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第十九話:百三十人



 2167年4月30日9時前 ウラジオストク国際空港


 昨日の午後、予定通り到着した大型輸送機に、調査隊の車両は搭載されていた。

 出発を待つ機体の数はそれなりの数になっている。

 調査隊を輸送するための大型輸送機が4機。それをエスコートする戦闘機が4機と、対地制圧用の地上攻撃機ガンシップが2機。

 さらに後発で輸送隊の支援を行うための空中給油機が3機に、護衛機が4機。

 すでに上空には、周辺空域の監視と飛行をコントロールするための空中管制機《AWACS》が待機していた。

 数だけ見ても、作戦の本気度がうかがえる。


 輸送機に積み込まれている60式に取り付けられた大きな袋のようなものを見ながら、磯谷はヘンドリックスに尋ねた。


「空中から落とすのか?」


「いや、計画では着陸して降ろす予定だ。これは保険の保険だ」


「着陸予定地の確保は出来ていないということか」


「そうだな。確保は出来ていない。事前情報では問題なさそうだが、現地に行ってみないことにはわからん。

 それでも、強行しなければならない理由があるってことだ。ガンシップが同行するのも保険だよ」


 ヘンドリックスの言葉に磯谷は少し考える。

 そして小さく呟いた。


「できれば空中投下はされたくないな」


 ヘンドリックスが笑いながら言う。


「されたい奴はいないさ。さあ、出発だ」


 そう言い残してM495-A2の搭載されている輸送機に向かった。

 磯谷も輸送機に入り、輸送機のハッチが閉じられた。

 そのまま60式に乗り込んで指揮席に座る。

 高山と赤石は明け方まで作業をしていたらしく、ぐっすりと眠っていた。


 輸送機が次々と離陸を始める。

 数分ですべての機体が離陸すると、隊列を組んで西へと向かい始めた。

 2時間ちょっとのフライト。

 磯谷は情報リンクでもたらされる周囲の情報を眺めていた。

 ロシア領内深くに移動するのだ。

 ロシアという国はもうないというが、ロシア軍が死滅したとは限らない。

 リスクはかなり高いはず。

 磯谷はそう考えていた。





 同日 11時23分 ロシア・ザバイカリエ地方 チタ近郊上空


「15分ほどで着陸予定だ。長居はしないから、降車はスムーズに頼む」


 機長からの連絡が入った。

 護衛機のうち2機が低空で空港跡地に接近し、安全確認を行っている。


「こちらパイソン1、地上に何かいるようだ。確認できるまで上空で待機」


「こちらスカイアイ。聞いての通りだ。高高度で旋回して待機」


 そんな通信が入ってくる。

 航空機が一番狙われやすいのは、着陸前と離陸時。速度も遅く、携帯型の対空ミサイルでも狙いやすい。

 部隊は慎重に行動しているようだった。


「こちらヴァイパー1、パイソン1、交代の時間だ。落ちる前に食事を済ませてくれ」


「こちらパイソン1、了解だ。エスコートを頼む」


 後続のエアタンカーの護衛機が、輸送隊の護衛機と入れ替わるようだ。

 戦闘機は輸送機に比べて航続距離が短い。

 先に給油の必要がある。そのために後続のエアタンカーにも護衛機が同伴していた。

 2度ほど上空の旋回を繰り返した後、パイソン隊とヴァイパー隊が入れ替わる。

 すぐにヴァイパーからの通信が入った。


「タリー2、いや4。緊急回避!」


