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見てくれ『だけ』を魔女に惚れられて  作者: すしひといちなし
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魔女ハピレア -1

とりあえず、勢い任せで行こうと思います。

「ア~イラブユゥ~~!!」


「くっ!!」


 なんなんだこいつは!?

 俺は、俺に対して猛烈なラブコールをしてくる女を嫌悪の表情で見る!!


「その体つき、顔立ち、立ち振る舞い、まさに私の好みドンピシャ、パーフェクト!! あなたは私の恋人になるためにこの世に生まれてきた――そう、私とあなたは世界に祝福された恋人なのよ!!」


「ふざけるな!!」


 目をハートにして俺に抱きついてこようとする女を俺は剣で牽制する!


「ああ~~ん!! いけずぅ!! あなたは私の『恋人』なのよ~~!!」


 ビカッ!


「くっ……」

 女の目が怪しく輝く――

「さあ、私と愛の営みを――――」


 ザン!!


「いや~ん!!」


 もう少しで、首を叩きおれたのに……


「どうして、私の暗示が聞かないの~~!?」


 魔女の暗示――精神を塗り替えてしまう恐ろしい魔術だ――


 ビュッ! ビュッ!


「カシム!!」


 俺は剣の間合いから離れた魔女、仲間のカシムが矢を射かけた!!


「何よ~~まだお邪魔虫がいたの~~!?」


 ゴオ……!!


 魔女の手から、黒い波動が放出され、カシムが木の上から落ちる!

「ぐっ!」


「おいおい、駄目だろう! 淑女に対し、矢を射かけるなんて男のやることじゃないぞ!」

 金髪の美女ヒーラー、トウカが、カシムをたしなめる――

「トウカ……!」

 俺は、トウカの変貌ぶりに絶望する――

 あいつは、トウカは元々あんな男みたいな喋り方をする女じゃない――

 変えられたんだ! あの魔女に――!!


「そ~よ~こんなもの、振り回すなんて男のすることじゃないわね~」

 魔女が、カシムに近づく――!

「よせ!」

 俺は、魔女にさらなる攻撃を加えようとする――

「あなたぁ~その男を少し抑えてくださる~? いい男は、女の頼みを断らないものね~」

「おう、いいぜ!」

 整った美しい顔の美人が、美しい声で似合わない男言葉で返事をする――

「トウカさん!?」

 トウカが、カシムを抑える――

「やめてください、トウカさん!! 魔女の言いなりにならないで!!」

 カシムがどうにかトウカを振り解こうとするが……トウカはカシムに抱きつき体を密着させる――

「ひっひぃ!!」

 カシムが情けない声を出す――自分を押さえつけているトウカの胸が背中に当たっているからだろうか? 少し羨ましい――――


 って、そんなことを考えている場合じゃない!!

「カシム!! トウカを振り解いて逃げろ!!」

 俺が叫ぶ!!

「無理です、エルトさん!! こんな状況になってもトウカさんを傷つけるなどできません!!」


 カシムは、トウカに憧れを抱いていた――それがこんなことになるなんて!!


「あ~ら、あなたは少しは男らしいところがあるのね~……こんなおもちゃを振り回す子供っぽい男なのに……『小さな子供』としてやり直すのね~~」


 ビカッ!


 魔女の目が光る――!!

「クッ! カシム!!」


「ぼ……く……ちいさな、こども……」

「カシム!!」

 俺の叫びもむなしく、魔女の光を受けたカシムは呆然とそうつぶやいた――


「うえ~~ん!!」


 とたんに大声を上げて泣き出すカシム……

「おいコラ、ガキが! 泣くんじゃねぇ!」

 カシムを抑えていたトウカが、いきなり泣き出したカシムを殴りつける――!!

「だって、だって! なんだか体が痛いんだもん!」

 木から落ちた衝撃でどこかを痛めたのだろう――普段のカシムなら、そんな痛みは顔に出すことすらないはずなのに……!!

「大丈夫~?」


 ドスドスドス!!


 そんなのカシムに武道家のムヴエが駆け寄ってくる――

「痛かったのねぇ……わかったわ、お姉さんがいたいのいたいのとんでいけ~をしてあげる」


 マントを羽織り、自分の体を隠すようにしているムヴエ――言っておくがあいつは男だ――筋肉ムキムキのごつい武道家――それが、今、女言葉でなよなよしている――改めて、俺達の敵である魔女がとんでもない奴だと言う事を思い知った。




 ――魔女ハピレア――


 依頼主のレグリーム伯爵によると、伯爵領の一角で精神に異常きたした村人が何人も見つかったという話だ。

 やがて、伯爵領の森に魔女が住み着いたと言う情報が入った――


 それが魔女ハピレア――人の精神に干渉する魔法を使う魔女――

 魔女の目の光を浴びたものは魔女に暗示をかけられ、その言葉を真実だと思い込んでしまう――


 魔女がお前は犬だと言えば、その人間は自分が犬だと思い込み、猫だと言えば自分が猫だと思い込む――大抵の人間は魔女の魔力に抵抗できなかった――


 レグリーム伯爵は高額の報奨金を出し、魔女ハピレアの討伐を戦士派遣協会に依頼した――が、討伐に出た戦士たちのほとんどが無事に帰ってくることがなかった――


 そして俺達のチーム――魔法騎士でありリーダーである俺、エルト、武道家であり筋肉ムキムキであるムヴエ、ヒーラーでありチームの紅一点であるトウカ、そしてハンターであり最年少であるカシム――の4人が挑戦したのだが――


 最初に犠牲になったのは武闘家のムヴエだった――


「あなたは~そんな格好で恥ずかしくないの~? 少しは恥じらいを身につけた方がいいわよ~『女の子みたい』に!」


 ビカッ!


 それからのムヴエの行動は目も当てられない――!!

「いやぁん、あたしったら、こんな恰好……恥ずかしい」


 正直、吐き気がしてしまった――


「忌まわしき魔女よ! おとなしく滅びなさい!!」


 別にヒーラーは神に仕える者じゃない――ただ単に回復や治癒、治療の魔法を使える者という意味だ――だが、そういった聖女物語が好きだったトウカは好んでそういうもののを言い方をする――そして、メイスを振りかざす――!!


「あなたはまるで男みたいね……でも『いい男』って、女には暴力を振るわない物よ」


 ビカッ!


「おとこ……いい、おとこ……」

 それがトウカの女として最後の時だった――


「俺は、女を殴る趣味はない――」


 そして、カシム……!!


「おのれ、おのれ魔女め!!」

 俺は魔女ハピレアに向けて吠えた!!

「いや~ん! あなたは私の好みぴったりの姿だから、私の『恋人』になってほしいのに~~」


どうやら俺には魔女の暗示は効かないらしい!!

それがなぜかはわからないが、どうにかして魔女を倒す!!


そうすれば、仲間たち元に戻るはずだ!!

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