センタの町とおっさん
センタの町。
街並みはキスカとそんなに変わらないけれど、活気はこちらの方があるし、大きい。
なんでもこの町を中心に他の町は広がっており、王都の関所みたいな役割をしているので全ての流通はこの町を経由して王都に流れるらしい。
町に着いてからほどなくして詰所に到着した。
「お話を伺いますので、こちらへどうぞ」
マリアンヌさんの後に続いて建物に入る。
中には兵士の方々がいて、こちらに視線を送ってくる。
……なんだろう。なんだか違和感があるな。
何か警戒されている様な感じがする。
「お連れ様はこちらでお待ち頂けますか」
「あたし達も一緒じゃダメなの?」
「申し訳ありませんが、規則ですので」
どうやら私は別室で話しをするみたいだ。
しかし1人しか中に入れないとは、何か取り調べの様だ。
「ふーん。ま、いいけど☆」
「ではこちらで待ってますね、ヨシオ様」
「はい、お願いします」
「ではスズキ様はこちらへ」
建物のさらに奥へ向かう。
部屋の前に兵士が1人。
中にはさらに2人の兵士がいた。
私とマリアンヌさんが入室すると1人の兵士が扉を塞ぐように立った。
やっぱり取り調べじゃないですか。
「失礼ですが、単刀直入に伺いますね」
部屋の中央でマリアンヌさんが振り返った。
「貴方は勇者様ですか?」
にっこり笑顔を見せるマリアンヌさん。
綺麗だ。
綺麗だけど。
眼が笑っていない。
何と答えるべきか、その笑顔のせいで戸惑ってしまう。
少しの沈黙の後、答えた。
「私が勇者です」
笑顔を崩さないマリアンヌさん。
「そうですか。……鑑定士をここへ」
扉の近くにいた兵士が反応すると、すぐに1人の男がやってきた。
「お呼びですか」
「ええ。この方が勇者様かどうか、確認して下さい」
「畏まりました」
指示を受けた男は間近まで来ると、私の胸の辺りに手を翳した。
「ディティクト ステータス」
あ、他人のステータスって見れるんだ。
私には文字は見えないが、鑑定をしたこの男には見えているのだろう。
「どうですか?」
「《勇者》のジョブを確認致しました。間違いございません」
「そうですか、ご苦労様でした。下がって頂いて結構です」
男は彼女に一礼して部屋を出る。
勇者と認められた様で一安心。
の筈なのだけど、いまだに違和感が拭えない。
むしろ先程までより場が張りつめた様だ。
「貴方が、勇者ですか」
――発声が終わるのと同時に、喉元に突きつけられる、刃。
その細い刺突用であろう剣を抜いたのはマリアンヌさんだ。
剣を突きつけたまま、続ける。
「陛下も人が悪い。このような者に頼らずとも、我々騎士団が居れば事足りると言うのに。私に勇者を探せとは」
「仰る通りですマリアンヌ様!」
突然壁際に立っていた兵士が声を上げた。
先程まで置物の様だったのに、びっくりするじゃないか。
「我々よりこの男の方が頼りになると?」
「誠に遺憾であります!」
「王国に勇者は必要か?」
「必要ありません!」
「ならここでこの男を始末して、勇者は見つからなかった事にするか」
「マリアンヌ様の意のままに!」
「だそうだ。どうする?勇者様」
どうするって。
いやいやいや、「じゃあそれでお願いします」とはならないだろう。
「あの、状況が分かりかねるのですが」
「簡単な事だ。この国の者が必ずしも勇者を歓迎している訳ではないと言う事だよ」
「それで私を殺すと」
「フッ」
マリアンヌさんは鼻で笑うと剣を戻した。
「しないよ。陛下は勇者に会いたがっている。――まあ、会えば幻滅するかもしれないが」
おっさんだからか。おっさんだからなのか。それなら仕方ない。
「明日、王都に送ります。ギルドとは今日中に話を終えるように。宿はこちらで手配するので、指定した所を利用しなさい」
「あ、はい」
「以上です。なにか質問は?」
「だ、大丈夫です」
「では勇者様を応接室へ、それと宿の手配を」
「は!勇者様!こちらへ」
置物だった兵士に促され、部屋の外に出ようとした。
「勇者様、この事は他言されませんように。くれぐれも」
兵士さんに釘を刺される。
はい。わかりました。
気まずい空気の中、ルミさん達の待つ応接室へ。
「おかえりー☆」
「お帰りなさいませヨシオ様」
「ヨシオさん、どうでした?」
「無事、勇者だと認めてもらえましたよ」
「やっぱり王国も勇者を探していたんですね」
「はい。これで明日王都まで連れていってもらえるそうです」
「ヨシオ様、変な汗かいてますけど、大丈夫ですか?」
