異変の正体は!?
長らくお待たせして申し訳ありません……
「ええっと、イシナと私はライバルで……じゃなくて、親友と言ってもいい間柄だった――まあ普通に勉強でわからないところを教えあったり運動会で同じチームになったら協力し合う――そんな関係でした」
「確かに、フーリエと私は友人でした……だけど、恋愛に関して、同じ人を好きになった瞬間、それは崩れたのです!!」
「「私たちの想い人、それは!!」」
「みんなの憧れ、第4王子ドレッグ様だ!!」
「「なわけあるかい!!」」
ドゴ!!
確か、騎士見習いのイケメンと貴族令嬢の女性が、町娘に対し、突っ込み……とは思えない、痛烈な一撃をかます!!
「「私たちの恋の相手は時期騎士団長と呼ばれるキース・ラクホルンよ!!」
キース・ラクホルンなら、一応俺も知っていた。その記憶にある姿は、先程自分をドレッグ王子だと名乗った町娘をふっ飛ばした二人の人間の片割れの方だったと思う――二人の美女に惚れられて難儀してると昔聞いたことがあった。
「なのになんで、私がキースに、キースがフーリエに、フーリエが私になっているの!?」
そう叫んだのはキース……の体に入っているイシナらしい……
「フーリエの体、フーリエの体……」
スタイル抜群、金髪碧眼、超絶美人が真っ赤な顔しておろおろしている……
「安心して、キース!! 私の体を好き勝手してくれていいのよ!!」
「何言ってるのよ! フーリエ!! 安心してね! キース!! 私はあなたの体を節度を持って預かっているわ!!」
「何言ってるの!? イシナ!! あなた、陰に隠れてキースの体を隅々まで見るつもりでしょう!? そんな事をするならあなたの体をいろんな人に見てもらうことになるからね!!」
「そんなことはさせ無いわよ!! フーリエ!!」
そう言ってキースの体のイシナが、イシナの体のフーリエにつかみかかろうとするが、
「じ、自分の体を殴るなんてできない!!」
「私も、キースの体に乱暴なんてできない!!」
そう言って落ち込む二人――
「どういう風に表現したらいいのかよくわからん……」
「フーリエの体……フーリエの体……」
相変わらず、美人女性の体を得たキースはその体に悶えていた。
「というようなことが、王都全域で起こっているんですよ、兄さん――」
クイエト王子を兄と呼ぶ町娘、その体の中に入っているのはドレッグ第4王子だという――
「そして、そのドレッグ王子の体にはトウカの精神が入っている、か……」
俺はチラリと執事姿のドレッグ王子の体を見る――
「うん、俺としてはどっちかつーとこっちの方を弟と呼びたいかな」
「そんな!!」
明らかにショックを受けた感じのする町娘……
「……旅に出ます……」
泣きながら荷物をまとめ、旅立とうとする町娘――の体のドレッグ王子――
「やめておけ、お前一人の都合で数多くの人命を危険にさらす気か?」
それを止めたのはシュレア第3王子だった――どうやら彼は、この王都の混乱に巻き込まれてはいないらしい――
「シュレア、どういうことだ?」
「クイエト兄上、そしてニナお嬢ちゃんの体のエルトに、その友人アーニャちゃんだったかな? それと……」
シュレア王子はハヤトを見る――
「……お前は……?」
「あ、田中隼人っていいます、日本と言う国から来ました」
「……ニホン……? 聞いたことない国名だな……」
そう言ってシュレア王子はハヤトを頭の先から足の先までじっくりと見る――
「まあいいか、とりあえずこんな状況だけどお帰りなさい」
一通りハヤトを見終わったシュレア王子はこちらに向き直る。
「もう気がつかれているとは思いますが、今王都では、大勢の人間の肉体と魂が入れ替わると言う事変が起こっております――」
「シュレア様~~!!」
叫び声をあげて、ちょっとこずるそうな粗末な服装を着た男がシュレア王子に跳びつこうとして、
「『炎よ爆ぜろ! ブレイク』!!」
ドオオン!!
「あ、しまった――だいじょぶか?」
「ひどいです、シュレア王子様!! ウルマは、ウルマはこんな姿になっても貴方様をお慕いしておりますのに!!」
「いや、すまないお前が死んでも大変なことになっていた――すまないすまない、ええっと……」
「貴方様の婚約者、ウルマ・シェル・ロックフォード公爵令嬢ですわ!! なのになんで、こんな男の体にならなければいけないの!? しかも私の体はメイドなんかに使われているし――」
そう言ってこずるそうな男の体には入っているウルマはメイド服を着込んだ公爵令嬢の体を使うムヴエを睨み付ける――
「一生この体で生きるなんて言われたら、私は今すぐ自殺しますわ!!」
そう言って泣き崩れるウルマ……
「先程も、言ったが、今お前が死ぬと、たくさんの人たちが犠牲になる――だから、死ぬなよ!!」
「どういう事ですか? シュレア王子、何が原因でそういうことになったのかわかるんですか?」
なんかものすごく久々に俺はセリフを喋ったような気がする――
「あ、ニナ!! 何気安くシュレア様に声をかけているのよ!!」
ウルマが、目ざとく俺を睨み付ける――ていうか、自分も同じような目に合っているなら、俺がどういう状況なのか理解して欲しい――
「シュレア様の側に立っていいのは、私、ウルマだけなのだから!!」
そう言ってこずるそうな男の体でシュレア王子のそばに立とうとするウルマ――が、似合わないと思ったのか……
「あ、あなた!! 私の体を使っているそこのメイド!! 一応私の体なのですから、シュレア様の側に立つことを許します!! ここに立ってなさい!!」
「え、でも私、ニナお嬢ちゃんのメイドなんだけど……」
無理やりシュレア王子の横に立たされたムヴエは、迷惑そうにそう言う――
「とにかく、ニナがシュレア様の横になければいいのです、そして私がシュレア様の横にいればいいのです!!」
「「……」」
俺はとりあえず俺とシュレア王子との間に立たされたウルマの体のムヴエと顔を見合わせる――その向こう側には、シュレア王子の兄クイエト王子が立ち俺の逆隣にハヤトが立つ――
「何か色々茶番があったような気はするけど、とりあえず教えてください――なぜこのような事態になっているですか?」
「俺はなんで旅にでちゃいけないのか、そういや自殺も駄目だって言ったなぁ」
町娘の体となっているドレッグ王子も自分の体で執事姿をしているトウカの横に立つ――
「……まず、お前たちに死なれては困る理由だが――肉体と魂っていうのはかなり親密な関係にある――別の肉体に魂を入れ替えたとしても、入れ替えた肉体が死ねば元の肉体も死んでしまうという関係があるからだ――」
シュレア王子の説明に、何人かがうなずく――
「そして、今回の出来事の原因だが――」
「多分、自分の体を奪ったものが犯人だ……」
「お前は……」
シュレア王子の言葉とともに現れた女性は――
「――アゼル――!!」




