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はじめての依頼とおっさん


宿屋に戻った私とゴングさん。

食堂にはサクヤさんとカイルくんがいた。

朝食の時間が過ぎ、それの掃除をしているみたいだが、相変わらずサクヤさんがいると仕事が手につかないようだ。


「カイル、またサボってるのか」

「お、親父!?は、早かったね。いつからそこに?」

「おめえが鼻の下伸ばして嬢ちゃんにくだらねー話しをしてる時からだよ」

「く、くだらなくなんかねえよ。サクヤさんもおもしろいって言ってくれるし」

「それは嬢ちゃんが聞き上手なだけだ。いいからちょっとこい」

「げ、拳骨は勘弁してくれよ!?」


カイルくんをカウンター裏の事務所っぽい部屋まで呼び出す。

カイルくんは渋々頭を押さえて警戒しながらやってきた。

ゴングさんは近くのタルに腰掛けておもむろに話し出した。


「カシアな。あいつ元気になったぞ」


















「は?」



おいおい。

もうちょっとこう。説明の仕方ってのがあるでしょゴングさん。

そういうの苦手そうではあるけれども。

カイルくんめっちゃ動揺してますよ。


「な、何言ってんだよ親父。変な冗談やめろよ」

「冗談でこんなこと言うか。まだ完治したかはわからんが、少なくとも今は元気だ」

「ほ、ほんとかよ」

「スズキさんが実は回復魔術士でな。試しに診てもらったんだ。そしたらどういう訳かカシアが急変してな、ベッドの上を飛び回ってたよ」

「それ大丈夫なやつ?」

「うるせえ。今日はもうあがりでいいから帰れ。それとこれは特別ボーナスだ。昨日売り上げがよかったからな」


そっけなく麻袋をカイルくんに投げる。

今日はそれでお母様に栄養のある物でも食べさせろということか。

粋な心遣い。惚れる。


「こ、こんなに!?いいのか親父!?」

「バカ!スズキさんに礼を言ってさっさと行け!」

「う、うん。スズキ様、母がお世話になりました!ありがとう!行ってくる!」


ドタバタと走って行ってしまった。

年相応な笑顔を見せて。

大人ぶっていてもやっぱり子供だな。

そんな子が遊びもしないで仕事の手伝いばかりしていたと思うとくるものがある。

よかったねカイルくん。


「スズキさん。これ、昨日言ってた売り上げだ」

「あ、どうも」


銀貨の詰まった袋をもらう。

これもあげてもいいんだけど、ゴングさんは受け取らないだろうから素直に閉まっておく。


「スズキさんはこれからどうするんだ?」

「これから冒険者ギルドによって、買い物を済ませたら昼には町を出るつもりです」

「迷惑でなければ町を出る前に声を掛けてくれないか。せめて見送りたい」

「わかりました。準備ができましたら」


さて、みなさんと合流したら食料の補充とギルドへの顔出しだ。

食堂にいるサクヤさんに声を掛けておこう。

サクヤさんはなにやら暖かそうな物を飲んでほのぼのしている。

癒されるなー。


「おっはー☆なにしてんの?」

「うひょ!?」


どうやら、調度良くルミさんが起きてきたようだ。

急に叩かれてびっくりしてしまったよ。


「ルミさん。おはようございます」

「おっはー☆調子はどうかな?」

「はい、おかげさまで」

「そっかそっか☆それはよかったね☆」

「ヨシオさん、私もいますよ」


ん?エーリンさん声がする。ちょっとこもってるけど。

どこにいるのかわからない。


「ここですよ」


ポンっとルミさんの谷間から顔を出す。

どこの谷間かは言わずもがな。


「おっさんの部屋を見に行ったらエーリンだけいたから、連れてきた」

「ヨシオさん。こことっても気持ちいいです」


わかる。入ったことないけど。


「ちょうど揃いましたし、出かけましょうか」

「ヨシオさん。お腹空きました」

「昨日屋台が出ていましたし、道中何か食べましょう」

「おっけおっけー☆サクヤー、行こー!」













「すみません。ラファロさんにお会いしたいのですが」


赤髪の受付嬢に声を掛ける。

「お待ちください」と言うと足早に去っていった。

私達は屋台で食事を済ませた後、冒険者ギルドまで来ていた。

冒険者ギルドは昨日と変わらずそれなりに賑わっている。

そして変な声も聞こえてくる。


「おいめっちゃかわいい娘がいる」「ばっか、じろじろ見るな」「殺されるぞ」「なに言ってんだ」「知らねえのか」「なにが」「昨日美少女2人がギルドで大暴れしたって」「その場にいた冒険者は全員のされたらしいぞ」「あの娘らがそれだって?冗談だろ」「噂じゃ『北の旋風』もやられたらしいぞ」「ちょっかい出すなら外でやれよ。巻き添えはごめんだ」「じゃあ俺が行くよ」「じゃあ俺が行くよ」「じゃああ俺が行くよ!」「「どうぞどうぞ」」「ちょ待ってえ!?」


……冒険者って言うのは案外おもしろい人達なのかもしれないな。


「お待たせしましたスズキ様。ご案内致します」

「あの、この2人も一緒にいいですか?」


ルミさんとサクヤさんを指す。

昨日の二の舞はごめんだ。

彼女もそれを察してくれたのか、少し悩んだ顔をして了承してくれた。

2人を連れて昨日行った部屋へと通される。


「お待ちしておりましたスズキ殿」


ラファロさんが出迎えてくれる。

隣には知らない女性もいる。誰?