「へ?いや、大丈夫ですよ?なにもありませんでしたよ?」
どうやら脂汗が出ていた様だ。
しかしマリアンヌさんに剣を突きつけられて脅されたとは言えない。
ましてそれに反応してマリアンヌさんを殺しかけて、それを制するのに必死だったなんて言えるはずもない。
「なんか怪しいですねー」
「おっさん隠し事はよくないよ☆」
「ヨシオ様、なにかあるならいつでも言って下さいね」
ええ娘や。一家に一台欲しい。
「ありがとうございます。その時はお願いしますね」
サクヤさんの頭を撫でる。
「ふぇえ!?」
「あ、すみません。可愛らしかったもので、つい」
「い、いえ!勇者様がよければ続けてください!」
「そ、そうですか?」
「はい!どんとこいです!」
「じゃ、じゃあもう少しだけ」
なでなで。なでなで。
「ふあ~」
気持ちよさそうに撫でられるサクヤさん。
「気持ちよさそうだねサクヤ」
「はい~。おじい様とは全然違います~」
「へー☆あたしにもやってよ!」
「あ、はい」
なでなで。なでなで。
両手を使い美少女2人を撫でる。
なんだこの満足感。素晴らしい。
「あー、なんかわかるかも☆」
「気持ちいいですよね~。幸せです~」
「おっさんに頭撫でられてなにが嬉しいんでしょうね」
おい。肉にしか興味がないからってひどいこと言うな。
……私もそう思うけど。
「……なんかこれやばいかも」
「あ゛~……」
無心で撫で続けていたら、2人の様子がおかしい。
顔が火照って、目が虚ろだし、体をもじもじさせている。
なんというか。
「発情期の猫みたいになってきてますね」
「そう、それ」
「ってなんでですか!?」
「なんでって、ヨシオさんが撫でてるからですよ」
意味がわからない。私が撫でるとなぜ2人が雌猫になるのか。
「もうちょっと詳しくお願いします」
「なにって、テイミングですよテイミング」
「テイミング……って調教士の?」
「それ以外になにがあるんですか」
……そういえば、キスカの町に入る時に調教士だから奴隷がどうとか言う話があった。
色々あって聞きそびれていたけど。
「調教士がテイムできるのはなにも魔獣だけじゃないですから、もちろん人族も半耳族も例外じゃありません。なので調教士には主に魔獣を調教する魔獣調教士と、人間種を調教する奴隷調教士といます。言ってませんでしたっけ?」
「聞いてませんよ!?」
なんだ奴隷調教士って。
つまりこうやって可愛い女の子を調教して奴隷にして売り捌いて生計を立てるクズ野郎ってことか。
もしこの2人を奴隷にする輩がいたら間違いなくウルちゃんのエサにするね。
このままでは私がそうなるのだけれど。
「ど、どうすれば?」
「撫でるのをやめればいいかと」
あ、そりゃそうか。
名残惜しいがゆっくり手を離す。
「あ、離しちゃやらぁ!もっと撫でてよお!」
「ふふ、ふふふ、ゆうしゃさまぁ~、もっとほしいれす~」
離そうとした手をがっしりと掴まれ、強制的になでなでを続行させられる。
おうふ。こりゃもうだめかもわからんね。
主に私の理性が。
父性愛とも言える心地で撫でていたのに、エロスを感じてしまったらこりゃあかん。
もう手が震えてきやがりました。
そんな時、救いがやってきた。
「失礼します。勇者様、宿の手配ができましたのでこちらに――」
「すぐ行きます、今行きます、さあ行きます」
無理やり2人を振り払って兵士さんの下へ。
危なかった。
あのままでは詰所でエキサイトしてそのまま縄を打たれるところだった。
その前に私の心臓が破裂するだろうが。
「こちらが宿の場所です。この紙を渡せば話しが通じますので」
「ありがとうございます」
「では明日の朝、宿までお迎えに上がりますので」
「はい、わかりました」
兵士さんから宿の予約票を受け取る。
明日の朝ってことは、この町を観られるのは今日だけだ。
冒険者ギルドにも寄らなきゃいけないし、あまり時間はない。
「みなさん。行きましょうか」
部屋を振り返る。
「んっ、んふっ、きゅ、急に乱暴するからぁっ……あっ」
「ふへ、ふへへ」
ピクピクしながら転がっている美少女2人。
ハッ!
まだ扉を閉めておらず、兵士さんが部屋の中を見て唖然としている。
「ゆ、勇者様、これは――」
「は、はは、ははは……失礼します!」
ダッシュで2人を抱えて詰所を後にする。
変な噂にならなければいいけど。
テイミングはほっとけば勝手にテイム値と言うものが減っていくらしく、しばらくして元に戻った。
ほんとによかった。
マゾ兵士に大人気のマリアンヌさん。調教したい。




