第三章 其の一 華麗なるワイルドフラワー登場
初めての冒険を見事成功に収めた自由の冒険団。もちろんそれからの冒険も幾度なく成功…というわけではなく。
「お、自由の冒険団が戻ってきたぞ」
「…なんか様子が変じゃないか?」
迷宮から戻ってきたサクヤとゾイドはぐったりと疲れ切った表情をしていた。そしてイチとアンジーはゾイドの肩に抱えられていた。
イチは完全に脱力しきっており、アンジーは何やら楽し気に笑い反対側にいるイチを叩いていた。
「あひゃひゃ、イチの頭に花が咲いてら。あひゃひゃ」
「あ、あんひぃ…やへお…」
どうやらイチは麻痺、アンジーは混乱状態に陥っているらしい。
回復の手段を持ち合わせていない一同は塔内の診療所へと向かい治療を行ってもらう。
「すいませーん」
診療所の奥に向かいサクヤが呼びかける。しばらくすると、背筋の伸びた威厳溢れる老婆が余裕のある態度で出てきた。
「何の用だい?」
「この二人の異常状態を治して欲しいんですけど」
「あんたら、攻略者のくせに回復薬くらい持ってないのかい?」
女性に驚き半分、呆れ半分の調子で言われる。
「飲ませたけど、効かなかったんだよ」
「アンちゃんの自作だけど、やっぱりそこら辺の草で調合したものじゃ効き目ないね」
「だったらせめて回復役くらい入れておくべきだね」
「その回復役がそいつなんだよ」
ゾイドはベッドに寝かせたアンジーを指差す。
「お?サクヤが老けてら。だがな、そんなことで私達の友情は壊れないぞ。安心しろ」
「…大したタマだね。ところで金は持ってるんだろうね」
「ほれ。この通り」
「ふむ、確かに。じゃあ早速治療を始めるよ」
女性はアンジーを座らせ、喧嘩の前準備でもするように指の関節を鳴らす。そして、左手でアンジーの肩を持ち、右の腕は弓を構えるように引く。
『目覚めの一発』
ビンタ…というより掌底に近い一発がアンジーの頬に炸裂する。
「あ?は?」
「ほれ、もう一丁!」
無事だった反対側の頬を裏拳が襲う。アンジーの両頬は見事に腫れあがる。
「ってえなっ!何すんだババアッ!」
「はっ、正気に戻ったかい。ほれサービスだ。ついでにそっちの坊やもやってやるよ」
女性はイチに向かって歩きながら、例の如く関節を鳴らす。
「ひや、おへはひい。いうんへはおす」
「なんだって?」
「いや、おれはいい。じぶんでなおすって」
「何を寝ぼけたこと言ってんだい。さあ、さっさと終わらせるよ」
イチはうつ伏せにされ麻痺も相まって板の上の魚。あとはもうされるがまま。
「ここだね」
『達人の一刺』
老婆の指がイチの背中に深く突き刺さる。
「いってえええっ!」
「そんだけ吠えれるなら十分だね。痺れが残ってないか確認しな」
「おお、治ってる…」
「これに懲りたら次はちゃんと気を付けるんだよ。困ったらまた来な」
「二度と来るか!」
アンジーは肩を怒らせ不機嫌に出ていく。それに続いてイチは微妙な面持ちで出ていく。サクヤは二人をなだめながら、最後にゾイドが軽く礼を言って診療所を後にする。
酒場 サイクロプスの樽
「まったく、散々な目にあったぜ」
一杯目の酒を豪快に飲み干し、アンジーはため息交じりに吐き捨てる。
「それはこっちのセリフだ」
「そうだよアンちゃん。大変だったのは私達なんだから」
「確かに、ありゃあ大変そうだったな」
他人事のようにケラケラ笑うイチだが、ゾイドに首根っこを掴まれ睨みつけられる。
「お前のせいでもあるんだからなイチ」
イチは悪びれる様子を微塵も見せず軽く舌を出し「テヘッ」と茶目っ気を見せる。これ以上怒る気力を無くしたゾイドはイチの鼻を摘まみ上げながら酒で喉を潤す。
「途中で記憶が飛んでるんだが、結局あの後どうしたんだ?」
「えっとね…」
アンジーの問いかけにサクヤは今日の出来事を一から振り返る。
それは迷宮内でのこと。
