召喚された人物
コオオオオオオォォォォォ――――――!!
「『さあ、異界の戦士よ! 我が呼び声に応えて現れるのです!!』」
聖女の魔法は、世界を繋ぎ一つの光を魔法陣の外へ出現させる――
「勘違いしてる人もいるかもしれないが、魔法陣というものは魔法を使う人の魔法力を増強させるものであったり、召喚されたものから召喚者を守るためにあるのであって魔法陣から召喚されたものが出現すると言う訳では無い」
「エルト、誰に説明してるの?」
フト、昔エルライヤ師匠の言ってた言葉を口に出してしまっていた俺がいた――
「でもそれなら、魔法陣の中にいる聖女様はともかく、私たちは危ないんじゃ……」
アーニャがそう言うから、俺はあたりを見渡し、手頃な大きさの木の枝を拾いあげる。
事態を察した兵士たちも武器をかまえる――
「首領、何をやっているんだ! 早くあいつらを倒さないと!!」
「待て! 首領の相棒が何か魔法を使うつもりなんだ!! 首領はそれを待っているんだ!!」
未だに洗脳されている兵士たちは盗賊の首領ではなくなった姫の出していた命令には従っている――姫に命令されない限り何もする気が無いのだろう……
ルーンレイスいなくなってしまった今、彼らの洗脳を解く方法はあるのだろうか?
「その心配は無いわ!! 私が呼び出した魔獣は魔力を奪うことのできる魔獣なの――!!」
聖女は大声を張り上げてそういう。
「魔獣……?」
光の中から戸惑った声が聞こえてくる――
「…………!?」
光がおさまってくる―――中から現れたのは……
「人間――?」
そう、それは人間だった――
黒い瞳に黒い髪、見たこともない不思議な衣服をまとった若い男性……
「またしても、ここは一体、どこなんだ!? あのおっかないねーちゃんたちは何処へいった!?」
キョロキョロと周りを見渡し、挙動不審なその男性はやがて俺たちを見定める――
「――――」
なぜか、しばらく俺たちを眺めてくる――
「あ……あんたらもさっきの連中の仲間か!?」
なんかひどく怯えているようだ。
「すまない、私は聖女のリィサ、こちらは……」
そう言って俺たちの方を向く聖女――
「確かアーチェリーちゃんとエルニナちゃんだったかな?」
「アーニャです……」
「エルトだ」
聖女の間違いを訂正する――
「そしてそちらは……」
聖女は目を細めてジェシカ姫たちを見る――
「もしかして、イタンモンメのジェシカ姫? お久しぶりですね」
今まで気付いてはいなかったのか、ぺこりと頭を下げる聖女――
「え? 知り合いなの?」
「聖女の神殿は各国の王侯貴族ともつながりがあるって言われているからな。その過程で知り合ったんだろ」
アーニャの問いかけに答える。
そういえば、トウカも聖女の神殿には何回か参拝に行っていた。
俺やムヴエ、カシムなんかはそういった所に行く理由も用事もなかったけれど――
「……ニナはレグリーム伯爵様に連れられて一度行ったことがあるって前に言っていたけど……」
「悪いけど、俺はニナじゃないからそんな事は覚えていない――」
「とりあえず、こちらの自己紹介は終わった――あなたは?」
ズイッ!!
聖女はその男性に詰め寄る――
「あ、ああ、うんうんうん、僕? 僕は隼人、田中隼人……」
男性――タナカという名前らしい――はとりあえずそれだけをいった。
「――? ハヤトが名前なのかな?」
「え? そうなのか?」
名前の響きからして、おそらくは外国人のだろう。だとしたらそういうこともあり得る。
「とりあえず、呼びやすい呼び方で呼べばいいか……」
そう、質問してみるがハヤトは挙動不審にキョロキョロとあたりを見渡すだけ――今起きてることが理解できていない、という感じだ。
俺を見、アーニャを見、聖女を見、ジェシカ姫を見、そしてその隣にいるホリアを見たとき――ホリアに視線が固定される――
「……メイド、さん……」
「「……?」」
ホリアを見るハヤトの瞳がだんだんと熱を帯びてくる――
「あう~~、癒しの象徴メイドさん……なんかよーわからんところに来たとしてもメイドさんがいれば癒される……おかえりなさいませご主人様って言ってくれないかなぁ……」
「「「……」」」
「あの、私はジェシカ姫に仕えるメイドなのでご主人様というのは存在しないのですが……」
周りの呆れる目とホリアの申し訳なさそうな言葉……
「お姫様に仕えるメイド……って、まさかここ異世界なのか!?」
騒がしく訳のわからない事を叫びまくるハヤト……
よし、今度レグリーム伯爵のところでメイドやっているムヴエにあわせてみよう――魔女の洗脳によって自分を女だと思い込んでいるあいつの姿を見て、メイドに幻想を抱いているらしいこのハヤトがどういう反応するか見物だと思う……
「おいおい、さっきから聞いてれば、訳のわからないことを言いやがって!! だが……」
未だ魔女ハピレアの洗脳の影響下にあり、自分の事を盗賊の一人だと思い込んでいる兵士が、ハヤトの側に歩み寄る――
「着ている服は上物のようだな! 俺によこせ――」
そう言って手をかけた瞬間だった―――
シュワアアアアアン!!
「「――!!」」
まるでルーンレイスに奪われるかのように魔力がハヤトに流れていく――!!
「あいつ、魔女ハピレアの洗脳を解くために呼び出された存在なんだよな!!」
「え?」
「そうです。この者には魔女ハピレアの洗脳解く力があるはずです!!」
俺の叫びに聖女が同意する――
「うにゅう? いったい何の話なんだ?」
「うちに聞かれても分からへん」
未だに何かを食べているレイナとミレーニアが我関せずという感じでのんびりと見学している。
「これはもしかすると、もしかするかもしれないぞ!!」




