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見てくれ『だけ』を魔女に惚れられて  作者: すしひといちなし
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精霊との戦い

「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ……」


 息が切れ、体全体で呼吸をしているような感じがする……

 魔法も攻撃もかなり出し尽くしたが、相手は一向に倒れる気配を見せない。


 いや、傷つく気配すらなかった――


「全然……かなわない……」


 正直それが俺のちゃんとした感想だ――相手はゴーレムの一種リビングメイル――ゴーレムの一番いい倒し方は、精霊を飽きさせること。


 精霊は自由意思だ。術者の命令も、飽きてしまえば拒否してしまえる――


 それが、ゴーレムの最大の欠点であり、ゴーレムが戦闘兵器に向かない最大の理由だ。

 だが今回は、それができない――


 ミレーニアはエルライア師匠に従う存在であり、その命令を拒否するようにはなっていない。


「『大地よ、うごめけ! アースクイエク』!!」


 ドオオン!!


「おっと、かなわんなぁ!」

 地震を起こす魔法で足元を崩すが、あっさりと抜けられる――!

 ああ見えて、敏捷性が半端なく高い――!!


 剣の形は素人だ。それゆえに読みにくいと言う難点もある――わかっているのはそれくらい――


 そして、このまま戦い続けることができないのは、このニナの体のスタミナがもうすこしで切れてしまうという事態もあるだろう。


 この体は、長く戦い続けるには向いていない。


 昔の、エルトの体であった時の半分も戦い続けることができない――


「…………クソ……、俺が負けだ……」


 そう言って俺は師匠に渡された竹刀を杖のようにして力尽きた。立っているのがやっとだ……




「フム……まぁ善戦した方かな……ミレーニア、お前の能力を使ってみろ」

 師匠がリビングメイルに向かってそう言った声が聞こえる。

「ああ、そのつもりやったんやろ?」

 そういう声が聞こえた一瞬後、


「――!?」


 急に体が軽くなる!!


「これは――!?」


 ガシャガシャ――


 俺は全身の鎧を動かしながら立ち上がる……


「うわっ、ひどい疲労やな、こんななるまでよく動けたもんや」


 声がした方を見ると、汗だくの女の子が倒れ伏す瞬間だった。


「うわぁ!! ニナの体は大丈夫なの!?」

 アーニャが倒れた女の子に駆け寄る。そしてアゼルもそれに続く。


「ちょっと! あなた!! もっと手加減して戦ってあげなさいよ!!」


 今起こっている事態がわかっているのかわかっていないのかアーニャが俺に詰め寄ってくる。


「どや? その体――さっきまで使っとったうちが言うのも何やけどかなり使えるやろ? あんたの剣さばきはさっきちゃんと見せてもろた。その体にあんたの技術が加わればかなりのもんになると思うで」


 アゼルに助けられて立ち上がる女の子―――


「そうか、今俺はミレーニアの――精霊の体でリビングメイルに取り付いているというわけか……」


 そう言って竹刀をブンと振り回してみる――全く、違和感なく動ける上にさっきまで俺が与えていたはずのダメージが一切感じられない――


「その体を使いこなせるのならば、かなりの戦力なるはずだ――ただし、時間制限には気をつけろよ」


「時間制限?」

 俺はそう言った師匠にリビングメイルのまま声をかける――

「いくらうちでも、そんな長いこと自分の体を離れとるわけにはいかへんからな! あんたがそのリビングメイルの体で戦えるんはせいぜい長くて5分程度やと思っとき」


 その声が合図だったのか、再び全身が疲労に包まれる――ニナの体に戻されたようだ……


「師匠……その言い分だと俺にミレーニアを貸してくれるような言い回しですけど、俺、試験には合格してません。勝てませんでしたから――」


「?」


「いや、だいじょぶや」

 リビングメイルから精霊が飛び出してきて俺たちの側にやってくる。

「あんたと行くとおもしろそうやから、うちはついてってみようと思っとる! よろしくなニナはん!」


「え……?」


「どうせ最初からうちに決めさせるつもりで戦わしたんやろ? なぁ、獅子王様」

「師匠?」


「俺は自分の決めたことにより、この世界の人間を殺すつもりはない。だからこういう形でしか手を貸すつもりはない――」


「師匠…………ありがとうございます………」


「そうだな、これも餞別だ」

 そう言って師匠は一振りの剣を取り出した。飾り気のない、どこにでもありそうな剣だ――


「リビングメイルで戦う時はそれを使え――」


「――ありがとうございます」

 これは素直にそういった――


「……」




「クスクス……ロンメルド、あなたがどんな小細工してくれたか、とくと拝見いたしましょう……」

 ヴェルが何かを言っているようだが疲れていてよく聞き取れなかった。




「あ~~みんな、こんなところにいたの!?」

「探したよ!! 皆!!」

 そんな声が聞こえてきた――


「あ~~ウイス!!」


 アーニャが叫ぶ。


「ニナお嬢ちゃんこんな所へ遊び来てダメじゃない!!」

 俺に対し注意する野太い声――ムヴエ……!!

「またお尻ペンペンされたいの? ニナ」

「そんなにボロボロになって! ダメだろ! お前は大切な体なんだから」


 レグリーム伯爵夫人にメイド姿のトウカ……


「……なんか、知らない顔も増えているようだけど何かあったのか?」

 メイド服姿のトウカが男言葉で問い掛けてくる。その様子をアーニャが眺める――


「まったく、ニナ。ホントおてんばさんなんだから。せっかく王都にきたのに最新ファッションのお店に行かないでどうするの?」


「――へ?」


 今、レグリーム伯爵夫人の口からとんでもない言葉が聞こえたような……


 最新ファッションのお店って何だ?


「あ、それいいね! もちろん私も付き合うよ!」

 ヴェルが一瞬にして俺達の側にやってくる。

「ファ、ファッションって、いったい何?」


「まかせといて。ニナちゃん! 私が最高のコーディネートをしてあげるよ!」

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