今回入った迷宮は密林の如く鬱蒼と草木生い茂り、前に進むのも一苦労する魔物の巣窟だった。以前に遭遇した頭突きウサギのように正々堂々対峙する魔物はほとんどおらず、擬態による奇襲、息を潜めての不意打ち上等の生き残るが勝ちの世界。
そんな中を四人はサクヤを先頭に意気揚々進む。
「進め~進め~いざ進め~」
「にしてもあっちいな」
「まるで本物の密林だな。お前ら、敵がいつ来るかわからねえんだから気をつけろよ」
「わかってるよ。そんな間抜けじゃねえっての」
そう言った瞬間、アンジーは太くて柔らかいゴムみたいな質感の物を踏んづける。
「ん?」
するとすぐ側の巨大な花が魔物へと変貌する。花弁だった部分は不規則に揺れ、中心部分には大きな口が出現している。
「おっと」
「言った側から…」
魔物はもごもごと口を膨らますと粉末状の何かを吹きだす。すぐ近くにいたアンジーはそれをまともに被る。
「ぐっ…きたねえな!くらえ!」
アンジーは手のひらに火球を作り出し魔物へと投げつける。魔物は一瞬にして火に包まれその身は灰と炭の塊へと成り下がる。
「アンジー、平気か?」
「あ?ああもちろんだ」
「まったくだからあれほど気をつけろと…」
「全員焼き尽くしてくれるぜ」
「は?」
アンジーはまた火球を作りゾイドに向けて投げつける。
「うおっ」
ゾイドは身を反り何とか火球を躱す。それに目もくれずアンジーは火球をいくつも作り、それを片っ端から辺りに放っている。
「ハハハハハハ!オラオラかかってこいや!」
「あらら、混乱しちゃってる」
「こんのバカが…!」
辺りはあっという間に火の海となり蒸し暑い迷宮内はさらに灼熱の地獄と化す。そのうち火球がイチの服を掠め、イチの背中が燃えあがる。
「アチチチチッ」
暑さに耐えられないイチは辺りを転げまわり、サクヤはその後を追い鎮火を手伝う。
「おいイチ暴れるな!敵が寄って来るぞ!」
「アチチッ、無茶を言うな!」
「勝負勝負!」
混乱したアンジーはゾイドに殴りかかる。盾でメイスを受け止めながらゾイドは舌打ちをする。
「お前はさっさと正気に戻れ!」
「アンちゃんごめん」
イチの背中の消火を終えたサクヤは目にもとまらぬ速さでアンジーを蹴り飛ばす。
「ぐぇ」
勢いよく木に衝突したアンジーはそのまま気を失う。あまりの手際の良さにゾイドはあっけにとられる。
「…容赦ねえなぁ」
「こういうのは勢いだよ」
「そんなもんか。それでこの火の海どうにかしないと」
「少しくらい消しておかないとね。アンちゃんは無理だからイチのスキルで何とか」
「まったく、派手にやってくれたな。しゃあねえ。おい、イチさっさと…」
見ればイチはすでに麻痺状態で猿のような魔物に連れて行かれようとしていた。猿の魔物はゾイドとサクヤに見つかったのがわかるとイチを担ぎ素早く逃げだした。
「…行っちゃったね」
「行っちゃった、じゃねえ!追うぞ!」
「あ、アンちゃん持って行かないと」
「ああくそ、どいつもこいつも」
その後アンジーを担ぎ、イチを助けるため魔物を追ったが、言わずもがな一筋縄ではいかず、魔物の巣に潜入したりその他、すったもんだの末何とかイチを救出し、栄光の塔へと帰還した。
事の顛末を話し終えるとゾイドは深いため息をつく。
「思い出しただけで疲れる」
「お疲れさん」
左右に座るイチとアンジーはやつれたゾイドをいたわる。その様子を見てサクヤは楽し気に笑う。
「やっぱりみんなといると楽しいね」
「よくもまああれを楽しめるもんだ。行き当たりばったりでグダグダな冒険を」
「だからだよ。竜の爪にいた頃は全部計画通りの完璧な攻略だったから。そういうのは効率的だけど楽しむ余地が無いんだよ」
「無駄が無いってのもつまらないものか。難儀だな。ま、サクヤが楽しいならそれでいいが」
「何はともあれ、俺らはいつもの調子が一番ってことだな」
「いいこと言うじゃねえかイチ」
イチとアンジーは笑顔で乾杯を交わすが、ゾイドの大きな手に頭を鷲掴みにされる。
「お前らは少し反省しろ」
「あはは…ゾイドこわーい」
「こわーい」
