今回の元兇は?
「ちょ、ちょっと待て!! お前、本気でそんなこと言っているのか!?」
「でもなんで、ルーンレイスは勝手に行動し始めたのかしら……何か、訳があるのかな? ちょっと確かめてみるか」
俺の叫びを聞かず、ヴェルは部屋に散らかったガラクタを描き分けるように部屋に入り、その中から大きな長方形の板を俺たちに見せるように動かす――その板は表面がツルツルで黒く、鏡のように俺達の姿が映っていた……
「このテレビには確かバッテリーが内蔵されないんだよね。エルライア、電気!」
ヴェルはその板から伸びる紐の先端をエルライア師匠に投げ渡す。そのひもの先は二股の槍のようになっていた。
「仕方ないな……まったく、面倒なことをさせやがって――」
エルライア師匠はその二股の槍のようになっている紐の先端を持ち――
「『緩やかなる雷よ――ハンドレット・ライトニング』」
魔法の呪文を唱える――
パリパリ……
エルライア師匠は手に魔法の光を灯し、定着させる――確かあれは、
「雷系の魔法……しかもだいぶ弱い」
アゼルがエルライア師匠の手の中の光を見てそう言う。
「何か、エルライアさんって、魔法学院でも有数の魔法教師なんだよね……それにしては使わ魔法がちょっとしょぼいような……」
「アーニャ、よく見ろ――魔法の効果が持続している……あれはかなりの高等技術だ……」
ヴン……
「え―――?」
長方形の板に光が灯る。
「……綺麗……」
アーニャが場違いな感想を漏らす。
「ええっと、確かこの辺に……ああ、あったあった」
ヴェルは光のともった板に注目することなく壁の上の方から丸っこい何かを取り出す。そこからも紐を――今度は先端に小さな長方形の金属片がつていた――を光る長方形の板の裏側に差し込む――
「……いったい何をやっているんだ?」
俺には全く理解できない。アゼルもアーニャもヴェルが何をやってるのか理解できないようだ。一応エルライア師匠はわかっているようだが――
「これでテレビに防犯カメラの画像が映るはずよ――」
長方形の板の光が変化する――
「数日前は別に問題ないよね」
光の中に現れたのは俺たちは今いる部屋の絵だった――
ほんの少しだが床に落ちているガラクタの位置関係が違う――それと目を引くのは部屋の中央に虹色の円柱があることだろう――虹色の円柱なんてものは、今この部屋には無い――
「ものすごい技術で、なんかものすごい無駄をやっているような気がする……」
「てっいうか、一体どこの誰がこんな魔道具を作ったんだ?」
「さっきまでの光の方が綺麗だった!」
「早送り早送りと! とりあえず、赤い仮面の三倍速、と!」
「赤い仮面で三倍速? そんなマジックアイテムでもあるんですか?」
「無理だろ。仮面なんかかぶっていたら視界が狭まって、スピードアップどころか無茶苦茶行動が制限されてしまうぞ……」
俺は全く関係ないことに興味をしめしたアゼルに仕方なく突っ込みを入れる。
「……なんか君って、小さいのに賢いね……」
「これは俺の本来の体じゃない!」
「そうよ! ニナは本来こんな性格じゃないわ!」
板に出現した絵の右上に『×3』と言う謎の文字が現れる――が、しばらくは変化を見せない。部屋の様子も、虹色の円柱も変化がない――
「あ……」
絵に、影がよぎる――
「行きすぎたかな? 巻き戻し、と」
今度は、『-×1』という文字……すると、影が再び現れる――
「一時停止、と……!」
絵に、影が映った状態で止まる――
「なんなのこの絵?」
俺もアーニャと同じ疑問を抱く。
「あ、こいつって……!」
「知ってる奴か?」
エルライア師匠がヴェルに聞く。
俺も、その絵に現れた人間の――下品顔に見覚えがあった――
「バカダ・バカダーナ・バカナンダー……」
確か、そんな名前の下品顔だ……
「この男、私に無断で私の部屋に入ったのね!」
怒りに震えた声でヴェルが言う……
「メタリオムも何をやっていたのよ! 防犯カメラの映像はあいつのパットに転送されていたはずなのに!!」
「メタリオムなら、その時賭けの胴元やっていたぞ――パットはそのデータを入れるのに使っていた――」
ヴェルの言葉にエルライア師匠が答える。
「メタリオム!! あんた、何をやっているのよ!!」
バッ!!
ヴェルはアゼルの着ている薄い布を引っ張り振り回す――
「じ、自分はアゼルですぅ!!」
アゼルが泣きながら叫ぶ――
『ったく、なんだこの汚い部屋は……ろくなもんがありゃしねぇ……』
絵の中の下品男がそう言う。
「あなたの顔ほどじゃじゃないわよ!!」
ヴェルが絵の中の下品男に向かって叫ぶ。
『価値のありそうなのはこの虹色の光か……だけど、どうやって持ち帰りゃいいんだ?』
下品男、バカダ・バカナンダーナ・バカナンダーはまともな商人とかそういうのではないと思ってはいたが、あいつは留守宅に忍び込み人のものを勝手に取っていく泥棒だっのだ。まぁあの顔でまともな商売などできるはずもないが……
『おや、この宝玉は……結構価値があるっぽいな……』
絵の中の下品男が見たことのある宝玉を手に取る。
「あれは、確か虹色の障壁を生み出す宝玉――……」
と、板の中の絵は再び変化する。虹色の円柱がなくなったのだ――その中でできたのは――
「ルーンレイス……!?」
『ドウシテ、マリョクノキョウキュウガトダエタノ?』
絵の中で、ルーンレイスはキョロキョロと動く――
『うん? なんだ?』
下品男もそれに気づきそちらを見る――
『キャア、ヒドイカオ!!』
『ウオッ!! 化物!!』
そう言って、 二人は別々の方向に逃げ出す――残ったのは、俺たちが入ってきた時と同じ光景になった部屋だけだった……
「これではっきりしたわね」
ヴェルが納得いったという表情で言う……
「すべての元凶は、あの下品男だったのよ!!」
「いや、すべての元凶はお前だ! ヴェル!!」




