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デートとおっさん

夜が明けた。

キスカの町に着いて初めての朝だ。

あの後、サクヤさんを連れて宿屋に戻ったらカイル少年に羨望の眼差しを受けた。

彼は顔を真っ赤にしてサクヤさんに挨拶していた。若いな。

まあサクヤさんみたいな美少女に微笑まれたら思春期真っ只中の少年はイチコロってやつです。

部屋は空いていたので、サクヤさんも無事泊まることができた。

まあ、空いてなかったら私の部屋を使ってもらったのだが。

当然私は外で寝ますよ。紳士ですから。ひゃっほい。

するとコンコンとノックの音が聞こえた。


「おはようございますヨシオ様、サクヤです。入ってもよろしいですか」


朝から美少女が自分の部屋を訪ねてくる。

想像して下さい。みなさんならどうします?押し倒しますよね?

私は死ぬのでしませんけど。というかそんな度胸は持ち合わせていない。


「はい、どうぞ」

「失礼します」

「おはようございますサクヤさん」

「はい!……エーリンちゃんはまだ寝ているんですね」


ベッドで大口を開けて寝ている妖精族。

昨日は寝ているところを起こしてしまったからね。


「それで、今日はどうなさるのですか?」

「うん、まだこの町には着いたばかりでね。買い物したり、冒険者ギルドって所にも寄りたいんだ」

「私も付いていってよろしいのでしょうか?」

「もちろん構いませんよ」


そこで気付く。

これってまさか『デート』ではなかろうか。

いやいや、ただの買い物だろ、動揺するな。落ち着け45歳。

例えいままでデートというか、女性と外出したことなんか母としかしたことがないとしても、相手は20以上も離れている娘さんだぞ。

傍から見たら親子だろ。

日本で見られたら職質されるまである。


「じじじじじゃあいきまままましょうかかかか」

「噛み噛みですし汗がものすごいことに!?」

「いやいや、動揺なんてしてませんよ。ははは」


ベッドにいた妖精族で汗を拭う。


「ギニャアア!!なんかしょっぱい!!」

「ああ、おはようございますエーリンさん」

「なんですかこのしょっぱいの!?ぺっぺっ!!」

「それはおっさんの心の汗です。45年物」

「普通に汗じゃないですかそれ!?」


ポカポカと頭を叩いてくる。

よし、大分落ち着いてきた。エーリンさんにはドキドキしないのが幸いしたな。

エーリン安定剤。

そんなやり取りを見てか、サクヤさんがくすくすと笑う。


「ふふ、仲がよろしいんですね」

「はい、それなりに」

「よろしくないですよ!まったく……」








それから朝食を取り、しばらくして宿を出た。

朝食の際にカイルくんは積極的に話し掛けて来た。もちろんサクヤさんに。

宿屋の息子で子供の頃から店番してて大変だの、将来は冒険者になって旅をするだの。

サクヤさんは聞き上手で、彼の話を楽しそうに聞くものだから、彼も調子に乗ってしまった。

結局彼の話は宿屋の主人にしょっ引かれるまで続いた。

かなり痛そうなゲンコツを貰っていたが、幸せそうな顔で引きずられていったので悔いはないだろう。南無。

私の所にはマモンさんが来た。

マモンさんは今日中に町を出るから、挨拶に来てくれたのだ。

マモンさんにはお礼を言って、気持ちを渡しておいた。

最初は受け取ってくれなかったが、ウルちゃん達へのお土産用に使ってもらい、余った分は村のみなさんへと言ったら渋々受け取ってくれた。


「それじゃあ冒険者ギルドを目指しながら買い物しますね」

「はい!……ああ、憧れの勇者様とお買い物なんて夢みたいです~」

「ヨシオさん!料理の材料買うの忘れないで下さいよ!」

「はいはい」

「ヨシオ様は料理もなさるのですか?」

「多少は」

「ヨシオさんの料理はそりゃおいしいですよ!なんてったって特級厨士ですから」

「すごいです!特級厨士なんてヤマトにも1人しかいません!流石は勇者様です~」


なんの努力もせずに得られた力を褒められてもあまり嬉しくはない。

まあそれを取ったら褒められるところなくなりますけどね。


冒険者ギルドなど、主要な施設やお店は大通りにあるらしい。

他には昨日行った飲み屋街と商店街がある。

向かっている途中で色々見て回れるだろう。

大通りの手前に商店街があるようだし、そこを通っていこうかな。

道順を決めて歩き出した。







しばらくして商店街に出る。

道の両脇に店が立ち並び、それなりの賑わいを見せている。

ぱっと見た感じ、武器や防具を置いている店。

布や服を扱う店。それと食べ物が置いてある店。

日本にも商店街はあるけど、いまはシャッター街と化してる所も多い。

こういう光景はなんだか感慨深い。


