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ダンジョン・ブレイク――スキルコピーするだけで最強の俺、ダンジョンで恋も奪う  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第40話 戦いの後――三人の絆

 草原には、静寂がゆっくりと広がっていった。

 倒れたゴブリンたちの体が点在し、草は緑と赤の混ざった匂いで満ちている。

 遠くで小鳥の声が聞こえ、風が葉を揺らす音が耳に届く。

 だが、それでもなお、戦場の余韻は肌にまとわりつくように残っていた。

 遼は深く息を吸い、吐き出す。

 まだ手のひらに残る感覚――

 あのゴブリンの戦い方が、体の中に染み込んでいるかのような感触を確かめる。

 戦闘直後で心拍は速く、全身に軽い震えが走った。

 それでも、そこには微かな自信のようなものも宿っていた。


「やっぱり、想像以上だな……って、俺も体力やべぇ。足が笑ってるっていうか……」

 悠馬は倒れたゴブリンを見下ろしながら、肩で息をついた。


「……はぁ……はぁ……遼くん、大丈夫? 無理してない?」

 優奈がそっと遼の肩越しに声をかける。

 

「……ああ。でも、アビリティジャックをまだ完全には使いこなせてない気がする」

 遼は手をこすり合わせ、視線を落としたまま頷く。

 

 悠馬は微笑み、刃先を拭きながら軽口を放つ。


「大丈夫だって。遼、あの動き……マジで見事だったぞ。全部コピーできるなんてな、すげえよ」


 遼はそれを聞き、少し照れくさい気持ちを抱きつつも、剣の握りを強くした。

 まだ手の中に残る、ゴブリンの戦い方の感覚――それを正確に自分のものにできたことは、思っていた以上の自信となった。


「……まだ完璧じゃないけど、少しずつわかってきた。俺、もっと上手くやれるようになる」


「うん……信じてる、遼くん」

 優奈が静かに頷く。

 その目は、単なる仲間への信頼以上の意味を帯びているように見えた。


 遼は深呼吸を一つし、草の匂いと森の空気を吸い込む。

 戦場で張り詰めていた神経が、少しずつ緩んでいく。

 だが、同時に胸の奥で芽生えた高揚感と、戦いへの渇望が小さく弾むのも感じていた。


「……俺、仲間を守るためなら、もっと強くならなきゃ」


 その言葉は、自分自身への誓いでもあり、無意識に仲間の存在を意識したものでもあった。


「……遼、顔色は悪いけど、冷静になったみたいだな」

 悠馬が呟く。


「……マジで、次もお前に任せるぜ。頼りにしてっから」


 遼は軽く笑い、頭を掻いた。

 少し無骨だが、どこか嬉しさが滲む。


「……任せられて光栄だけど……俺、まだ試されてる気分だな」


「でも無理はしないでね。遼くんが倒れたら、みんな困るんだから」

 優奈は小さく笑い、遼の肩に手を置く。


「……ああ、わかってる」

 遼は答え、軽く頷いた。

 心の奥で、彼女を守る決意がまた少し固まる。


 静寂の中、三人は互いを見渡した。

 倒れた敵の血の匂い、風に揺れる草、遠くで聞こえる鳥の鳴き声――それらすべてが、戦闘の痕跡を示していた。

 だが、同時に、今ここに生きている自分たちの存在も確かに示していた。

 遼は手を握りしめ、《アビリティジャック》の感覚を確かめる。

 戦闘中に得た複数の戦術コピーの情報が、頭の中で整理され、身体感覚として定着していた。

 複数の動きを同時に理解し、反応できた瞬間のことを思い返す。


「……これが、成長ってやつか」

 遼は小さく呟く。


 《アビリティジャック》発動中に精神ノイズによる頭の痛みや幻覚の兆候はあったが、短時間で制御できたことに、少なからぬ手応えを感じていた。

 優奈がそっと光を放ち、遼と悠馬の体力を回復した。

 悠馬も剣を地面に突き、少し笑みを見せる。


「遼くん……本当に頼もしかった」

 優奈が微笑む。


「まだまだだけど……俺、もっと成長する。仲間を守るために」

 遼の目には強い光が宿っていた。


 悠馬は冗談めかして言った。

「まぁ……次、俺は後ろで見てるだけでいいな」


「……頼りすぎじゃねぇか?」

 遼は苦笑する。

 だが、胸の奥は少し安心していた。


「でも、無理はしないでね」

 優奈がそっと微笑む。


「わかってる」

 遼は頷く。


 優奈は遼の肩を軽く叩く、温かさが、体だけでなく心にも広がる。

 遼は視線を優奈と悠馬と交わす


「……次の戦闘に備えよう。俺、もっとアビリティジャックを制御できるようになる」


「私も、回復の準備は万全にする」    

 優奈が言い、光を小さく波立たせる。


「よし……俺たち、やっぱり最強チームだな」

 悠馬が軽口をたたくが、三人の間には確かな信頼がある。

 

 遼の胸中に、仲間を守る覚悟が改めて刻まれた。

 戦闘で得た経験は、単なる力だけでなく、心理的な強さも生み出していた。


「草原を抜けたら、もっと強い敵が待ってるかもしれない」

 遼は呟き、心を引き締める。


「でも、俺たちなら、きっと……」


「ええ、きっと大丈夫」

優奈が手を握り、短く頷く。

 

「さあ、行くか」

悠馬も微笑み、肩を叩く。


 三人は立ち上がり、足を進める。

 戦闘で培った絆と成長が、静かな確信となって胸に灯っていた。

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