第3話 漆黒無光の具現者(リアライザー)
久しぶりのまえがき投稿です
毎回前書きをした方がいいのかもしれないですね。というかこれからは余裕があれば毎回投稿したいと思ってます。
まあそれはさて置き。
今回は初の戦闘シーン込みの話で、うまく読者さんに伝わればいいなぁ、なんて思ってるんです。
それでは第3話、どぞ!
「ーー具現化!!!」
玲はEデバイスを起動する。
Eデバイスを起動すると黒い魔法陣が頭上と足元に現れ、頭上のものは足元へ、足元のものは頭上へ移動して交差し終えると、具現化が完了して玲は戦闘服になった。
具現化すると玲は黒のロングコートに身を包み、中の服やズボンも黒になった。足には、膝下から金属質の黒いプロテクターが装着されていた。
背中からは先端の尖った羽根で覆われた黒い翼があり、腰には根元から3つに分かれており、龍の背にあるような棘が並んでいる黒い尻尾が生えた。
「……!!」具現化を完了し、デュアル・ゼロを持った玲の姿を見て加藤は口を開けたまま驚いた。
そして紫に曇った空から舞い降りる異端者の姿がはっきりと見えてきた。
その姿は禍々しかった。見る者の目を引くほどに大きなコウモリのような翼に、腰からはすらりと足よりも長く伸び、先端が矢尻状になっている尻尾。頭部にはこめかみ辺りから生えた一対の湾曲した角。俗に言う悪魔が1番適切な表現だろう。
この異端者の場合、強さのレベルは上、中、下のうち、中の上くらいであり、とても初心者が手に負えるような相手ではなかった。
だが玲は翼を広げ、軽く膝を曲げた。そして地面を蹴り、それと同時に翼を羽ばたき、宙に舞った。
加藤は無言のまま見守りながら、内心でかなり驚いていた。
というのも普通、人間は翼で飛ぶことなどEデバイスを使用する以外の方法では不可能なことなのだ。それ故に飛行する感覚がわからず、宙に浮いた状態を維持するのは初心者にはほぼ無理な話だったのだが、玲は安定のイレギュラーさを発揮して軽々と自在に空中を飛んでいた。
異端者のいるところに到達しようとしたときだった。
異端者が重力を圧縮した異端者本体と同等の大きさをした黒紫の球を生成し、玲に向け、両腕を広げるようにして放った。
球速自体は鈍重だったが、それは周りに存在する物質さえも吸引する強力な重力の影響でもあった。
玲は落ち着いた様子でデュアル・ゼロの銃口をその黒球に向けると撃鉄があがって、すぐさま引き金を引いた。
そして撃鉄がおりるのと同時に銃弾が発射された。撃ち出された銃弾は、白と黒の残光が螺旋状に回転しており、そのまま黒球へと着弾した。
すると神属性の中にある光属性が異端者の放った黒球と反発し合い、凄まじい空間の揺れと熱風、そして紫の稲妻が発生した。
幸いなことに黒球は球速が遅かった為、異端者の近くで相殺された。これを好機と見込んで玲は急加速して異端者に近づく。
だが、異端者とて黙ってはいなかった。玲と同じように急加速して襲いかかってきた。
このままでは異端者の攻撃を受けて墜落してしまうことは目に見えていた。
それに玲は具現化したことで、ある可能性を感じていた。黒い翼についてだ。具現化した時、やけに重量を感じた上、風を切る音も鋭い甲高い音がしたのだ。
玲はこう思った。「この翼は黒鉄の翼なんじゃないのか」と。
そして異端者との距離が更に詰まった。
「考えていても無駄だ。やるしかない…!」
そう言った刹那、長く鋭い爪で八つ裂きにしようと襲いかかってくる異端者。
玲は予備動作を消して斜め前方に飛び出して攻撃を避けつつ翼を異端者の左腕、つまり玲からみて右側の腕にぶち当てた。
するとシャンという物が切れた音と共に異端者の左腕が断面を見せ、赤紫の血液を吐きながら地面へと落ちていった。
キィイイイイィ!!!