 戦闘機からの悲鳴にも似た叫びが聞こえてくる。

 滑走路の両端に2台ずつ、計4台の地上車両がいるらしい。その一台が、対空ミサイルを放ったのだ。

 帯同しているガンシップが、低空での旋回運動を始めたようだ。


「クロウ1から4。着陸は延期」


 空中管制機からの通信が入る。

 敵の数は大した数ではない……そう思っていたが、別動隊がいるようだ。


「新たにタリームーバー4。警告! SAM!」


 磯谷は考えてから、動いた。


「高山! 輸送機にある乗員用のパラシュートを6つ確保しろ、急げ!」


「飛び降りるんですか?」


「お前がな! 55式は人間用のパラシュートで十分降下できる。援護に入る」


「了解! あ、私は飛び降りませんからね」


 磯谷は6機の55式を60式から降ろすと、輸送機の機長に空港上空を直線で飛ぶように指示を出す。

 機長はそれを渋った。SAMで攻撃される可能性があるからだ。

 磯谷はヘンドリックスからAWACSに指示を出させて、輸送機の高度を2万フィートに設定し、空港上空に向かう直線飛行を指示した。

 空中滑空で空港付近に接近し、輸送機自体は空港の前で旋回する。

 磯谷は続けて戦術AIに55式の降下プロファイルを作成させる。

 空中での被弾を極力避ける形での降下を準備させた。


「二佐、取り付けました」


「パラシュートを確認してくれ。T116系のパラシュートだな?」


「はい。T116-Dです」


 高山の声を聞いて、降下の最終手順を確認する。

 磯谷はそれでOKとした。


「降下地点にもうすぐ入る。テールゲートを開けていいのか?」


 機長からの声に磯谷が少し慌てた。


「高山! 60式に戻れ!」


 慌てて高山が60式の助手席に上がってくる。

 上がり終える前に、磯谷は機長に返答した。


「やってくれ」


 磯谷がそう言うと、貨物室のランプが赤に変わり、ゆっくりとゲートが開き始める。

 水平で停止すると、55式は次々と走り出した。


「機長、ゲートを閉じてくれ」


 そう言って戦術AIの操作状況を見守る。

 機体が大きく傾いて旋回を始めた。

 滑空中の55式が高度を下げ、空港に接近する。

 高度200mで次々にパラシュートを開く。

 磯谷は同時に55式のメインカメラに切り替えて、直接操作を始めた。

 パラシュートで揺れる状態からの狙撃を試みる。

 地上からの攻撃は機銃のみ。攻撃機が敵の攻撃をひきつけてくれている。

 視界に銃撃してくる車両を捉えるが、トリガーを引くタイミングが取れない。

 磯谷は可能な限り揺れを一方向に抑えるように操作すると、戦術AIに射撃タイミングを任せた。

 次にスコープに車両が入りそうになるタイミングで、55式は二発の弾丸を放つ。

 一発が車両のボンネット付近、もう一発は荷台で機銃を掃射していた兵士に命中した。


「くそっ」


 短く毒づいて、戦術AIの操作に切り替える。

 総合情報の画面で各機のステータスが着地に変わると、再び55式の視界に戻した。

 パラシュートを切り離し、6機の55式は後続で現れた4台の対処に向かう。

 55式は降下途中で被弾していたが、損傷は無いようだ。

 6機の55式はジグザグに走りながら車両に接近していく。

 800m付近から射撃を開始した。

 旧式の機関砲の類、この距離ならまず当たらないし、当たっても致命傷にはなりにくい。

