運命の出会い..?
人は何故感情を持つのだろう。
そういえば、誰かが言っていた。
「 感情は世界に色をつけている。 」
では、それを持つことを諦めた私の世界はもうモノトーンなのだろうか。
「真華!真華!どうしたの?」
美希に話しかけられて、現実に戻った。またやってしまった。あの日から少しぼーっとすれば、すぐにあんなことを考えてしまう。
「やっぱり真華、休んだ方がいいんじゃない?まだ立ち直れてないんでしょ?無理して会社に来ることもないよ。」
美希は優しい。心の底からそう言ってるのがわかる。
「ゴメン。」
泣くな。泣くんじゃない。また泣いて逃げるのか。
「真華。もう帰りな。私から、体調不良で早退しましたって、言っとくから。あの人たちもわかってくれるから。ね?」
そう言えば、休めるのもわかってる。だけど、美希や同僚に甘えて迷惑をかけてしまう。それだけはいやだ。我儘だけど。
「ごめん。もう大丈夫。せっかくの昼休み、こんなことに使っちゃってごめんね。」
「ううん。いいんだよ。お互い様だから。」
ピッ
無機質なのにどこか自然に聞こえる改札の音を聞き流しながら、駅を出た。何でこの住宅街はこんなによどんだ雰囲気なんだろう...。
「にゃー」
誰が聴いても猫とわかるような声を出したのは、茶色を薄めたような色の猫だった。
飼い猫だろうか。でも、首輪もないし...。どちらにしろ、うちのアパートは動物禁止だし...。
そういえば、動物禁止でユウとも揉めたっけ...。いかんいかん。また泣いてしまうところだった。事あるごとにユウを思い出してしまう。
気がつけば、家についていた。きしんだ階段を登りながら、部屋の前で鍵を出そうと下をむいたら...。驚いた。さっきの猫がいる。どうやって階段登ったんだろ。
「仕方ない。取り敢えず一晩泊めようかな。」
猫はまるで私の声が聞こえているように、頭をこすりつけてきた。