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見てくれ『だけ』を魔女に惚れられて  作者: すしひといちなし
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ルーンレイス-2-名も明かされぬ奴隷視点

『マリョク……マリョク……ヲ……』


「ぐぎゃああああああ!」


 ラムグリーン色の輪郭のはっきりとしない女の形をしたなにかが、男に触れると、男は悲鳴を上げて倒れてしまった。

 その男の周りでは同じように魔力を奪われた人間たちが倒れている。


「げへらげら~~おい、聞いたか? ぐぎゃあだってよ! ぐぎゃあ!」

 その様子を嬉しそうに見ているのは、今の俺の主人だ。


 奴隷の名前なんて、だれも気にしないだろうからあえて名乗らないでおく。

 そして、まあ誰も興味を示さないだろうが、今の俺の主人の名前は……


「見ろ見ろ! これが、このイルダ・イセリアーナ・イライザーダがせっかく作ってやった護符を買わなかった奴の末路ってやつだ! げへらげら~~!!」


 ただの商人が貴族の証であるセカンドネームを持ってるはずがないのでおそらくは自分で勝手につけただけだろう。とりあえず俺はイルダと呼んでいる。まぁ、本人はご主人様と呼べなどと言っているが。


「せっかく、俺の作った護符を馬車の屋根の上に付けておけば、ルーンレイスから守れると言っておいたのによぉ!! げへらげら~~!!」


 誰があんなあやしいものを購入し、馬車の上につけるって言うんだ?


『マリョク……マリョク……』


「お、おいこら! そっちの方向に行くんじゃねえ! 次はあの商隊を襲うんだよ!!」

 そう叫んで、イルダは手に持った宝玉を掲げる。


 カキンッ!!


 上空に、虹色の光る壁が出現する。


『ヤ…』


 それに触れたルーンレイスは震えて向きを変える。


「おらおら! ボケっとしてんな!! あの馬車から金目の物を全部奪ってこい! それでまた大儲けだぜ! げへらげら~~!!」


 イルダがそう叫び、仕方なく俺達奴隷は倒れた男たちの元へ向かう――


「ひ、ひぃ!! 助けてくれ! 母ちゃん!!」

「くる、くる! 水が来る!! 山が崩れる!!」

「ぎゃああ、いやだいやだ!!」

「火がぁ! 火がぁ!!」


 恐怖に怯える倒れた男たち。


「ルーンレイスに魔力を奪われたものは恐怖に支配される。街の噂は本当だな」


 乾いた声で言う周りの奴隷たち。


 この国での奴隷は、犯罪を犯した者がその罰としてその身分に落とされる犯罪奴隷だ。

 それ以外は国家法で存在を認められていない。俺も人を殺した罪でこんなことになっている。

 だが、そんな俺でもこんな事は胸糞悪い。


 ルーンレイス。


 今、王都を騒がせている怪物。

 なんでも、王子の一人を含む大勢の人間がそれに襲われると言う大変な被害が出ているらしい。


 ルーンレイスに襲われたものは魔力を奪われ、心が恐怖に支配される。


 心ここにあらず、といった状態で自分が恐怖を感じるものを延々と見せられている状態になるらしい。


「おらおら、さっさと全部回収してこい、げへらげら~~!!」


 イルダは、ルーンレイスを操り、街と王都をつなぐ街道の人気のない場所で商隊を襲っていく……そして、抵抗する人間を全て恐怖で動けなくし、積荷などの荷物を奪う。


「げへらげら~~!! こんなにもため込んでいやがったのか!! ようし、このイルダ・イセリアーナ・イライザーダ様が世界一の大金持ちになるために有効活用してやる!! ありがたく思え!!」


 俺たち奴隷が集めたものを満足気に眺めるイルダ。


「……ご主人様、この人達はどうするんで?」


 別の奴隷が指差したのは、商隊の人間たちだ。


 商人とともに、戦士派遣協会から派遣された護衛たち、そして俺たちと同じような奴隷も何人かいる――


「ほっとけほっとけ! ほっとけば獣や魔獣の餌になっちまうだろ! 犯罪奴隷以外認めていないこの国じゃ、人間などに価値はねぇんだよげへらげら~~!!」


「「「…………」」」


 俺たちは、複雑な表情でイルダを見る……奴隷は、ご主人様に逆らわないように、魔法の制御装置を兼ねた奴隷証を体に打ちこまれている。これは外さない限り魔法は使えないし、ご主人様に逆らったり逃げようとすれば、体の動きが奪われるほどの激痛が走るようになっている。


 そしてイルダは、それを通常の倍以上をつけた奴隷しか、信頼していない。

 それと、金……


「よし、まだ余裕がありそうだなーおまえら」


 商隊から奪った馬車に荷物を積み込んだのを見たイルダはそう言う。




「よーし、街に向かう前にもう2、3個の商隊を頂くぞ! いいなぁ、ルーンレイス!!」


『マリョク……マリョク……』


 空中でふわふわと漂う怪物・ルーンレイス……


 カキンッ!!


 イルダは手に持った宝玉を使い空中に虹色の光の壁を出現させルーンレイスを自らが望む方向へ誘導する。


 この男がどうやってあんな物を手に入れたのかはわからない。が、真っ当な手段でない事は間違いないだろう。


 怪物を操るアイテムを手に入れた最低な男。それがイルダ。




「おやあ? あの商隊は俺の作った護符をきちんとつけてやがるなぁ……まあいいか、行け、ルーンレイス! げへらげら~~!!」


 イルダ……犯罪奴隷の俺が言う事ではないが、この男は世界一の最低人間だ……




「おい、聞いたか!? レグリーム伯爵の娘と、その友人たちが王都の魔法学院に入るために騎士団に守られて領都を出発したんだってよ! レグリーム伯爵といや、隣国との貿易で大儲けしているお貴族様、それに護衛はクイエト王子率いる騎士団という話だ!! きっと豪華な装備をつけているぜ~~!! 大儲けできそうだな~~げへらげら~~!!」


 早耳と呼ばれる情報屋から、そう言う情報をもらって、上機嫌なイルダ。

 また、悪いことを考えているらしい。


「ようし、伯爵の娘は保護してやって、たんまりと謝礼をせしめるとするか!! また大儲けだな、げへらげら~~!!」

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