聖女の秘策-レイナ視点
「……!!」
「……………!?」
「………………………!!」
どこかで誰か小さな女の子が騒いでいる声がする……
うるさいなぁ……人が寝ているそばでそんなにわめかないでよ……
……草の匂いがするし、やわらかい地面が再び私を夢の世界に誘うとする……
? ? ? ? ?
なんで私、地面で寝ているの?
……………ここはどこだろう?
……私は……?
……私はレイナ……
王都で出会った最強の魔女、ヴェルバーン様に、強くなりたいかって聞かれて、それにOKしたんだったよね……
……それから私、何をやっていたんだっけ……?
……確か、ヴェルバーン様の強くなるための実験に付き合ってて……
……それとどうしたんだっけ?
……全然、思い出せない……
……………………………………………………………………
……お腹すいた。
私はとりあえず、目を開ける。
私の目の前で、女の子が背中に手羽先を背負った男に何かを激しく言っている――
――手羽先。
――美味しそう。
……………………ジュル………………………
「いただきます!」
パク!
私はいちにもなく、その手羽先に食いついた――
「ぎえええええ!!」
背中にある手羽先を噛み切っただけなのに、男はかなりの悲鳴を上げる――
「な、何をする!? なぜいきなり吾輩の翼に食いついた!?」
「……だってお腹が空いたんだもん!!」
「腹が減ってたら人は羽を食うのか!! これだから人間というやつは……!!」
背中に手羽先を背負った男は私に対して金切り声を上げる――別にいいじゃん、手羽先食べても。
「まったく、勝負事はついたのだ! 吾輩はこれにて失礼させていただく!!」
男は背中の手羽先を広げてジャンプした!
「待て!! ジャッジメント!!」
男に何かを叫んでいた少女がそう叫ぶ。
どうでもいいけど、
「あのさあ私、お腹空いてるんだけどさあ、何か食べるものない?」
「ちょ、ちょっと離してくれ!! あいつを追いかけなきゃ!!」
「あいつ?」
少女の視線の先には飛んでいく手羽先……を背負ったさっきの男……
なんで手羽先飛べるんだろう?
「くそ、あいつ!! いったい何のために出てきたんだ!? せっかく手に入ったルーンレイスを……魔女ハピレアに対する対抗手段を、なくしやがって!!」
ダンダン!!
少女は地面を蹴りつける!!
ぐぎゅう~~……
「……!」
少女の狂乱は、私のお腹の音で止められる。
「あの、クッキーなら少しはありますけど」
少女の後から別の少女が現れる。その手に持ってるのは――!!
「クッキー!!」
もう一人の少女は親切にも私にクッキーをくれた――――!!!
「ありがとう!! 何か知らないけどものすごくお腹が空いてたんだ!!」
おいしいクッキーが、私の体に入っていく――!!
「なんだろう? ものすごく久しぶりな気がする……?」
お腹が満たされると、周りの様子を見てくる――
ここはどこかの街道らしい。
さっきなぜか飛んでいった背中手羽先男ははいなくなったけれど、その男に対し怒鳴っていた少女と私にクッキーをくれた少女の他には、ドレスを着た少女とそれに付き添うメイドさんとその周りに――あれ? 周りの兵士さんって、この国の兵士さんじゃないよね? そして、
「許せない、絶対に許せない……!! 魔女ハピレア!!」
すさまじい量の黒いオーラを発している女性が一人――
「フフフ……どんなことがあっても、あの魔女の野望を阻止してみせる――、絶対に……絶対に……フフフ、ウフ、ウフフ」
なんか怖い……
「さっきまでのあんたの方が、よっぽど怖かったぞ」
「エルト、そういう事は言っちゃダメ」
「魔女ハピレアに野望何かあるのかどうかわからないし、そもそもあいつに洗脳された人間を元に戻せるルーンレイスがいなくなってしまったんだ。どうすればいいんだ?」
ルーンレイス? 何のことだろう?
まあ、そんなことよりも、
「ねぇ、喉が渇いたんだけど、何か飲み物ない?」
私はクッキーをくれた少女にきく。
「あ、待って。確か馬車に水筒があったから」
そう言って近くに止めてあった馬車に走っていく少女―――――
――――――――馬車……………………
お馬さん………
「馬刺し……」
「食べることしか頭にないのか?」
「だってお腹空いてるんだもん」
やがて少女持ってきてくれた水筒から水を飲むことで一息つく。
「そうよね……魔女ハピレアに洗脳された人たちを元に戻す事――それが魔女の野望をくじく最善の方法よね……」
黒いオーラを立ち登らせる女性が、立ち上がり地面に落ちていた木の枝を拾い、
ガリガリ……
一応私も、魔法の知識がある。
だから彼女が地面に描いているものが何なのかわかる――
『魔法陣』
本来は、魔力を増幅させたり、高位魔法を使うために使用されるもの――
他には、異世界から何かを召喚したりするのにも使ったりする――
「聖女、何をするつもりだ?」
手羽先を背負った男と何やら言い争いをしていた少女が、その女性に声をかける――
……聖女?
聖女って、神殿の聖女様? 信仰の対象になっている有名な女性だけど、こんなに黒いオーラを放っているのか聖女?
「異世界から、魔女の天敵を召喚する――そう、魔女を倒せる怪物をね……」
何言ってるんだろこの人? というか本当にこの人、聖女様なのかな?
「召喚するべきは、魔力だけを食う怪物――ルーンレイスみたいのやつね。それを召喚すれば、魔女の呪縛から人々を解放することができる――」
……ジュル……
魔力って、美味しいのかな?
「――おもしろそうな事を、しているわね――」
?
この声って?
私はキョロキョロと声の主を探す――
この声を間違えるはずがない――
「ヴェルバーン様?」
王都であった史上最強とも思われる、魔女……近くにいるのかと思って探してみるけど影も形もない――
だけど、声は聞こえる……
「クスクス……少しぐらいは、協力してあげようかしら……この半天半魔、ヴェルバーンがね」