「まったく。…そういやイチ、明日例の武器を受け取る予定じゃなかったか?」
「あの自由自在に形を変えれるやつか。『秘宝』判定されたとは聞いてたがまだ審議にかけられていたのかよ」
「迷宮で見つかる武器は失われた技術の場合もあるし、下手すると災害級の威力を放てるものもあるからね。会社側が慎重になるのも無理ないよ。もっとも今回のは形を自在に変えれるだけで、それを最大限に活かせるのはイチぐらいだってことで渡されることになったみたいだけど」
「だけって、十分すごいんだがな」
「秘宝には名前が付けられるがあれにはなんて名前が付いたんだ?」
「ん?ああ、そういえばなんか言ってたな。確か…『無限』だ」
「随分大仰な名前だな」
「それに恥じない活躍しろよ」
「じゃあイチの秘宝獲得を祝して乾杯しなおそうか」
四人はその後飲み続けまたいつものように騒がしく夜が深まっていく。
翌日、無限を受け取るべく栄光の塔へ行くと、いつもの数倍の攻略者が集まっていた。
「すげえ数…何かあんのか?」
「そういえば、今日はランキングの発表がされるはずだよ」
「もうそんな時期か」
『ランキング』
シーズンごとに発表される。視聴者が行う攻略者個人の人気投票と迷宮での活躍度をパーティーごとに表した二つの順位が発表される一大イベントである。特に後者はパーティーの実力を表し、収入や名誉に直結するので通常攻略者は一つでも順位を上げようとする。
「お、始まるみたいだぜ」
その場にいる全員の視線が大画面のビジョンに集まる。
ビジョンに映し出されたのはウサ耳をつけた少女と引き締まった身体の中性的な男だった。
『迷宮攻略ファンの皆さん、ハロー。ラビちゃんです』
『ハァイ、ビット姐さんよ』
『今日は皆さんお待ちかね、ランキング発表時間だよ』
『焦らしは無しで早速、いきましょうか。まずはみんなの人気投票の結果からよ』
ビジョンに一気にランキングの結果が映る。ランキングは三十位より上の者しか発表されず、三位より上は隠されたままだった。
『あなたの気になる子は何位だったかしら?思いが届いた子もそうでない子も熱い応援をこれからもよろしくね』
『さあさあ三位から一位の発表!張り切っていくよ!』
『三位は竜の爪の特攻野郎『鬼殺し』シュラ・アカバネ。前回から二つ順位を上げたわね』
『派手な剣技はビジョン越しでも血を沸かし肉を躍らせる。そのビッグマウスに見合う実力と人気はまだまだ底が見えない!』
『彼にはまだまだ注目する必要がありそうね。お次は二位の発表よ』
─その調子で画面上の二人は二位一位と発表していく。
『さて、一位まで紹介したところで、今回のピックアップ攻略者の紹介だよ。それはもちろん、今一番話題の攻略者』
『自由の冒険団所属、『元勇者』サクヤ・カグラザカ。人気投票七位と竜の爪を抜けて、勇者を辞めた今でも人気は健在ね。『職業』を変えたことで恩恵は低下したけれど、磨いたスキルと戦闘経験で実力も十分上位に食い込めるわ』
『一癖も二癖もある幼馴染三人と組んだ新パーティーの活躍はご存知の通りかなりムラがありますね、ビット姐さん』
『そうね。そこにも注目しながらパーティーランキングを見ていきましょうか』
そうして次はパーティーごとのランキングが発表された。こんどは一位から上位十位まで一気に発表された。
『一位は当然のように竜の爪。勇者が抜けても最強のパーティーの称号は譲らないとはさすがだわ』
『二位の帝国騎士団『大空を翔る大鷲』は猛追するも竜の爪が一枚上手。果たして竜の爪が一位を譲る日が来るのか?』
『さて、噂の自由の冒険団だけど…生憎とランキングだとかなり下位ね』
『これは迷宮に慣れていないからでしょうか?』
『それもあるでしょうけど、一番の理由は彼らが攻略を目的としてないからよ』
『攻略が目的じゃないのなら何を目的に?』
『ふふっそれを言うのは野暮ってものよ。レディたるものそれくらい見極めないとね』
『おおーさすがビット姐さん、勉強になります』