異端者は苦痛の音をあげる。
「なっ!?」地上から見守っていた加藤は驚愕の声をあげた。だが驚いたのは加藤だけではなかった。
生徒会のメンバーが集まっていて、加藤と同じように驚いていた。実は生徒会メンバーは異端者と戦える者が集まっているのだ。そこで今回の事態を見て急ぎ駆けつけたというわけだった。
だが駆けつけた意味は無くなりつつあった。
なぜなら異端者が怯んだ隙を逃すことなく、玲が残像を残すほどの超高速で飛行して、異端者の背後に回り込んだのだ。
完全に意表を突かれた形となった異端者は振り返ろうとしたが、それよりも早く玲がデュアル・ゼロを異端者の頭と胸の中央に突き刺した。
「これで…!!終わりだあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そう叫んでゼロ距離で神属性を纏った銃弾を撃ち込んだ。
異端者は絶命し、ピクリとも動かなくなると、やがて灰となって風と共に消えた。
玲は地面に降りると具現化を解き、デュアル・ゼロを腰のケースに収納して歩こうとした時だった。
突然周りが真っ暗になり、そこで玲の意識は途絶えた。
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玲は真っ暗闇の中にいた。
「んぐ…。か、身体が動かない……」
まるで金縛りのように、どんなに力を入れても身体が動く事はなかった。そんな時だった。一筋の光がこの暗闇を照らした。そして微かに声が聞こえてくる。
聞こえてくるのだ。聞き覚えのある、どこか気持ちが安らぐ優しい声が。
「さ……く…! …か………ん!…榊くん!」
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玲はハッと目を開いた。
そしてこの状況を分析していた。
どうやら横になっているようだ。天井の蛍光灯とベッドの周りのカーテンをみるに、ここは自宅ではない事は確かだった。
そして寝ている自分の横に感じる人影。
目をやるとそこには目に涙を浮かべた聖が立っていた。
「、え?!た、小鳥遊!!?」
「気がついたんですね!、良かったー。ぐすっ。いきなり倒れたって聞いて心配したんですから」
泣きじゃくりながら聖は言った。
「じゃあここは、、保健室…なのか?」
「そうですよ。ここは保健室です。でも本当に良かったです。気がついてくれて。もしこのまま気づかなかったらわたし、どうかなってましたよ。…多分。。」
よほど聖は心配したらしく、目や鼻が赤くなっていた。
「心配かけてごめんな」と玲は謝る。
その時、カーテンを開けて入ってくる人物が1人。
「やあやあ。随分と元気そうじゃないか」
玲の本音は、まぁた面倒なのがきたというところだ。
「どこをどう見たら元気に見えるんですか?学園長」
と玲は半ギレ気味に聞いた。
「それは君の下半身に聞いてみるといい」
そう答えられて下半身を確認すると、まぁ確かに元気だった。
そこへ聖が質問してきた。
「下半身が元気って何ですか??」
「あ、いや、何でもないよ。学園長のいつもの冗談だからハハハ……ふぅ」と何となくごまかして愛想笑いしたあとに学園長を おい、ふざけんな といった目で睨む玲。
「悪かったって。そんな怖い顔しなくてもいいじゃんか」申し訳なさなんて微塵も感じない笑顔で言われて少しの間無言になる玲。
「……。」
「んで?今日は一体何の用ですか?」
と話題をすり替える玲。
「今日は君のクラス分けの結果を言いに来たんだ。さっきの活躍からして間違いなく君はAランクよりも上のSランクなんだけど、今までSランクがいなかったから空き教室で1人授業になっちゃうけどいいよね?」学園長らしい、なんともメチャメチャな内容のため当然、玲は抗議する。
「それは嫌です。そんな1人教室に行くくらいなら聖と同じクラスでお願いします」
「え、?!」聖は玲の発言に驚いた。
「うぉ〜う!そんな凛々しい顔で言われたんじゃ断れないジャマイカ!!」片手で顔を抑えながらそんなことを言って、どう考えてもバカにしている学園長に玲は無言でゲンコツをくらわした。
ゴンッ
「痛たたた…ヒドイじゃないか玲くん」
「酷いのはどっちですかね?さ、そんなことよりも小鳥遊のクラスは何組ですか?教えてください」と問い詰める玲。
「えっとねー、小鳥遊君のクラスはB組だよ。じゃあ玲くんもそこでいいんだね?」と確認されたので、ああ、そこでいい。と答えた。
「あのー、玲くんって何ですかぁ?」
聖は笑顔の裏にある怒りが漏れている状態で質問した。
「別にこれは俺が呼んでくれとか頼んでいるわけじゃなくてだな、勝手に学園長がそう呼んでいるんだけど」
玲は必死に弁解しようと試みるも、また学園長がいらない事を言って火に油を注いだ。
「玲くんが〜、どうしても呼んで〜っていうから私はしょうがなーく呼んであげてるんだ〜。………ってあれ?」
学園長の視線の先にはドス黒いオーラを纏った聖がいた。「そうなんですかぁ?“玲くん”って呼ばせてたんですかぁ〜??」
「いや、断じて違うぞ!ホントに学園長が勝手に呼んでるだけだから!」頑張って説得する玲。そして学園長の方に振り返り、
テメェ、もし次同じような事言ったらぶち殺す と念を込めて学園長を睨みつける玲。
「ご、ごめんってば〜。えっとね小鳥遊君、私が勝手に呼んでるだけだから気にしないで〜」
こうしてなんとか事態の収拾がついた。
「じゃあ玲くんは小鳥遊君と同じクラスだね?わかった。そうしておくよ。ま、せいぜい頑張りたまえよ、漆黒無光の玲くん!」と言いながら保健室を出ようとする学園長を止めて玲は聞いた。
「なんですか?漆黒無光って」
「うんうん」と聖も興味津々に頷く。
「あれ?言ってなかったっけ、君の二つ名だよ、玲くん。具現化した君の持つ唯一無二の特徴、漆黒で光のような明かりが無い。その特徴を表す名前だよ。二つ名なんて滅多に貰えないものなんだから大切にしてね〜。それじゃ」
そう言って学園長は出て行ってしまった。
「漆黒無光か…悪く無いな。この二つ名は大切にしよう」と心に誓った玲。
「すごいですね!二つ名が貰えるなんて!羨ましいです!」と聖は言った。
気がつけば午後5時を回っていた。
「小鳥遊、帰ろうぜ」と玲は言った。しかし聖は黙ってうつむいたまま何か言った。よく見ると顔も赤い。
「……り」
「え?何だって?」
「聖!!これから、わたしのことは聖って呼んでください!わたしも下の名前で呼びますからね、玲!!」唐突にそう言われた。この時にはもう顔は赤くなかった。
「じゃ、じゃあ聖。帰ろうか」玲は顔が赤いのが自分でもわかった。
「はい、玲!」聖の方はむしろ嬉しそうだった。
うっすらと空が赤く染まっているなか、2人は学園をでた。
読んでいただいてありがとうございます、熾凛です。
今回の学園長はシリアスな話が無い分、なかなかお調子者だったと思います。学園長ではない一ノ瀬 時雨本来のお調子者な性格が出るような構成にしたつもりですがいかがだったでしょうか?
次回のネタはまだ考えついていませんが、そのうち考えつきますのでご心配なく(笑)。
この先もずっとこのペースで更新できるといいんですけどね〜、、。まぁ頑張ります!