も食べる気になれないしね。


「構いませんよ」

「よかった!ただ、ランクSの魔獣2体分の報酬となると結構な金額になるのよ。査定にも時間が掛かるし、数日は必要なのだけれど」

「あ、そうなんですか」

「あなた達はこれから王都に行くのよね」

「はい、明日の朝には」

「じゃあ一筆書いて、報酬は王都のギルドで受け取れるようにするから、それでどう?」

「王都には何日か滞在する予定ですから、それで大丈夫です」

「決まりね!これでギルドが潤うわ~」


私はインベントリから死体を取り出して作業台に置く。

目をキラキラさせて手と手を組むウェンディさん。

ちょっと年齢的にキツ――いやなんでもない。


「じゃあこれで魔獣の件も終りね。あとはちょっと聞きたいことがあるのよ」

「聞きたいこと?」

「なんで四方聖が出張ってきたかってことよ」


ああ。そりゃそうか。

国の偉い人に連行されて行った私を気にならない訳がない。


「こうしているってことは別に悪いことした訳じゃないんでしょうけど。四方聖が出てくるってことは相当なことなのよ。よければ聞かせてもらえないかしら」


私が勇者だからです。

と言ってしまっていいのかな。

どのみち王都に行けばいずれ知れ渡るのだろうし、今なら問題ない気もする。

するけど、もしマリアンヌさんみたいにウェンディさんがなんらかの理由で勇者嫌いだったらどうしよう。

この国の人のことって全然知らないですし。


「……すみません。ちょっと言えないです。ただ、いずれわかるとは思います」

「そう。まあいいわ。別にギルドはあなたが誰であろうと、犯罪者でなければ歓迎するわ」

「そう言って頂けると助かります」

「これで話は終わり、今回はいい仕事をしてくれてありがとう。あなた程の人ならまたお願いすることになると思うわ」

「はい、その時は宜しくお願いします」


その後ランクをアップしてもらい、私はランクS冒険者になった。






























「なんとか今日も終わりましたね」

「お疲れ様ですヨシオ様」


予約してもらった宿屋の私の部屋に集まっている。


「明日は王都かー☆あたしって王都初めてなんだよね」

「私も行ったことないです~」

「じゃあみんな初めてですね」

「王都に着いたらなにすんの?」

「ヨシオさんは国王に謁見して、勇者と正式に認めてもらう必要がありますね。国の許可がないと表立って行動できませんから」

「王様ってどんな人なんでしょう?」

「今のラクロア王はまだ国王になって日が浅いので、あんまり知らないんですよね。魔王軍との戦争も四方聖がメインで動いているみたいですし」

「そうなんですか」

「まあなんとかなりますよヨシオさん!」

「ヨシオ様なら大丈夫ですよね!」


ルミさんと目が合う。


「ま、がんばれば?」


果てしなく不安だ。

マリアンヌさんの件がなければ特に気にすることもなかったのだけれど。

とにかく心配なのはこの子達になにかが起こることだ。

私だけならどうなってもいいが、この子達が巻き添えになるのはごめんだ。

それだけは許せない。


楽しそうに談笑する彼女達。



「ん?どったのおっさん?」

「いや、なんでもありません」



おっさん、がんばらないとな。







おっさん。予感する。

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