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神話

ラグナロク

作者: 千路文也


 神々との徹底抗戦をしかけるロキの眼前に、屈強な男が現れた、その男は最古の神として長きに渡って神々の世界を守護していた伝説の男、ヘイムダルだった。


 彼は馬から降りたと思うと、一直線にこちらを睨み付けていた。だがこちらとて同じ神である事は変わらない。ロキは特に顔色を変えずに、それどころか微笑んでいた。ヘイムダルが何故、最古の神として今まで生き続けていたのか、それは相当な実力者だからだ。


 神々の世界を見守るという立場なだけあって敵は大勢いる。にもかかわらずヘイムダルはその度に勝利し、今の今まで勝ち続けたのだ。


 そんな相手に、ロキは平然とした態度でいられるのだから驚きである。


「これはまた……随分と早い到着ですね」


 ロキの顔色は変わらない。だが、ヘイムダルは怒り心頭のようで顔を真っ赤にして叫び声をあげているではないか。


「貴様、ワシらの土地を破壊する気か!」


「ええ、そうですとも。完膚なきまでにね」


 ロキはそう答えた。全てを破壊するまで止まらないのだと。


「何故だ。神であるお前が我々を裏切るなどと」


 どうやら、この男は理由を知りたいようだ。


「理由など言葉にするのは容易い」


「ならば答えろ!」


 彼の言葉は世界を響かせる。それほどまでの声量なのだ。だが、ロキにはそれすらも動じずに淡々と語っている。


「生きる者が行動する理由と一緒ですよ」


「……疑問か?」


「そう。頭の中に浮かぶ何故という感覚。それが私達を動かす原動力となるのです」


 ロキは疑問に感じているからこそ神々の世界を破壊するというのだ。


「お前が感じる疑問とは何だ」


「世界を正しい方向へ導く方法が知りたい。そう思ったからです」


「その結果がこれか」


 周り一面が火の海に覆い尽くされ、これまでに数多くの神が死んだ。ロキはこの結末こそが正しい世界の有り方だと言うのだ。


「ええ。破壊と創造を繰り返すが重要なのです」


「そんな個人的な思想で、我々を巻き込んだと言うのか」


「はい、そうです」


 ロキは首を縦に振り、速やかに肯定した。


「ええい。貴様の様な虫けらはワシが踏み潰してやる」


 こうして、ロキとヘイムダルの戦いは始まった。両者共に選ばれし神だけあって御託の戦いを繰り広げていた。そしてそれは最後まで続き、最終的には、ロキの頭蓋が砕け、ヘイムダルの心臓に剣が突き刺さり、相打ちとなった。


 その後、焔の巨人スルトがレーヴァテインを振りかざし、世界を灼熱の海へと変貌させた。こうしてロキの願いは叶ったのだ。


 頭の中に浮かぶ疑問を解決するために、彼は自分の命すらも簡単に明け渡す。そういった覚悟があったからこそ、ラグナロクを引き起こす事を可能にさせたのかもしれない。




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