「そちらはスズキ殿のパーティメンバーでしたな?こちらへどうぞ」


ソファーに並んで座る。

私が2人に挟まれる形、いい匂いがするんじゃ。


「改めて自己紹介を。私はキスカのギルドマスター、ラファロと申します」

「あたしはルミエールだよ☆」

「ハナサクヤと申します。宜しくお願いします」

「どうぞよろしく。こちらは『センタ』の冒険者ギルドのマスター」

「ウェンディ・オーレリアです。ウェンディとお呼び下さい」

「初めまして、スズキです」


つり目に泣きぼくろ。ドーナツ状に盛られた髪型の女性。この世界は美人が多いな。

しかし『センタ』と言えば私達の向かう次の町だ。

なんでそこのギルドマスターがいるのかな。


「では紹介はこれくらいで。スズキ殿は今日発たれるのでしたな?」

「はい、その予定です」

「センタに向かうのでしたな。では依頼を1つお願いしたい」

「依頼?」

「ちょうど道中にこなして頂きたい依頼がありましてな」


意味深に眉をつり上げる。

それをこなせば昨日の一件はチャラってことか。


「それはどのような内容なのでしょうか」

「ビトーの森はご存知ですかな?キスカからセンタに向かう道中にある森です。そこは魔獣の住処になっているのですが、近頃森が騒がしいものでしてな。その訳を調べて欲しいのです」

「調べる……と言われましても何をすれば」

「それには私が同行させて頂き、調査を致しますわ」

「ウィンディさんが?」

「ええ。実は先日森の周辺から調査を進めていたのですが、森から出てきた魔獣に襲われて護衛の冒険者チームが負傷しましたの。その際キスカに近い所にいたものですから、こちらに参ったのです」

「つまり調査はウェンディさんが行い、私達はその護衛と言うことですか」

「そういうわけです」

「私達でよろしいのですか?」

「本当は『北の旋風』というチームを連れて行く予定だったのだけれど、昨日そのメンバーが負傷してしまったらしいのよね。主に心の方に」

「え」

「会いに行ったのだけれど「おっさん恐い」「おっさん恐い」「おっぱい恐い」って連呼してて、使い物にならないのよねー」


ええー、おもいっきり私のせいじゃないか。

しかも私がやったとバレてる臭い。

冒険者が負傷する様な森に近づきたくはないけど、断れない流れだ。

ルミさんとサクヤさんに目配せする。


「あたしは別にいいよ☆」

「私はヨシオ様に付いていくだけです」

「私には聞かないんですね、ヨシオさん」


んー。2人がいいならいいのかな。

いやでもな。危険がある所に連れて行きたくない。

そりゃこの2人は強いんだろうけどさ。

やっぱり女の子を戦わせるのはいかがなものかと思う。


「もちろん報酬は払いますよ。それと、達成結果によっては特例で冒険者ランクを引き上げます」

「ランクの引き上げですか」

「本来ランクを上げるには依頼をいくつもこなさなければなりませんけど、今回の働きによっては相応のランクにまで引き上げるつもりです」


森の調査のついでに《武神ぶしん》の調査もしようってことか。

そして《武神》の力が本物なら、ランクを上げてくれると。


「ヨシオさん。ランクは高ければ高いに越したことはないですよ。色々融通も利きますし」


エーリンさんに言われると少し胡散臭くなるのはなぜだろう。

でもまあメリットはあるようだ。負い目もあるし、受けるか。


「わかりました。お引き受けします」

「ありがとうございます。では準備ができましたら南門に来て頂けます?」

「はい。1時間程後でもよろしいですか?」

「構いません。あ、馬車はこちらで用意しますので結構ですよ」

「はい。失礼します」


ギルドを後にして商店街へ向かう。

消費した食料を買い込んだ後、宿屋に戻ってゴングさんに声を掛けた。

するとゴングさんは南門まで付いてきてくれた。

わざわざ来てくれるとは義理堅い人だ。


「スズキさん。あんたにはほんとに世話になった。どうかお達者で」

「こちらこそお世話になりました。またこの町に来た時は必ず会いに行きます」

「待ってますぜ。あとこれは餞別です。受け取ってほしい」

「これは?」

「それは俺が昔使ってた『怪力の篭手』って代物だ。名前の通り力が増幅する。いらなきゃ売っぱらってくれて構わねえ」

「そんな、ありがたく使わせてもらいますよ」


その場で右手に篭手を嵌めた。スーツの下なので傍からは見えないけど。


「私からもこれを」

「紙きれ?」

「中に『ボアバーキのガガ焼き』のレシピを書いておきました。よければ店で使って下さい」

「な!?いいのかよ!?厨士がほいほいレシピ渡しちまって」

「いいんですよ。その代わりと言ってはなんですが、次に来た時にはゴングさんの作ったガガ焼きを食べさせて下さいね」

「……ああ、わかったよ。あんたにうまいって言ってもらえるガガ焼きを作るよ」

「楽しみにしています。それじゃあ行きますね」

「バイバーイ☆」

「お世話になりました」

「さようならー」

「おう!必ずまた来てくれよな!待ってるからな!」


馬車に乗り込み、動き出す。

カタコトと少しづつ遠ざかる。

すると門を抜けた先で町から声がした。


「スズキ様ー!!」


カイルくんだ。


「俺!絶対スズキ様の様な男になるから!」


馬車は進む。


「おいしい料理作れるように!魔術も勉強するから!」


馬車は進む。


「なって!サクヤさんやルミさんみたいなかわいい女の子からモテモテになるから!」


馬車は進む。

っておい。なに言ってるんだ少年。ヤメロ。


「ほんとに!ほんとに!」


馬車は進む。

カイルくんは門の所で衛兵に止められてしまった。




「母さんのこと!ありがとおおー!!!」












次に会うのが楽しみだよ。少年。

ビトーの森編。バトルあり。お色気あり。緊縛あり。


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