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見てくれ『だけ』を魔女に惚れられて  作者: すしひといちなし
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ヒャッハ~~!!-1

「貴女は一体何をやっているのか!?」

「え? 裸踊りだけど?」


 クイエト王子の部下の一人の騎士がステージまで走って行って、聖女に声をかける。

 聖女は、こともなげにそう答えた――


「こんなの大きなステージがあるんだからショーを見せなきゃ損でしょ? で、私がやれるショーは裸踊りくらいだもの! だからこうして踊っているの!」


 聖女がステージだと言っている場所は神殿の聖壇だ。

「どうなっているのかなぁ? 本当にあの人は聖女様?」

「まさか私たち、間違った場所に来てしまったのでしょうか?」

 アーニャとホリアが不安そうな声をだす。


「それは間違いない。俺は前に彼女に会ったことがあるからな」

 クイエト王子がそう言う。

「しかし、彼女はあんな性格ではなかったはずだ――何があった?」


「まさか、ハフスブルム騎士爵が何かしら方向転換して、彼女にあんな風にイメチェンするように命令したんじゃないだろうな?」

「ありうるな。あの変態騎士爵なら」

 俺の言葉にそう返すクイエト王子。

 ハフスブルム騎士爵の評価はだいぶ低いらしい。




「そんなわけはないだろう……!」


 聖女の異変についてあれこれ議論をしていた俺たちの会話に割り込んできた人間がいた。


「……フン……」


 みすぼらしい格好をした目つきの悪い男だ。一見して、身分の低いものだということがよくわかる。ただし、見目は悪くない。顔立ちはかなり整っている方だ。神殿に仕える下男か何かなのかもしれない……


 男は、俺たちを順々に見つめる――


「男はどうでもいいが、女の子はかわいいのがそろっているじゃないか。特におすすめは、君のようだな」


「ふざけるな……」


 俺を見つめて、そういった男に俺は不快な目を向けた。


「きつい性格だな。将来が楽しみな容姿をしているのに、そんなんじゃモテないぞ。どうだ、次代の聖女としてこの神殿で修行してみるのは?」


 面白そうに言う男――

 悪いが、俺自身が聖女になるつもりも、ニナの体を聖女にするつもりもない。


「君は、もう少し成長してからの方がいいな」

「余計なお世話!!」


 アーニャが叫ぶ。

 男の目は、間違いなく俺の……ではなく、ニナの胸とアーニャの胸を見比べていた――おそらくこいつはエロオヤジ……


「そしてあんたは……」

 男は、ホリアをマジマジ見つめる――

「俺と結婚しないか?」

 ホリアに対し、男は左手を差し出しいきなりそう言う。

「何なんですかいきなり……あなたは一体何者ですか!?」


「いや、なんか運命を感じてさ」


 そう言って左手を口に当てクックックと笑う男……あれ? もしかして……


「あんた、右腕……」

「ん? ああ、気がついたのか」


 男はそう言って服を少しはだける……見せられたのは、右腕の付け根にある深くえぐられた大きな傷跡だった――


「う……」


 アーニャが目をそらす――


「剣によるものだな……」

「そうだ、あの忌まわしき魔女に従う剣士にやられたのさ……」


「魔女に従う剣士――まさか、魔女ハピレアか!?」


 その可能性は考えていた。だが、口に出さなかっただけだ。


「知っているのか? まあ、あの魔女の悪名は有名だからな」


 深く、暗いそして悲しい言葉が、男の口から出てくる。


「あの魔女が現れたせいでこの神殿は無茶苦茶さ」


 そう言って男は空いていた椅子にドカッと少しも腰を下ろす。

「あの魔女が聖女様をヌーディストダンサーに変えてしまったのさ」


「……」


「周りの人間もほとんどがあの魔女に洗脳された……俺を除いてな……」


 疲れ果てた顔で男はそうは言った。


「……お前、もしかして魔力を持たないのか?」

「ん? そうだが……」


 俺は、そう男に声をかける――やっぱりか!


「ねぇ、エルト、この人も……」

「どういう事なんです?」


 アーニャが何かを察したように、ホリアはわからずに聞いてくる――


「ホリア、君は魔女ハピレアによる洗脳を受けていない。そして、この男も……そこにある共通点は、二人とも魔力がないということだ――つまり、魔力を持ってる人間にしか魔女ハピレアの洗脳魔法は効かない」


「違う」


 俺の言葉を真っ向から否定するアーニャ――


「正確には、魔女の魔法は洗脳じゃなく魔力の形を変える形成魔法なの――形を変えられた魔力が人間の心を封じ込めてしまう――だから、魔女の被害にあった人間は魔法が使えるようになる――」


「それは……」


 そういえば今のアーニャは魔法が使えるのだろうか?


 魔女ハピレアの魔法の支配下にあった時、アーニャ、そしてその友人らしいウイスという少年や他の子供たちも魔法は使えていた――

 彼女の言う通り、魔力が体を支配していた状態のときに魔法が使えていたのなら、今のアーニャはルールレイスによって魔力を奪われて正気を取り戻している状態だ。


「なあ、アーニャ……君は今、魔法が使えるのか?」

 俺とりあえずそう聞いてみた。

「今魔法を? ええっと、『光よ…ライト』!」


 ポッ!


 小さな明かりがアーニャの手のひらの上に現れる――


「使えるよ、ルーンレイスによってとられた魔力は、少しは回復してから……」


「そのようだな」


 それは、下手をすればまた魔女ハピレアに洗脳されるかもしれないということを意味しているのかもしれない――


「……」


「……ミレーニア、いるか?」


 俺はふと思いついて虹の精霊に声をかける。


「なんだ? まだ女友達がいるのか?」

 男は少し顔を上げて俺にそう言う。


「何や? どないしたんや?」

 それに答えず、現れた精霊に俺は顔を向ける。


「へえ、精霊か。珍しいのがいるんだな」


 王都などでは、精霊を宿らせて動かすゴーレムの運用が盛んなので精霊自体珍しいものではないと言われている。が、それは王都だけの話で、こういったところやレグリーム伯爵領などの地方では珍しいのだろう。


「お前、人間の魔力を奪い取るなんてできないのか?」

「無理や。うちら精霊の魔力と、人間の魔力は質が違うからな。同じ人間の魔力から作られたルーンレイスならいざ知らず、うちら精霊では、人間の魔力は奪えへん」

「そうなのか……」


 確かに、精霊が人間の魔力を奪うなんて話は今までも聞いたことがなかった。


「……もし魔力を奪うことができるなら、ハピレアの洗脳を解くことができる……でも今、それができるのはルーンレイスのみ……」


 ルーンレイスの本来の体であるレイラの肉体は、馬車に積んである。

 うまくいけば元に戻してあげられかもしれない、そういう期待を込めてヴェルから預かってきていた――


「でも、ルーンレイスの存在が魔女ハピレア討伐の切り札になるなら……」

 そう俺は考えていた時だった――


 バアン!!


「王子、大変です!!」


 神殿の扉が開けられ外の見張りをしていた騎士の一人が駆け込んでくる――


「って、なんですかこれは? 聖女の裸踊り!?」


 どうやら中で何が行われていたか、この騎士は知らなかったらしい――


「これには理由がある。何があったか説明しろ」


 クイエト王子はそれをスルーして、騎士に問い掛ける。


「あ、はい……東の方角よりヒャッハ~~な人間たちが迫ってきております!!」


 ヒャッハ~~……?

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