 だが、思いのほか、敵の射撃は正確だった。


「射撃補助機能か何かあるな」


 1機の55式をダイレクトコントロールに切り替え、その場に伏せさせる。残りは戦術AIの指示でランダムに位置を入れ替えながら車両に接近。

 磯谷は再び狙撃を行う。


「今度は外さない」


 55式が伏せた状態から狙いを定め、引き金を引く。

 弾丸は正確に機銃の銃身を破壊した。

 その場に残っていた2機の対空ミサイル装備車両は、前進を続けていた55式の20㎜コイルガンを複数食らい、沈黙した。

 低空旋回で空港の両端の車両と戦闘状態にあったガンシップも、戦闘を終えたようだ。

 被弾した形跡は見えるが、問題なく飛行を続けているようだ。

 磯谷は55式を少し広めに展開して、空港脇のかつてのターミナルに55式を向かわせる。

 かろうじて大きな建物であっただろう骨格を残した建物は、静かだった。


「現在、地上を確認中。支援機は待機してくれ」


「スカイアイ、了解」


 建物脇に進むと、設置された高射砲らしきものが目に入る。

 先ほどまで稼働していたようだが、人影は見当たらなかった。

 センサーにかなりノイズが混じっている。


「スカイアイ。地上でのセンサーに異常が確認できる。地表に敵の遮蔽・妨害系の設備は確認できないか?」


「こちらスカイアイ。パペットマスター、それがこのあたりの標準だ」


「了解」


 55式で探索を続けながらの会話を終えると、再び周囲の状況に注視する。


「兵力は他に見当たらない。他の地点からの攻撃も無いようだな」


「近隣に建物らしい建物はないからな。降りても大丈夫だろう」


 ヘンドリックスが通信に割り込む形でそう告げると、スカイアイは輸送機の着陸を指示したようだ。

 50km程度なら55式の操作圏内のはずだが、現時点、約10kmでも通信状況が良くなかった。

 磯谷は一度探索を中止し、滑走路付近まで55式を下げる。

 そこから周囲の警戒に当たった。





 同日 11時45分 旧チタ空港


 輸送機の着陸が始まっており、磯谷たちを乗せた輸送機は最初に着陸した。

 滑走路はかなり細かい砂に覆われており、着陸距離が想定よりもかなり伸びたが、問題なく着陸できた。

 後続機はもう少し楽に降りられるだろう。最初の着陸でかなり砂が吹き飛ばされたからだ。

 もっとも、視界が悪くなり、2機目が下りるのに少し時間が必要となったが。

 今は3機目が着陸したところだ。

 磯谷はすぐに60式を下ろし、空港ターミナル跡付近へと移動させる。


「継続して周囲の探索を行う」


 ヘンドリックスはその必要はないと判断していたが、磯谷の判断に口をはさむ必要もないと思い、それを黙認した。

 55式が再びターミナルの残骸へと足を踏み入れる。

 ターミナルの骨格は残ったが、それ以外は吹き飛ばされたように、残骸や瓦礫は少ない。

 ある種異様な光景だ。

 この辺にあった街の痕跡すらない。

 小規模の建造物は破壊され、おそらくは砂に埋まっているものと推測された。


「高山、もう少し60式をターミナルに寄せてくれ」


「二佐、無事に降りれてるわけですし、もういいのではないですか?」


「いや、砲手がいた形跡があるが、それを確認できていない」


 磯谷には疑問があった。

 ここにいたのはロシア軍の生き残りだろう。この状況を見れば数が少ないのは理解できる。

 だが、彼らはこの状況で生き残っていた。

 どうやって?