「賑やかですね」

「まあそれなりの町ですから」

「ヤマトにも似た様な所はありますね」


まずは近くの服屋と思われる店に入る。


「いらっしゃい」


恰幅のいい店主が出てきた。


「こちらの女性にコートを見繕って欲しいのですが」

「え?ええ?」

「ほうほう。まるでお姫様の様な方ですな」

「ヨシオ様?これはどういう……」

「サクヤさんの格好は大変可愛らしいのですが、少々この国では珍しいようですからね。なにか羽織る物をと思いまして」

「いいのですか?」

「はい、ただ私にはそういうセンスはありませんので。店主さん、お願いできますか?」

「畏まりました。ご予算はおいくら程で?」

「これぐらいでいいですか?」


懐から麻袋を取り出して店主に渡す。中には金貨を20枚入れておいた。

中身を見た店主は驚いて麻袋を返してきた。


「まさか、本当に貴族様かなにか様なのですか?」

「え?足りませんか?」

「逆です。多すぎますよ。うちの店は庶民向けですから、コート1枚で20金貨もするような上等な物は置いていません。王都にでも行けばあると思いますが」

「そうなのですか……では私の様な服は?」

「それは執事服ですかな?多少痛んではいるようですがかなり上等な物でしょう?内ではちょっと……」

「わかりました。この店にある物で結構ですので、コートを1枚お願いします」

「出来合いの物であればすぐに」


店主は店の奥からコートを1枚持ってくる。

それは白い毛皮のコートだった。


「それは?」

「これはホーンラビットのコートです。通気性、防水性に優れていて、肌触りもいいです。うちの商品の中で1番上等ですよ。お客様の白い肌によく似合うでしょう。どうぞご試着下さい」


そう言って、サクヤさんにコートを着せる。

おお、まるで雪の中にいる美少女だ。

店主も自身の見立ては間違っていなかったとばかりに褒めてくる。

確かに似合っているから仕方ない。

ただ問題は、目立たなくしたいという目的には向かないかもしれないという点だ。


「あの……似合いますかヨシオ様」


上目遣いで問われる。

あかん。この子おやじキラーです。

このまま抱きしめて持って帰りたい。


「サクヤさんかわいいです!」

「いいですね。ただ、これを着ていて目立ちはしないでしょうか」

「この町では多少目立つかもしれませんが、王都では普通ですよ」

「サクヤさん、どうですか?」

「動きやすいし、肌触りもよくていいと思います~」

「じゃあこれを頂けますか」

「ありがとうございます。こちらの商品は5金貨です」


5金貨。予算の4分の1だ。

これぐらいなら全然問題はない。

店主に金貨を渡す。


「本当によろしいのですかヨシオ様?」

「必要な物ですから」

「ヨシオさん!私には!?」

「エーリンさんには必要ないでしょう」

「そんなー!?」


さて、次はっと。

買い物を続ける。

と言っても、武器も防具もインベントリにたくさん入っている。主にやばいのが。

買いたいのは食糧だ。

なにせ今あるのはボアバーキの肉だけだ。

次の町まで行くのにも数日かかるらしいし、食料は調達しておかないと。

各食料品店を見て回り、食料を買い込んでいく。

結構見慣れた食材があって興味深い。

これならエーリンさんを満足させてあげられそうだ。


「それにしても、ヨシオ様のインベントリは随分大きいんですね」

「え?」

「私もインベントリはありますけど、そんなに大きくないですから。着替えと食料、アイテムを入れたらそんなに余裕はありません」

「ヨシオさんのは特別製ですからねー」

「そうですよね、勇者様ですものね」


話しをしている内に大通りに着いた。

商店街とはまた違う賑わいを見せている。

ここには各ギルドや食事処があるようだ。

大き目の建物が多く、1階や2階は店舗、それより上は居住スペースの様な作りだ。


「冒険者ギルドはどこにあるのでしょうかね」

「あのホーリーホークのマークがある看板がそうですよ」


道の先に鳥のマークがついた看板を見つける。

鷹なのかはわからないが。

目的の場所を見つけ、歩き出したところ、覚えのある声が聞こえた。

ふと声のしたような方を見る。

薄暗い路地にピンク色の髪、露出の激しい服。

そんな人がたくさんいる訳はない。

間違いなくルミさんだ。

2人の男に囲まれている。

知り合い……って感じではなさそうだ。


「2人共、先に行っていてもらえますか」

「ヨシオ様?」


2人の返事を聞く前に、路地に入る。




「ルミさん?」




私は彼女に声を掛けた。


初めてのデート。次回。三角関係?

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