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ギャルとおっさん

ギャルとは何と問われたら、あなたは何と答えるだろう。

女子高生、すごい格好、頭悪そう、色々あると思う。

しかし私ならこう答えるであろう。


ギャルとは、世界で最も強い人間だと。


彼女達は、なんでもおもしろいと感じる、なんでもウケる。

普通の人が恐ろしいと思うことや、気持ち悪いと思うことをウケに転じることができる。

なんでも楽しんでしまえる。

だからギャルは最強だ。










「おいしぃぃぃぃぃいいいいいいいい!!!」


彼女には、昨日インベントリに焼き溜めしておいたボアバーキのロースステーキを出してあげた。

目が☆になっていますよお嬢さん。


「なにこれ!超おいしいんですけど☆マジひくわ!!」

「おいしいですー!!」


なぜかエーリンさんも食べ始めてしまったので、マモンさんも交え昼食にする。

彼女は終始、


「ひくわー、マジひくわー!!」


肉を貪っていた。


「ぷあー!、ごちそうさまー!!」


計ステーキを5枚、ペロりと平らげて一息つく。

その細身のどこに入っていくのか。異世界かな?ひくわ。


「もう大丈夫なようですね」

「うん、もうバッチシ☆あんがとねおっさん」

「失礼な人ですねー。いきなりおっさんなんて」

「え、違うの?」

「おっさんです」


「合ってるじゃーん☆」とゲラゲラ笑う。笑った顔が眩しい。


「自己紹介まだだったよね、あたしルミエール。ルミエール・ヴェルト・スペアンツァ。ルミって呼んでくれていいよ☆」

「私は鈴木良夫です」

「エーリンですー」

「ポポリ村の村長マモンと申します」


「ダンケダンケ!」笑い出す彼女。何がおもしろかった?

ギャルの生態はわからない。UMAユーマだ。


「えっと、ルミさんはどうしてあんなことに?」

「あー、キスカって町あるじゃん?そこに行こうと思ってたんだけどさ、ちょっとトラブって道わかんなくなっちゃって、やっと街道を見つけたんだけど途中で力尽きて、ごらんの有様だよ☆」

「ドジですねー、くすくすぷー」

「あたしってどっか抜けちゃうとこあるんだよねー。でもおっさん達が来てくれて助かったよ。もし盗賊にでも見つかってたらどうなっていたことか、あたしってめっちゃかわいいでしょ?きっと慰みものにされて適当なところで娼館か奴隷商に売られてそっから日の当たらない人生を送るんだよ。考えただけでウケるー!!!」


