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見てくれ『だけ』を魔女に惚れられて  作者: すしひといちなし
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保健体育の授業

「明日からできる大魔王ライフ!! 入門編!! ノーベルマシー著!!」


 ヴェルが一冊の本を取り出す。


「読んだ人の感想――阿修羅王ラゴラの娘シャシさん!! 『私も最初は不安だったんです。お父さんに言われたからって、私なんかが魔王としてやっていけるのかって……でも、この本を読んで思ったんです! 私でも魔王をやっていけると!』」


 本当かどうかわからない、さして興味のない事を言い出している。


「今、魔王になると超絶美少女ヴェルバーンと行く不夜の都・東京7日間の旅を記念にプレゼント!!」


「一体全体何をやっているんだヴェル!!」

「何って? ニナちゃん勧誘に決まってるじゃん!」

「それはさっき断っただろ!! 俺は元の体に戻るために戦っているんだ!!」


「なんで~~? その体で魔王になってくれたらいいんじゃないの?」


「そんなわけないだろう! 俺の精神と魂はずっと俺の体ですごしてきたんだ!! その肉体と魂の絆は決して切れるものではない!! 同じようにニナの体と魂の絆も深い!! それを俺が奪うわけにはいかないんだ!!」

 俺は、そう言ってヴェルを睨み付ける――


「う~~ん、ニナちゃんのその可愛らしい声と顔で言われても迫力がないんだよね。でも大丈夫、魔王になってくれればちゃんと威厳が出てくるから!」


「だから魔王になんかならないって!」

「そうよ! ニナの体を魔王にするなんて言わないで!!」

 アーニャも助け舟を出してくれる――


「しかしその体でどうやって戦い続けるつもりだ?」

 言い争っている俺たちに、エルライア師匠が口を挟んでくる――

「今のお前は魂に依存している魔力は変わっていない。それに、ヴェルバーンから与えられた知識の実もある――だが、魔法を封じられたり、魔力がなくなった時はどうするつもりだ? 前のお前ならば騎士としての能力もあっただろうが今は無いのだろう?」


「それは……」


 それは、俺も考えていたことだ。


 体が違う、それだけで使える戦法が全く違う――俺の本来の体……エルトの体ならば、魔法効果を付与させた魔法剣を使うことができた――魔力を剣の形に変えた魔力剣なら今の体でも使えるが、以前のような剣闘術を使えるかと言われれば、無理と答えるしかない――


 それに、ハピレアと戦うならばもう一つ問題がある――魔女ハピレアの使う洗脳魔法だ。

 彼女の洗脳を受けたもの者は、間違いない敵になってしまうだろう――


「……そうですね。魔女と戦える人間をきちんと探さなければいけません……それにしても、エルライア師匠も魔王の一人なんですよね、俺はこんなに協力していいんですか――?」


「俺は、魔王である前に教育者だ」


「…………」


 俺は、顔は少し赤くなるのを感じた。

 エルライア師匠は、気に入った人間にしか教育を行わないということで有名だが、その教育を受けた者は一流以上の教育を受けほとんどが魔法職に就くことができていた。それはエルライア師匠の熱心な教育のおかげでもあるだろう――師匠は、教育に手を抜かない――


「師匠、何か良い方法はあるんですか!?」

 俺は師匠に質問する――師匠はそれに答えず、俺を上から下まで真剣に見つめる――

「それに今お前は少女の体だ。男女体の違いはきちんと理解しているのか?」


「へ――?」


「わかってないようだな。仕方がない――俺が保健体育の授業をしてやろう――」


「え? は?」

 いきなり何を言い出すんだ? 師匠……?


「アゼルも、しばらくメタリオムの体で過ごすことになるんだろう。だからきちんと聞いておけ――アーニャも、これは魔法学院で才能無い人間も受けなければいけないに二年間の教育で必ず受けなければいけないものだ聞いておいて損は無いはずだぞ――」


「あ、保健体育用のDVDを用意するね!」

 なぜか嬉しそうにヴェルがいい、先ほどまでこの部屋の絵を映していた巨大な板の後ろに小型の箱を設置しその中に真ん中に穴の開いた円盤を挿入する――


「『緩やかなる雷よ――ハンドレット・ライトニング』」


 パリパリ……


 今度は、板だけでなく円盤の入った箱からも伸びる紐の先を持って魔法を使うエルライア師匠――


「あ、あの……師匠……?」

「TSキャラでも、正しい性知識を身につけるのは、必要な事だからな」


 再び、巨大な板に光が灯り――


『さあ、まずは男女の体の違いから説明していきましょう――』

 板に映った女性が開口一番そう言い出した――


 そして、保健体育の授業が始まった…




『女性には、排卵日という物があります……』


『月の周期で女性は排卵を行います。この時……』


『初めての生理、これは初潮と言われています。この時、血が出てきますが、慌ててはいけません……』


『これが生理の仕組みです……』


『女性一人では、赤ん坊を作ることはできません……』


『これが男女で行うセ…………』




 授業が終わった後、俺、アゼル、アーニャはぐったりとへたりこんでいた――

 とんでもなさ過ぎる。

 女性として、知っておかなければいけないことがこんなにも重要で、そしてたくさんあるなんて……

「自分、一刻も早く自分の体を取り戻します――自分では、女性の体を扱っていく自信がありません……」

「た、大切なことなんだよね女の子として生きていくためには……」

「……その大切なことを、ニナ本人にきちんと知ってもらうためにも、体を取り戻さなくちゃいけないんだ」

 俺は頭をかかえる。一応学院時代に性教育は受けていたが、女性の方が気をつけなければいけない事、知っておかなければいけなかったことは限りなく多かった――


 ていうか、男のほうもきちっとした知識を知るべきじゃないのか……?


 女性には妊娠という危険があるから、男性よりも慎重になるのわかる。

 まあ、本当に愛した男性との間にできた子供なら祝福されてしかるべきなのだろうが……

 って、女性用の性教育を受けたために目線が女性視点になっているぞ!!


「しかしお前が体を取り戻すために戦い続けるというのであれば、必要となるものもあるだろう……そうだな、何かしらの力は貸してやった方が良さそうだな」

 エルライア師匠は少し考え込む――

「とりあえず、お前が今出来る事は何なのかそれを知るためにテストしてみよう。表に出ろ!」

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