 60式や55式のセンサーをフル稼働させて近辺を調べる。

 だが、センサーの感度が想像以上に低い。まるで何かに邪魔されているように。

 磯谷はふと思いつき、通信を行う。


「AWACS、この辺の戦略データを開示してくれ。旧ロシアのデータなら問題ないだろう」


「パペットマスター、必要な情報は今送る。少し待ってくれ」


 そう返答があった。

 磯谷はそのまま待つ。


「二佐、データ来ました。閲覧可能です」


 高山の声に磯谷はその情報を確認する。

 すると、空港の南東側2キロの地点に、サイロ……核ミサイルの発射設備があると想定されている。

 磯谷は55式をターミナル南東方向に移動させながら、周囲の探索を行う。

 すると、そこに地下への入り口があることを確認した。

 瓦礫をかぶせて隠してあるが、それほど重いものではない。

 むしろこの状況で隠すための瓦礫が目立っている。


「隠すというよりも、砂避けか……」


 磯谷は55式を操作し、その瓦礫をどけると、そこに人が一人二人並んで通れる細い通路を発見した。


「こちら磯谷、ヘンドリックス少佐。地下通路を発見した。これから中の探索を行う」


「イソガイ、了解した。まだ4機目が降りれてない。長居はしない予定だ。手早く片付けてくれ」


「了解。高山、60式を55式に出来るだけ近い位置に移動してくれ」


「了解」


 60式は再び移動し、200mほど移動した。

 その間に磯谷は凧を1機飛ばし、ターミナルの中へと侵入させる。

 すぐに55式の待機する地下通路に到着すると、着陸した。

 入れ替わるように4機の55式が地下へと入っていく。

 一列縦隊で進む。待ち伏せを受ければ、避けることは不可能に近い狭さだ。

 続けて2機目の凧を発進させる。

 これは上空からの監視目的。進行中の55式のほぼ真上を、55式の移動速度に合わせて前進させる。

 凧からの空中映像は一面の砂、所々に瓦礫があるが、一向に変化のない世界。

 かつてここに町があったことを想像すらできない。

 10分ほど移動して、55式のセンサーが前方に大きな空間が存在していることを示した。


「イソガイ、そっちはどうだ? 4機目の荷下ろしがもう少しで終わる。そろそろ戻って来い」


「ヘンドリックス。もう少しの間、輸送機を地上で待機させてくれ。脅威がないならガンシップの給油を先にして時間を作ってくれ」


「イソガイ、どういうことだ?」


「事情は後で説明する」


 磯谷はそこで通信を切った。

 磯谷は少し慎重に55式を進める。


「戦術AI、リアルタイムで通訳を頼む。ロシア語で」


 そう口にすると、先頭を歩く55式のスピーカーをオンにした。


「我々は米国調査団。私は日本国自衛隊の磯谷二佐だ。我々の目的は交戦ではない。だが、そちらに交戦の意思があるなら、躊躇なく反撃する」


 真っ暗な細い通路に磯谷の声でロシア語が響く。

 磯谷は先の状況を確認して、静音移動で55式を1機前進させる。

 赤外線などの不可視光線類の掃射はない。

 先行した1機が広い空間に出る直前、その中に赤外線の反応を見つけた。

 二人。

 一人は子供だ。

 磯谷はすべての55式の前進を停止させる。


「撃たないで!」


 子供の声が響いた。

 赤外線画像を解析する。

 子供一人と、大人。大人は銃を子供に突き付けているようだ。


「安心しなさい。我々は君には危害を加えない。状況を教えてくれ」


 しゃべらせている55式を一機前進させる。

 その音が聞こえたのだろう、子供は再び大きな声で叫んだ。


「それ以上は近づかないで!」


 磯谷は55式を停止させる。

 再び話しかける。


「我々は、ここで何が起きたのかを調べるためにやってきた。

 戦うことが目的じゃない。

 ここにいるのは君一人なのか? 他には?」


 そう言い終えると、先行させている55式の収音マイクの感度を上げる。


「大人もいる。けが人もいる。助けてくれ」


「大人もいる。けが人もいる。助けて!」


 55式は、脇にいる人物が子供に小声でそう言わせているのを確認できた。


「全部で何人いるんだ?」


 磯谷の声に男は小声でこう言った。


「分からない。けど大勢いると言え」


「大勢だな。少し待ってくれるか。救助可能かを確認する」


 磯谷はそう言ってマイクを切ると、ヘンドリックスに通信をつないだ。


「少佐、生存者を確認した。少なくとも民間人の子供が一人はいる。ウラジオストクまでの移送は可能か?」


「おい。そんなことが出来るわけがないだろ? 前に話したよな? 難民にロシア兵が混じって騒ぎを起こしたことを」


「ああ、聞いた。だが、目の前の子供を見捨てる選択は俺にはない。全員とは言わん。助けられる命は助けたい。協力してくれ」


 ヘンドリックスは磯谷の声に、これまでにないほどの真剣みを感じた。

 少し考えてから答える。


「お前にはスパーの借りがある。いいだろう、輸送機一機分、130名の収容を俺の責任で許可する。ただし、それ以上の場合は130名に絞れ」