ウケないよ。なんなのこの人。頭痛がしてきた。

表情がころころ変わる。可愛らしくはあるが。


「あー……私達もキスカの町に向かっている途中ですし、一緒に行きますか?いいですかマモンさん?」

「私は構いませんよ」

「ほんと!超助かるんですけど!おっさん達マジダンケダンケ☆」

「ヨシオさんが優しい勇者様でよかったですね!」

「勇者様?」


きょとんとした顔でこちらを見てくるルミさん。

ぱっちり猫目の大きな瞳が宝石のようだ。


「あたしが言うのもなんだけど、いい年した大人があんまり変な嘘は言わないほうがいいよ☆」


どうやら信じてもらえなかったらしい。あたりまえか。












日暮れ、なんとかキスカの町に到着する。

基本的にほとんどの町は完全に日が落ちると門を閉ざして入れなくなるらしく、そうなったら翌朝まで塀の外で待つしかない。

ギリギリセーフだ。

門には衛兵が立っている。そこで検問を受けて問題なければ町に入れるらしい。


「通行証を見せろ」


衛兵の1人が言う。ちょっと高圧的だ。

マモンさんは首に提げていた名刺のようなプレートを差し出す。

衛兵はそれを受け取り何やら確認している。


「ポポリ村の村長だな、買い出しか」

「はい、馬車の中は薬草と、ウルフの牙や毛皮をいくつかです」

「いつも通りだな。だが、そっちの男と……その女はなんだ」


馬車から降りていた私とルミさんを見やる。

私はただのおっさんなのですぐに目を離されたが、ルミさんは頭からつまさきまでじっくりと見られている。

ちょっと目つきがいやらしくないですか衛兵さん。


「この方達は旅人で、道に迷ってしまった道すがらお会いしました。近くの町まで乗せて欲しいとのことでしたので」

「その格好はなんだ」


そういう設定にしてもらった。勇者だと正直に話すと逆に疑われそうだし。

というかその格好、やっぱり珍しいんだね。

もしかしたら町にはギャルがいっぱいいるのかと思っていたよ。


「格好って、あたし?」

「おまえしかいないだろう」

「このおっさんだって変な格好だと思うけど」


確かに私もスーツを着ている。変と言えば変だろう。


「ん?その男はお前の従者ではないのか」

「全然違うよ」

「そうか、執事服を着ているから従者かと思ったのだが」


執事服と勘違いされたのか、まあ似てなくもないのかな。

この国には貴族がいるようだし、執事がいてもおかしくはない。


「私達は途中馬車で一緒になっただけですよ」

「……まあいい。それでお前達はどこから来た」

「あたしはベントの町から。キスカに向かう途中でちょっとトラブってさ。道に迷ったところを拾ってもらったの。この格好はカワイイから着てるだけ。カワイイっしょ☆あ、これ通行証ね」


ウインクして通行証を渡す。衛兵さんは明らかにどぎまぎしている。

小悪魔だ。いや、小悪魔というかもう小悪魔王と言った感じだ。

こんな魔王さんなら大歓迎なのだが。


「オホン、通行証に問題はないようだな。男、次はお前だ」

「すみません。私は通行証を持っていませんので」

「その歳で町に来たことがないのか」

「はい、ずっと山奥で暮らしていたものですから」


少し疑念の視線を受けるが、マモンさんを見やるとまあいいかという表情になる。


「ならお前は通行証を発行するから来い、他の者は町に入っていいぞ」

「あ、この子はどうなりますか?」


胸ポケットから顔を出すエーリンさん。

なにか余計なことを言いそうなので、町に入るまでは喋らないようにお願いした。

不満そうではあったが、町で食材を購入したらボアバーキでステーキ以外の料理を作ると約束した。

飯に釣られるのもどうかと思うけど。


「そいつは……妖精族か」

「はい、森で出会って仲間にしたのです」

「おまえ調教士か」


え、妖精族もテイムできるの?聞いてないよとエーリンさんに視線を向ける。

エーリンさんは言ってなかったっけって顔だ。おい。

しかし、調教士というのは間違いではない。


「一応そうです」

「他に奴隷はいないな?」


返事をすると門にある屯所に連れて行かれる。奴隷って単語にはあとでエーリンさんに突っ込むとしよう。

簡素な椅子に座らせられると、衛兵さんは向かいに座った。

そしてマモンさんやルミさんが持っていた名刺大のプレートを出す。


「そいつに魔力を込めろ」


言われた通り魔力を込める。するとプレートが青く発行する。

プレートに文字が浮かび上がる。そこにはスズキ・ヨシオと書かれていた。


「こいつはな、魔力を記憶する特殊な金属を使った魔道具だ。こいつに魔力を込めると簡易ステータスが記憶される。次から町に行くときはこいつを見せる前に魔力を込めて出すんだな」

「名前だけでいいんですか?」

「お前の情報はこっちの魔道具にも記録された。お前がなにかやらかせばこちらで通行証のステータスを上書きできる。他の町でそいつを見せればお尋ね者が見つかるってことだ」


