使者とおっさん
「あなた達、生きて……なにをしているの」
「なにって、ごはん食べてるんですけど。アハ!ウケるー☆」
「おいふいーでふよ」
「ヨシオ様の料理にはいつの感動させられます~」
「わかったから。ちょっと食べるのやめなさい」
なんか怒ってるっぽいぞ。
なにか悪いことでもしただろうか。
「説明を求めます。まずあの魔獣はどうしたの」
「倒しましたよ。ヨシオさんが」
「たお――はあ!?」
口から心臓が飛び出そうな声を上げるウェンディさん。
「誰が!?」
「おっさんが☆」
「誰を!?」
「魔獣を、です」
「バカなの!?」
バカって。
っと、こっちにきた。
「本当にあなたが倒したの」
「ええ、まあ……」
「倒せる訳ないじゃない!ランクSよ?バカなの?あなた死んでるの?」
「生きてますよ」
「しょーこ!しょーこみせなさいよ!」
だいぶ錯乱しているな。
とりあえずインベントリにしまった死体を見せれば証拠になるだろう。
ウェンディさんの前に死体を取り出した。
「これがスパイダー……なんとかさんの亡骸です」
出てきた死体の周りをくるくる回るウェンディさん。
「この足は!?」
「私が折りました」
「この穴は!?」
「私が空けました」
「バッカじゃないの!?」
ひどいよウェンディさん。
「森の外に転がってた奴は!?」
「あれは――」
「おっさん!後ろ!」
声と同時に勇者の経験が危険を察知。
透明化による背後からの攻撃。
姿は見えないが、攻撃は6本足での刺突。
私はあえて接近することで攻撃を回避する。
振り向き様に額が少し切れた。
すんでのところで刺突を掻い潜る。
そして反撃。
【螺旋波動拳】
拳闘士のスキルの中でもトップクラスの破壊力を持つ技だ。
超至近距離から放たれた拳。
傍から見ればただのパンチにしか見えないが、それを受けたスパイダーなんとかさんの腹は見る見るねじれていく。
次の瞬間。
その巨体は回転しながら吹き飛んだ。
その先の土も木も、螺旋の波動が全てを飲み込んで。
「と言う訳で、もう1体いたみたいです」
その後、ルミさん達を解放し、一夜を森で過ごした。
そして今に至る。
「ランクSの魔獣を、倒したって、それも2体も」
わなわなと震えるウェンディさん。
「ありえないっつーの!!」
ウェンディさんと一緒に来た人達も苦い顔をしている。
んー。確かに強かったけどな。
多分そこらへんの魔獣では練習台にならなかったろうし。
「ちょっと!さっきから失礼ですよ。ヨシオさんが頑張ってくれたのに」
「頑張ってどうにかなる相手じゃないから言ってるのよ!」
「落ち着かれてはどうですか。ウェンディ・オーレリア」
ウェンディさん達が来た道から1人の女性と全身鎧の兵士数名が現れた。
片眼鏡に軽く結ったおさげを前に流している黒髪の女性。
服は将校服と言う物だろうか。
胸元は開いていてタイトな感じのスカートもありだ。
ルミさんやサクヤさんとは違う魅力だな。
「あなた、『四方聖』……」
「ギルドマスターの貴女がそう取り乱しては、他の冒険者に示しがつきませんよ」
「何の用なの?」
「貴方に用はありません。用があるのはそちらの殿方です」
そう言ってこちらを見る女性。
流し目が色っぽい。
少し見下されている感じがグッド。
……って殿方って私のことか。
「お初に御目にかかります。私は『四方聖』、北方のマリアンヌと申します。以後お見知りおきを」
片腕を胸元に掲げ一礼する。
谷間がくっきり見えた。
これはルミさんより大きいな。うん。
「スズキ・ヨシオです。ご丁寧にどうも」
「スズキ様とお呼びしても?」
「あ、どうぞ」
「ではスズキ様。さっそくですが少々お伺いしたいことがございます。一先ずセンタまでお越し頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。こっちの話はまだ終わってないわ」
「ウェンディ・オーレリア。私達が動くと言うことは、誰の命を承けていると言うことか、あなたが知らない筈はないわよね」
「んなっ」
「引きなさい」
「……わかったわ。でも後でこっちにも顔出してもらうからね」
……なんだか勝手に話が進んでいるけど。
「エーリンさん。シホウセイってなんなんですか?」
「ふも?」
小声でエーリンさんに話し掛けるも、間の抜けた声が返る。
いつまで肉食べてるんだ。
「ふも、ふもっ、ゴクン。ええー四方聖っていうのはですねえ、王国を代表する4人の騎士のことで、言ってみれば四天王的な存在ですね。この国ではそんじょそこらの貴族よりよっぽど偉いですよ」
つまりは軍人の中で偉い人ということか。
大将軍的な。
え?そんな人がじきじきにって、大丈夫なのか。
敵意はなさそうだけど。不安です。
ルミさんを見てみる。
「どう思います?」
「んー☆とりあえず話くらい聞いてあげれば?」
「そうですよね……」
軍人さんてことは国が関係している訳だし。
この人達を無視して王都には行けないだろう。
「わかりました。一緒に行きます」
「ありがとうございます。では森の外に馬車を待たせてますので」
テントや食器を片付けて、森の外に出る。
そこには大勢の冒険者。
「おい、誰か出てきたぞ」「北方のマリアンヌと……あいつら誰だ」「娘が2人と……おっさん?」「かわいい娘だな」「魔獣はどうなったんだ」「マリアンヌの胸でけー」「いや、あっちの娘も負けてないぞ」「かわいい」「揉みてー」「埋まりてー」
途中からおっぱいの話ししかしてないぞこの人達。
「こちらが私共の馬車です」
そこには高級そうな馬車が2つ。
馬でか!足8本ある!
「スレイプニルです。しっかり調教されているのでご心配なさらず。この馬なら町まですぐです」
「ほえー、おっきいね☆」
「おっきいです~」
「ヨシオさん!おっきいですね!」
うん。おっきいのはわかりました。
「では参りましょう。少し揺れるので気をつけて下さい」
――馬車の中で揺れるルミさんのおっぱいを、見るべきか見ざるべきか葛藤していたら、いつのまにかセンタの町まで着いていた。
王都からの使者。王都は近い。




