07.あなたたちを護る剣が、ほしい。
「私も武器ほしい」
ここ治安維持組織隻眼テディベアに来てはや一年が過ぎころ、私は前々から思っていたことを口にした。
もちろんその場にいたシヅキもアルーさんもそしてボスまで驚いた顔をした。
「お前、何言ってんだ」
シヅキがはあ、とため息をついた。
だってかっこいいんだもん。お仕事するシヅキが。
シヅキのお仕事は悪い人を刀で斬るということ。
私は任務に着いて行って何度もその場面を見たんだもん。
刀を振るシヅキの姿がかっこよすぎて、私もああなりたいと思った。
「だってシヅキかっこいいんだもん」
「はあ?」
「お仕事するシヅキかっこいいんだもん」
「だって、紫月くん。こんな可愛い女の子の心奪うなんて隅に置けないわね」
アルーさんがシヅキの肩をぽん、と叩いて言った。
「だから武器ちょうだい」
「武器ちょうだい……ってお前なあ。危ないんだぞ?
お仕事っつったって失敗したら死んじゃうんだぞ? チーンなんだぞ?
天国にこんにちはーしちゃって、
隻眼テディベアの誰とも会えなくなっちゃうんだぞ?」
シヅキが私に話すときの独特のやけに子供っぽい言葉で必死で武器を持つことを辞めさせようとした。
いつもならシヅキがそこまで言うなら辞めよう、と思うけれどこれは譲れない。
私も武器もってシヅキと一緒に戦いたいんだもん。
「でも欲しい」
「とおー……」
透の意志の強い瞳を見て紫月はがくりと両膝に手をついて項垂れた。
透には頑固なところがあるから、
こうなってはもう彼女の決意は揺らがないといことを世話係である紫月は誰よりもよく知っている。
「透。本当に武器をもって仕事をするということは危険なことなんだぞ。
ちゃんと分かっているのか?」
ボスが真剣な目で私を見た。
いつものように優しく笑ってなんかいない。
それぐらい危ないことなんだ。
それを感じ取って少しだけ不安になった。
それでも。それでも、やっぱり私はシヅキと一緒に戦いたい。
「だいじょうぶ、ボス」
ボスの厳しい目から決して目線を反らさずにできるだけ胸を張った。
ボスはゆっくりと頷いてそして言った。
「よし、わかった。透にはあれをやろう」
ボスは高そうな大きな椅子から腰を上げて、部屋の奥のドアの向こうへと姿を消した。
あっちの部屋は確か大きくてふかふかのベッドがある寝室だったはず。
透も何度かお泊り会と称してあの部屋で眠ったことがある。
数分してボスが戻ってきたとき、その手に抱えているものを見て私は胸が躍ったのに対し、
斜め前にいる紫月とルーさんは息を呑んだ。
I want a sword protecting you.
あなたたちを護る剣が、ほしい。