机の脇に置いてあったこのプレートを、大きく分厚くしたプレートを指す。

なるほど、犯罪歴を記入する代物なのね。

確かに必要以上に年齢やジョブが漏洩するのは困る。


「ほんじゃ、発行料で銀貨5枚、奴隷は銀貨2枚だ。通行証はなくしても再発行できるが、その時はまた銀貨5枚だ」

「あ、はい、わかりました」


ポケットから袋を取り出し、銀貨を机に置く。

インベントリから出さないのは、インベントリというスキルは比較的珍しいからだそうだ。

エーリンさん曰く、私のは容量無限大、時間停止付きの特別製とのこと。

普通のインベントリの容量は馬車にも満たないし、時間停止はありえないらしい。

なので人前でインベントリを開かなくていいようにいくつかの装備とお金は携帯することにした。


衛兵さんはお金を回収すると私を町の入り口まで連れて行く。


「もう行っていいぞ。くれぐれも面倒ごとは起こすなよ」

「はい。ありがとうございました」


なんだか出所するみたいだ。何も悪いことはしていないはずだけど。

衛兵さんと別れると、マモンさんとルミさんがやってくる。


「待っててくれたんですか」

「当然ですよ。どうやら問題はなかったようですね」

「はい、おかげさまで」

「おっさん達はさ、これからどうするわけ?」

「私は町の様子を見たら次の町に行くつもりです」

「私は買い出しをしたら村に戻りますよ」

「そっか☆じゃあここでお別れだね。送ってくれてマジダンケ!縁があったらまた会おうねー☆」


バイバイと手を振りながら走っていくルミさん。

振り向き様に胸が揺れていい匂いがした。グッバイギャル。


「勇者様、今日のところは先に宿を取られた方がよいかと。買い出しに来た時に利用している宿がありますので、そこをご案内しようと思うのですがよろしいですか?」


了承すると、もう一度馬車で町を移動してすぐに着いた。

町の外れに当たる場所だろうか、少し寂れた感じがする。

建物の看板には『北の風亭』と書かれている。

中に入ると正面にカウンター、隣の部屋はどうやら酒場になっているようで、何人かの人が酒らしき物を飲んだり食事をしている。


「いらっしゃい」


カウンターから声をかけてくる少年。若いなー、12、3歳といったところか。


「マモンさん、久しぶりだね」

「ええ、カイルくん、少し大きくなったかな?」

「成長期だからね。えっと、泊まりだよね?そっちの人は?」

「この方は別室でお願いします。私の恩人なのでくれぐれも失礼のない様にお願いしますね」

「そっか、紹介してくれたんだ。ありがとマモンさん」


カイルと呼ばれた少年とマモンさんはある程度親しいようだ。


「おじさん。うちは1泊2銀貨だよ。夕食と朝食をつけるならマモンさんの紹介だしプラス5銅貨でいいよ」

「あ、この子もいるのですが、どうなります?」


随分静かだと思ったら寝てたよこの人。

首根っこを摘んでエーリンを見せる。

少年は驚いた顔をしてじろじろ見た。

しばらく眺めてから落ち着いた様に話し出した。


「妖精族か、初めて見たよ。えっと、奴隷を入れるならプラス1銀貨だけど、妖精族だし全部で3銀貨でどう?」


どう?と言われても。

安いのか高いのかよくわからないが、「紹介だし」と言っているのだから多少は安くしてくれたのだろう。


「ありがとうございます。ではそれで2泊分お願いします」


明日町を物色し、明後日には町を出る計算だ。

カウンターに6銀貨を置く。


「じゃあこれ、部屋の鍵ね。夕食は17時から20時まで。朝食は6時から8時だよ。その時間以外は料理出せないから気をつけてね」

「それじゃあ勇者様、私は荷を降ろしてから戻りますので、今日のところはこれで」

「ありがとうございました。買い出しは明日するんですよね」

「ええ、荷を売って、買い出しをしたら明日中には出発します」

「そうですか、では明日の朝にはお別れですね」

「はい、宿を出る前にはまた挨拶に伺いますので、よろしくお願いします」


そう言って、マモンさんは宿を出て行った。

私はカウンター横の階段を上がって指定された部屋まで行く。

部屋はこじんまりとしたワンルーム。木製のビジネスホテルの様な感じだ。

ベッドと机と窓が1つ。風呂はない。


時間はまだ18時、寝るには早い。

町の様子も気になるし、少し散歩してみようかな。

エーリンさんは……寝てるから仕方ないよね。

そう考えて、エーリンさんをベッドに寝かせて部屋を出た。



ヒロイン即離脱。次回。新ヒロイン。

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