サークル課題作:星月夜
「地球の夜空はいいですね。無数の星が輝いている。さすがは人類の故郷」
「君の星にも、星空ぐらいあるだろう?」
彼女は首を振った。
「残念ながら、私の星にはこんな素晴らしい星空も月もありません」
夜空に光るは無数の星々。彼女はじっと空を見上げて何かを探すような視線を送っていた。母星でも探しているのだろうか。
若干の間があった。
「永遠って本当にあるんですよね」
「どうして?」
「夜空の星々は常に変わらずそこにありますから」
彼女は知らないのだ。月がいつか地球から離れてしまうことも、夜空の全ての星々には寿命があることも。だが、それは彼女には関係のないことだ。私は天文学者としてそれを知っていたが、彼女の中の永遠を、くだらない事実で壊すほど野暮ではなかった。
私達はベンチに腰をかけた。昼の名残りか、ほのかに温かい。
ポケットを探るとお菓子があった。チョコレートでないことを望む。
クッキーだった。彼女が欲しそうな目で私の隣に陣取っていたので、半分に分け合った。
「だが、時によって居場所が変わるじゃあないか」
彼女は真北を指さし
「北極星を見てください。常にあそこにありますよ」
私は彼女の指先を目で追った。どうやらあれが北極星のようだ。
「人類の歴史が始まってから、今までどれだけの人があの星を見てきたのでしょうね」
「数えきれないほどだろうね」
「私が死んだ後も、あの星はあの場所で輝き続けるのでしょうね」
彼女は知らないのだ。来年には、あの北極星もあの場所を捨て去っていくことを。
だが、それを彼女が知ることはあるまい。