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巫女と奇襲とおっさん

私とエーリンさんの絶叫がキスカの町に響き渡る。

漂っている妖精族を掴んで「少々お待ちを」とその場から少し離れた。


「なんでエーリンさんまで驚いてるんですか。女神様なら昔の勇者のことくらい知らなかったのですか」

「知りませんよ!大体勇者っていうのは使命を果たしたらみんな好き勝手動くのでその後のことはなんとも……。特に初代勇者なんて自分で作った国の島ごと結界を張って、外部からは一切情報が得られなくしたんですから」

「では彼女が勇者の子孫であるかはわからない訳ですか」

「んー、何か証明できる物でもあれば」

「証明ですか……勇者の証になる様な物ってありますかね」

「ちょっと待ってくださいね」


ボンッとエーリンさんの前に本が現れる、あの狭間の世界で見たやつだ。

エーリンさんは本を辿る。


「あ!初代勇者には三種の神器って言うのを授けたみたいです!」

「みたいです?なんで疑問形なんですか、エリン様が授けたんですよね」

「え、うあ、その、もう大昔の話なので……あんまり覚えてなくて」


自分で召喚しといてそれはどうなんだ。

仮にも初代勇者の話だろう。


「と、とにかく!その三種の神器を持っていれば、勇者の子孫として大分信憑性が生まれると思うんです!」

「……そうですね。少なくとも関係者ではあるかもしれません。一般人が手に入れられる物でもないでしょうし」

「さっそく聞いて見ましょう!」


内緒話しを終えて、彼女の元に戻る。

彼女は私達の行動が解せない様子だった。


「あのですね、えーと、ヤマト・ハナサクヤさん?」

「あ!サクヤでいいですよ勇者様!」

「じゃあ、サクヤさん。君が勇者の子孫と証明できる様な物って、何か持っていたりしないかな?」

「証明……これじゃ駄目ですか?」

「これは?」

八尺瓊勾玉やさかにのまがたまです」

「八尺瓊勾玉……三種の神器の1つですね!」

「これをどこで?」

「おじい様から貰ったんです。これを持っていれば災厄から身を守ってくれるって」


彼女が取り出したのは翡翠色の勾玉だった。

日本でも博物館かどこかで見た覚えがある。

小声でエーリンさんに確認。


「本物ですか?」

「はい、神の力を感じます。本物だと思います」


本物だそうだ。

ということは彼女は勇者の子孫と思っていいのかもしれない。

悪い子には見えないし。可愛いし。


「余程可愛がられているようですね」

「でも、おじい様はいくら勇者様に会いたいと言っても許してくれなくて、勇者ならここにいるだろって話しを聞いてくれなくて、ケンカしちゃいました……」


ん?ちょっと待って下さい。まさかまさか。


「ひょっとして、そのおじい様と言うのは……初代勇者様なのですか?」

「はい、タケルヒコ様ですよ」

「ご存命なのですか」

「国王は引退していますけど、ぴんぴんしてます。ヤマトではみんなタケル様、タケルヒコ様ーって神様みたいな扱いしてます」


なんと。恐らく数百年、もしかしたら何千年前とかの人だと思うけど、まだ生きているのか。

まあ勇者なのだから、普通の人ではないんでしょうが。

魔王を倒す⇒国を作る⇒鎖国する⇒なんやかんや今も生きてるってことか。

んーとてもすごい人が居たものだ。

そりゃ神様扱いされても不思議じゃない。

あれ?というか初代勇者が生きているなら、魔王さんを倒してもらえばいいのではないか?

彼女を大事にしている様だし、私が国まで送り届けてお願いすればなんとかなるのでは。

名案な気がしてきた。


「それは、是非お会いしたいですね」

「でも、みんな神様みたいに敬いますけど、全然普通の人ですよ?会うといっつも頭撫でてくるし、すぐ抱っこしようとするし、お散歩行くとついてくるし、私はもう子供じゃありません!」


予想より過保護みたいだ。まあこんだけ可愛ければ仕方ないのか。

……待てよ、なにか見落としている。

ヤマトの国は初代勇者が作って、国王になって、今は引退していて、その人をおじい様と呼ぶってことは。


「サクヤさん、君はもしかしてヤマトの国のお姫様ですか」

「え?はい、ヤマト本家の娘になります。おじい様はほんとはひいひいひいひいってひいがいっぱいつきますけど、省略しておじい様って呼んでます」


オウ……。

一国のお姫様が国を飛び出して1人旅とか洒落にならない。

というかこれ、国際問題なのでは。

鎖国している国の王族が密入国って絶対新聞に載るやつですよ。

作戦変更、これは係わったらいけないやつです。

もしも王都まで着いてくることになったら私のせいにされかねない。

今の世の中「この人痴漢です!」と言われて捕まればアウトだ。慈悲は無い。

世間知らずのお嬢さんには人知れず帰国してもらうべきだ。


「サクヤさん。あなたが勇者の子孫と言うことはわかりました。あなたが仲間になってくれれば非常に心強いです――が、初代勇者様の許可もなく、あなたを連れて行くことはできません」

「そ、そんな……お願いします!私なんでもしますから!勇者様のパーティに加えて下さい!」


ん?いまなんでもって言ったよね?


――いや馬鹿か私は。

彼女に手を出してみろ。初代勇者に何をされるかわかったものではない。

仮に溺愛している娘がいたとして、こんなおっさんを「彼氏です」と連れてきたらまず殴るし、許さないと思う。

子供でもできていたら、暗い海の底で夢を見てもらうまである。間違いない。

しかしどうする。実際彼女1人で国に帰れるのか疑問だ。

またさっきみたいなことになる可能性が高い。


「……わかりました。おじい様の許可をもらえばいいのですね」

「へ?」


彼女の足元に円の図形と文字が現れ青く光る。

風が巻き起こりスカートが揺れる。あ、みえ、みえ。


「久遠の絆の下に 汝の深淵を覗きたもう 悠久の時の中で 共に道を照らしせしめん 此方より彼方まで――《勇者降臨》」


発光はその速度を増し、彼女が見えなくなる。

同時に吹き荒ぶ風を受け、視界を遮られた。おしい、見えなかった。

と、そんな場合ではない。

光と風が治まると、彼女から今まで感じたことのない威圧感が押し寄せる。


「……う……が……だい……か」

「あなたは――」


瞬間。

眼前に飛んできた拳をすんでのところで回避した。

自分でも何が起こったのか理解する前に体が動いていた。

しかし、初撃をかわすのに精一杯だった体はバランスを崩し、続く2撃目に対処できなかった。


「があ!?」


脇腹に強烈な蹴りを見舞われる。

中に浮き、近くの壁に叩きつけられた。

雷を帯びた手刀が喉元に突き刺さる――






「ヨシオさーん!?」







おっさん。死亡?

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