「大型輸送機だ、詰め込めば一機当たり1000人近くの人間を乗せられるだろ? 130名だけなのか?」


「イソガイ。これは俺の最大限の譲歩だ。避難民の収容は任務にはない。これ以上言わせるな。30分以内に滑走路に連れてこい」


 ヘンドリックスの言葉に苦悩が滲むのを磯谷は感じていた。

 見捨てたいわけじゃない。だが、拾って帰っても未来を約束できるわけでもない。

 何より、彼には果たさねばならない任務があり、今その任務は進行中なのだ。


「わかった。貴殿の厚意に感謝する」


 磯谷はそう告げて通信を切った。

 再びマイクを入れて、55式から話しかける。


「これから130人を収容して、ウラジオストクに移送する。優先順位は10歳以下の子供、およびその保護者。次が救護の必要な負傷者。成人。最後が50歳以上の者。

 もし130人以上いるなら、その優先順位で130人に絞れ。武器の携行は認められない。輸送機が飛び立つまでに時間がない。急いで連れてくるんだ」


「うん、わかった」


 子供はそう言い残して奥へと消えていく。

 磯谷は入り口付近まで先行させていた55式を広い空間に移動させた。

 地下の車両倉庫か何かのようだ。中はかなり暗いが、非常照明はかろうじて生きている。

 数台の車両がある。外に出るためのゲートもあるようだが、閉じられている。

 上空の凧からの映像を見る限り、砂に埋まってここからは出られないようだ。

 55式を車の陰に配置し、停止させた。

 程なく、奥から足跡が聞こえてくる。

 誰一人しゃべることなく、足音だけが近づいてきた。


「連れてきたよ。これで全員だ」


 赤外線センサーで確認できるのは、子供2名と、おそらく成人男性40名ほど。

 怪我人と思われるものはいなかった。

 皆普通に歩き、姿勢もいい。

 何よりも、その40人ほどは皆小銃を持っている。

 磯谷は再び声をかけた。


「予想よりも少ないな。けが人の移動に人手が必要なら、そっちに行く」


 少し間をおいてから返答がある。


「うん、手助けが欲しい。手伝って」


 二人羽織は今回も確認できる。

 磯谷は3機の55式を一斉に突撃させる。

 予想していなかった動きに一瞬指示が遅れ、その後に放たれる「撃て!」の言葉。

 銃弾が何発も55式に当たるが、55式は動きを止めない。

 同時に隠れていた55式も突進させる。

 大人たちの側面から急接近し、端の一人から簡単に銃を取り上げると、その男を掴んで、並ぶ男たちに投げつける。

 横一列の隊列は崩れ、数人がその場に転がった。同時に駆け寄った3体も銃を構える。


「ロ、ロボット……」


「小口径の自動小銃では破壊することはできない。武器を捨てろ。最終通告だ」


 一人、また一人と銃を捨てる。

 銃弾を命中させた手ごたえを感じた者たちは比較的素直に従ったようだ。

 そして最後の一人が手にした銃を捨てる。


「我々の目的は殺戮ではない。可能な人数を救助する。こちらに集まれ」


 3機の55式が男たちを移動させ、壁際に密集させる。

 55式は銃を構えたままの状態で、彼らを監視した。

 もう1機をその場に固まる子供に向かわせ、子供の前で膝をついて話しかける。


「大丈夫。危害は加えない。他の人たちもいるんだよね? 案内してもらえないか?」


 磯谷が言葉をかける。

 10歳前後の子供二人は、一瞬顔を見合わせて頷くと、一斉に奥に向かって走り出した。


「この状況で怖くない、は通じないか」


 磯谷は小さくぼやき、子供たちの後を追った。

 通路は短く、目の前には行き止まりの扉。

 金属製のようだ。

 この位置から再び説得を試みる。


「出発まであまり時間がない。信じるのも信じないのもあなた達の自由だ。

 条件は先に言った通り。130名を救助できる。

 優先順位に関してはあなたたちが決めればいい。すぐに決めて空港に来るんだ。

 我々は先に外に出て、君たちを待つ。

 急いで考えろ。どうするべきかを」


 そう言い終えると、磯谷は55式を撤退させる。

 倉庫に戻ると、4機の55式で足元に散らばる小銃を踏みつけて壊し、その場から撤退させた。

 まっすぐに通路を戻り、空港に到達する。そして4機をすぐに60式に搭載した。

 入り口付近の凧を空中に上げて待機させ、外に出ていた凧も帰投させる。


「高山、お前は子供は得意か?」


 磯谷の言葉に高山は首をかしげる。


「意味が分かりませんが、どちらかと言えば苦手ですね」


「そうか」


「赤石さん、55式が被弾しています。大きな損傷はありませんが、1機はメインカメラをやられてしまいました。メンテをお願いします」


「何をしとったかは知らんが、予備部品に限りはある。何度もは修理できんぞ」


 そう答えると赤石はコンソールを操作して、55式の損傷状況を確認し始めた。

 磯谷は口には出さなかった。

 それで子供が助かるなら、そのほうがいい。

 そのまま黙り、地下道入り口の監視を続けた。



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