『あら、名残惜しいけどそろそろ時間ね』
『それじゃあ皆さん、攻略者達から目を離さずに!』
『さようなら』
そこでビジョンは消える。攻略者達はぞろぞろと散っていきいつもの日常へと戻っていく。
「人気投票七位。元勇者は伊達じゃないな」
「そういや、投票上位者にはボーナスがあるんだろ?ちょいとおこぼれくれませんかね?」
アンジーはサクヤを肘で小突きながら言う。サクヤは少し苦い顔をする。
「えっとね、実はほとんど私には入らないんだよね」
「なんだよピンハネか?せこいことするなぁ」
「そうじゃなくて。実は…竜の爪を抜ける際にスポンサーとの違約金が発生しちゃって」
「そういえば前に飲んだ時そんなこと言ってたな。結局どのくらいあるんだ?」
「───ほど」
「ん?いくらだって?」
サクヤは三人に耳打ちする。その額を聞いた三人の顔は血の気が引き真っ青になる。
「お前それ、家が買えるとかそういうレベルじゃねえぞ」
「大丈夫なのか。色々と」
「そこは大丈夫、なはず。勇者の頃にそこそこ稼いでいたし、足りない分は社長が肩代わりしてくれて順調に活躍していればすぐに返せるって」
「順調に活躍……」
誰ともなく呟く。四人は互いに顔を見合わせる。自分達の現状は、元勇者一強の仲良しこよしのなんちゃってパーティーの域を出ない。果たして今のままでサクヤの借金を返済できるのか。
四人は円陣を組み、ゾイドが自分達の現状とこれからの目標を確認する。
「よし、お前らわかってるな。自由の冒険団は当分の間サクヤの借金返済を目標とする。一に金、二に金、三四も金で、五は一応冒険だ。オーケイ?」
「オーケイ!」
「只今より作戦名、ガンガン稼ごうぜを実行する!」
「イエッサー!」
そんな四人に近づく人影が一つ。
「嗚呼…!何という眩さだ!」
その人物は舞台役者さながら、大きく手を広げ香水由来のキザな匂いを辺りにまき散らしていた。
「冒険者サクヤ。皆の太陽、希望だった君。勇者という威光を捨ててもその輝きは衰えるどころか、異なる色を魅せるとは…素晴らしい!」
「はあ…」
サクヤを筆頭に四人は困惑の表情を浮かべるとともに厄介な奴に絡まれたと同じことを思う。
「この変なの、あいつだよな?」
「『通り名持ち』の剣士」
「名前は、確かロン…」
「そう!僕は『華麗なるワイルドフラワー』ロンソルト!人気投票も三十位!実力人気共に上位の攻略者だ。よく覚えてくれたまえ」
「ワイルドフラワーって意味は野草だぞ」
「こんな奴が三十位なのかよ」
「キャラも立ってるし結構人気みたいだよ。三十七歳のベテランだし」
「三十七か…親が泣くぞ……」
「そこらへんもノープロブレムさ」
ロンソルトは高らかに笑い、ひとしきり笑い終えると咳ばらいを一つし間を整える。
「先ほど小耳にしてしまったが、どうやら金銭的に困ってるようだね。そこで一つ提案なのだが、君達僕のパーティーに来るというのはどうだろう?」
「どうだろうって…却下に決まってるだろそんなもん」
「第一、なんで私らがお前の下につかなきゃならねえんだ」
イチとアンジーが血気盛んに即答する。
「ふむ?良い提案だと思うのだが…。さすがにそこの二人の職業ではトップに並ぶ活躍は少々難しいと感じてしまうが」
ロンソルトはイチとアンジーを指差しながらわざとらしく悲壮感を漂わせ頭を抱える。
「二人なら大丈夫ですよ。だって二人とも強いですから」
「ほお?」
サクヤの力強い断言にロンソルトは片眉を上げ、興味を示す。
「あんたの言う通り『職業』は重要だが、そんなものに振り回されるほど俺達はヤワじゃねえよ」
イチの言葉を聞いたロンソルトはわなわなと震える。
「す…す…」
何かを言いたげだが、どうやら上手く言葉が出ないらしい。
「言いたいことがあるならはっきり言いな」
「素晴らしい…!」
ロンソルトはその一言と共にイチへ抱きつく。
「はぁ?」
