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ダンジョン・ブレイク――スキルコピーするだけで最強の俺、ダンジョンで恋も奪う  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第38話 死にゲー日和

『――下級ダンジョン。死亡率八割、帰還率二割。人が行く場所じゃない』


 庁の公式掲示板に赤文字が踊る。俺――藤堂遼はスマホ画面に視線を固定したまま、自然と肩に力が入る。

 コメント欄には「やめとけ」「友達死んだ」「棺桶確定」と、現実を突きつける言葉がずらりと並ぶ。

 目を通すたびに胃が重くなる。息も浅くなる。まるで数字や文字が、空気を圧迫しているかのようだ。


「……いやいや。死にゲーかよ」


 独り言は自然と漏れた。

 でも、俺には――切り札がある。


――《アビリティジャック》。


 能力をコピーし、戦局を覆す。……理屈上は最強の保険。

 だが、それだけで心の不安が消えるわけではない。今日は俺がパーティリーダー扱いだ。失敗は許されない。


「遼くん、見てる顔がめっちゃ暗いけど、大丈夫?」


 栗色の髪を一つに結んだ水瀬優奈が、穏やかな声で訊いてきた。

 その声に、自然と緊張が少しほどける。

 黒髪を耳にかける仕草が無意識に女の子らしさを強調している。俺は返事を一瞬忘れそうになる。


「あ、ああ。掲示板がさ……地獄みたいなこと書いてあって」

「また掲示板? あれ、半分以上は盛ってると思うよ。人って、不安や恐怖を書く方が楽だから」


 優奈は困ったように笑った。

 その笑顔だけで、ほんの少し胸の奥が温かくなる。

 俺は内心、ちょろいなと自覚しつつも、笑顔を返す。


「……そういうもんか」


 そこに、息を切らした足音が混ざる。


「わりぃ、電車一本逃した!」


 汗を浮かべながら駆け込んできたのは、神田悠馬。背が高く、筋肉質。剣術強化スキル持ちだ。

 大学での剣道経験もあるというが――正直、戦闘経験はまだ乏しい。戦闘力は未知数だ。


「……悠馬、掲示板見たか?」

「見た。あれマジかよ……死ぬとか全滅確定とか」


 悠馬の声は、普段より少し緊張している。

 俺は笑いながら肩をすくめる。


「大丈夫だって」


「遼くん、すぐに『大丈夫』って言う……」

 優奈は呆れたように微笑む。


 三人で庁舎を出ると、下級ダンジョンの入口が視界に入った。

 鉄の門に魔法陣が浮かび、淡い光を帯びて揺れる。息が止まるような、重い空気。


「庁スマホはお持ちですか?」


 スーツ姿の職員が淡々と手続きを進める。端末を見せると、頷きだけで済ませられた。

 このスマホは、ダンジョン内での解析、アイテム確認、収納など多機能。外では使えず、内部限定の特殊装置だ。


「準備が整い次第、ゲートへ。気をつけて」


 声を背に、俺たちは一歩を踏み出す。

 空気が変わる。薄暗く、石造りの回廊。

 足元は自動点灯するランタンの淡い光に照らされ、薄緑色が揺れる。

 ひんやりと冷たく、でもどこか静謐。……恐怖よりも先に、冒険心が胸を打つ。


「……ここがダンジョンか。思ったより……綺麗だな。」

 悠馬が小声で呟く。

 

 石壁を伝う湿った匂いと、遠くで響く水滴の音。静かだが、生き物の気配はどこかにある。


 俺は庁スマホを取り出す。

――収納、カメラ機能。使用可能表示。

 ここからは、完全にダンジョン内。外では使えない力が、手の中で頼もしさを帯びる。


「よし、二人とも。準備はいいか」


「「もちろん!」」

 笑顔が揃った。心の緊張と期待が交錯する瞬間。


 その時、背後から耳を裂く音がした。


「ギギギ……ギャァッ!」


 低く濁った咆哮。

 二体の小型ゴブリンが闇から飛び出してくる。

 目が光り、牙がランタンの光を反射する。鋭く、野性味に満ちた動きだ。


「初戦だ! 来るぞ!」


 悠馬が前に出る。

 俺と優奈は息を呑んだ。

 回廊の空気が揺れる。

 緊張で呼吸が速くなる。

 優奈の手元から光がほのかに滲み、静かな鼓動のように回廊に反響する。


――ここからが、本当の戦いの始まりだった。


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