女神vs半天半魔-田中隼人視点
「フンフンフ~~ン♪」
サァーーーーー
「フフフフンフンフンフン♪」
「……ここは、一体何なんだ」
一体何なんだと言っても答えが返ってくるわけじゃない――
今の僕の状況ははっきり言って自分でも理解できない――
まず僕の名前だが、これわかる――
田中隼人。
―――まあ、結構どこにもいそうな十六歳の高校1年生だ。
僕は確か、新作ゲームを手に入れるためにゲームショップへ行くところだった――
まあ、事前にネットで予約しておいたから慌てる必要性は全くなかったので、のんびりと、コンビニで買い食いでもしながら目的地につけばいいかと思っていた。
しかし、世界はいきなり一変した――
上空から光り輝く文字が大量に降ってきたと思ったら、気がつくと全く違う場所にいたんだ。
目の前にあるのは白を基調とした広大な空間――そこで、マブい姉ちゃんがシャワーを浴びている!?
いや違う、シャワーを浴びてるように見えるけれどお湯がはるか天空よりそのマブい姉ちゃんめがけて雨のように降ってきている――
いったい何だって言うんだ? 日本のシャワーはいつからこんな高性能になったんだ?
「フンフンフンフン~~ン……」
やがて、天空より降り注ぐお湯が止まり、マブい姉ちゃんはほんの少し離れたところで自分を凝視している僕に気づいた――
「「…………」」
マブい姉ちゃんは、僕をじーっと見つめ、しばらく視線を下に下げ、また僕をじーっと見つめる…………
「きゃぁぁぁぁぁあ!! なんなの!? なんなのあなたは!?」
大声を上げる姉ちゃん!!
「どこから入ってきたの!?」
自分の体を隠すように僕に背を向けて叫ぶ姉ちゃん……!
「いや、光に包まれて、気付いたらここにいたんだけど……」
僕はとりあえず、そう言ってみる――
「光に包まれて?」
姉ちゃんは体を隠しながらも僕をじーっと見る……
「黒髪黒目――って、もしかして日本からの召喚者!? そんな!! 事前通達はなかったはずよ!!」
姉ちゃんが空中に手を振ると光り輝く衣服が現れ姉ちゃんの体を包む――
「ええっと、とりあえず日本から異世界に呼び出された召喚者のようですね――私は女神、異世界に呼び出されたの人のために様々なギフトを与えるものです――あなたはどんなギフトをお望みですか?」
「ギ、ギフト?」
衣服はそれっぽいし、威厳とかそういったものはちゃんとあるし、最初からそういう風な登場をしててくれれば、そういう風に思えるかもしれない――女神、ね……
「ああ、あんまりそういうものは必要ないよ――ただ、言葉が通じないと面倒臭いからバベルの実だけもらえる?」
「「!?」」
僕の後ろから、のんびりした声が聞こえてきた――
「――あなたは……」
いつの間にそこにいたのか、赤い髪のツインテールにした少女が僕の後ろに立っていた――
「……ヴェルバーン……!! あなたこそどうしてここにいるのです!? 半天半魔!!」
女神と名乗る姉ちゃんは少女をきつく睨み付ける――
「ええっと、彼女も……女神さん?」
「違うわよ!! 彼女は、天使の父親と悪魔の母親の間に生まれた半天半魔の魔王――魔の神イリューに仕える十二魔王の一人よ!!」
「イリュー様のお名前を、呼び捨てにするのは許さないわよ、カリオペ――」
女神――カリオペと、にらみ合うヴェルバーン――
「あなたが関わった召喚者ということかしら? 妹たちムーサイからの事前通達もなしなんてどんな手品を使ったの……?」
「特殊能力による情報収集を阻害する技術『シックス・フェイク』は日本の天逆衆が得意とする技術よ。まぁ私のはちょっと強化してあるけどね」
訳のわからない事を言いあうカリオペとヴェルバーン……なんか、この事態を誰か説明してほしいんだけど……
「とりあえず、この子に渡そうと思っているギフトはバベルの実だけだからそれだけもらったら一緒にこの子を呼んでる世界へ行ってあげるわよ」
「そんなことを、私が許すとでも……?」
だんだんと険悪になってくる二人……
「以前滅びたレオンガルデのようにあなたを滅ぼしてあげるわヴェルバーン!! 『オープン・ザ・ブック』!!」
カリオペの手の中に分厚い本が出現する――!!
「『ページ1075・稲妻の裁……って、ヴェルバーンどこに行ったの!?」
キョロキョロとあたりを見渡すカリオペ……
「そこの日本人、ヴェルバーンは何処へ行ったの!?」
「いや、あんたの隣にいますけど?」
本を開いていたカリオペの横に空間を引きだしのように開きまくるヴェルバーンがいる――
「あったあった、バベルの実。はい、これ食べてね!!」
ヴェルバーンはそう言うと小さな木の実みたいなものを僕に投げてよこす――
「女神をおちょくるのもいい加減しなさいヴェルバーン!! 『ページ1075・稲妻の裁き』!!」
ズガガガン!!
天井から激しい稲妻がヴェルバーンに襲いかかる――だけど、
「うるさいなぁ『盾よ・シールド』」
キン!
手を挙げただけで稲妻をかき消すヴェルバーン――
「天使の血を引いてるだけあって、少しは神界の力に対して抵抗力があるようね――」
そう言いつつ新たなページを開こうとするカリオペ――
「おっと、今度はこちらの番じゃないかしら? 『天魔の激昂・悪夢の斬撃』」
クオン……ブンッ!!
瞬間的にヴェルバーンの手に一振りの剣が握られると彼女はそれを軽く振る――
グウウウウウオォォォォォォォン!!
突如巻き上がる大破壊――!!
「おのれ!! ヴェルバーン!! 『ページ743・剣の裁き』!!」
カリオペが叫ぶ!! そして再び、ページを開きヴェルバーンと同じように剣を手にする――!!
「いくわよ!!」
キン!! ガン!! ゴン!! バギ!!
バリバリ!! ズガガ!! ドゴッ!! バゴッ!!
カリオペとウェバーン、二人の女、二振りの剣が交錯する――
その度にあたりの空間に亀裂が入ったり、何か砕け散ったりと大変なことが起こりまくっている……
とりあえず僕は、そんな物を眺めながら、ただ呆然としているしかなかった。
「いいの? ギフトがそこら中に散らばるよ」
何度か打ちあった後、ヴェルバーンはにこやかにそういう――
「え?」
幾度となくヴェルバーンと打ち合っていたカリオペは我に返ってあたりを見渡す――
「きゃあああああ!! これってかなりまずいことじゃない!?」
慌てて壊れた空間を直そうとするカリオペ――そんな女神を無視して、ヴェルバーンは僕の元へやってくる――
「あれ? まだバベルの実を食べていないの? 早く食べて行きましょ」
「いくって……どこへ……?」
なんか、かなりヤバイことになってないか僕……
「決まってるでしょ。可愛いあの子、ニナちゃんのいる世界だよ!」