「無職という抗いようのない運命。つらいこともあっただろうに…真っ直ぐな瞳でそのような言葉を言えるとは…!素晴らしい友人と共に充実した日々を歩んできたんだね!僕は猛烈に感動している!」
「そりゃあ…どうも」
イチは困惑しながらもロンソルトの腕から抜け出そうともがくが腕はびくともしない。涙と鼻水に濡れた顔が真横にあり、首だけで何とか距離をとろうとする。
(振りほどけねえ。ふざけた奴だがすげえ力だな)
「うむ!やはり僕は君達が欲しい!どうだろう?僕のパーティーに来ないか?」
「だから嫌だって…ああもう顔が近い!」
「そこをなんとか!」
「リーダー、何してるんですか」
呆れたような声を出しながら魔法使いと思わしき女性を先頭に四人の男女がやってきた。
「おお!丁度いい所に。聞きたまえ。これから我が『麗しき箱庭』は『自由の冒険団』を仲間に加えるぞ!」
それを聞いた面々は不満をあらわにする。
「まさかまた一人で暴走しているんじゃないでしょうね?」
「暴走とはなんだね。僕はただ彼らに誠意を込めて精一杯お願いしているだけさ」
「この場合それを暴走と言うんじゃねえか。つかいい加減放せ!香水臭いんだよ!」
「はあ……まったく」
額を抑えながら魔法使いは三人の前に来て、頭を下げる。
「この度はどうもすいません。私『麗しき箱庭』サブリーダーのウィズと申します」
「ご丁寧にどうも」
「うちのリーダー、悪い人ではないんですが…少々感情表現が激しい人でして」
「何でもいいけどよ、どうやったら諦めてくれるんだ?」
「それがこうなったら歯止めが効かないというか…」
「厄介だな」
「ああ、そうだ。一つ勝負するのはどうでしょう?」
「勝負?」
ウィズの提案にサクヤ達は小首を傾げる。アンジーは殴り合いでもするのか?と血気盛んにファイティングポーズをとる。
「殴り合いがさすがに…」
ウィズはアンジーの言葉に顔をひきつらせる。
「勝負とは『攻略対決』です。同時に同じ迷宮へ入り、攻略の速さを競うんですよ。時々やっているでしょう?」
「そういやそんなのあったね。竜の爪には誰も勝負を仕掛けないから私はやったことないけど」
「嫌味か」
「事実だもーん」
「平穏に問題が解決するなら俺は構わんが。アンジー、どうだ?」
「ぶっちぎりで勝つ」
「イチは?」
「やる!やるから早くこいつを引き剥がしてくれ!」
「ということでリーダー。ここで一つ勝負を行い、リーダーの偉大さを知ってもらってからパーティー参入を考えてもらうというのはいかがでしょう?」
「おお!さすが我がパーティーの参謀だ。君達!僕の輝きを存分に楽しんでくれたまえ!」
ロンソルトは高笑いとともに決めポーズをとる。その隙にイチは腕から抜け出し素早くゾイドの後ろに隠れる。
「こちらの無茶ばかりでどうもすみません。お詫びと言いますか、もしそちらが勝った暁には何か賞品を用意しますが…」
「もし…ね」
余裕のあるウィズの態度。
それは自分達が負けることを一切予想していないように映った。若干気に食わないものの四人は賞品について話し合う。
「どうするよ?金でも貰うか?」
「確かに金は欲しいが…ここで金を貰うのもな」
「うーん。私も特にこれと言って」
「じゃあそっちが負けたらそのうざったい髪をどうにかしてくれ」
「では負けたらリーダーを坊主にさせていただきます」
「誰もそこまで言ってないが」
「僕の新たな姿が賞品だって?嬉しいじゃないか!やはり君たちは素晴らしい!」
「だー!いちいち抱きつこうとするな!」
「すげえなコイツ。ポジティブの権化みたいな奴だ。攻略者ってのはこんなのばっかか?」
「さすがにここまでキャラが濃い人はそうそういない、かな?イチー負けてられないね!」
「お前も個性出してけ!」
「お前ら、他人事のように…!」
イチとロンソルトが攻防を繰り広げる側でサクヤとアンジーはゲラゲラと笑う。その傍ら、ゾイドはウィズに声をかける。
「お互い、苦労するな…」
「まったくです…」
こうして『自由の冒険団』対『麗しき箱庭』の攻略対決が決まった。




