表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・ブレイク――スキルコピーするだけで最強の俺、ダンジョンで恋も奪う  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/54

第26話 共鳴の前兆 ― 光に呼ばれて

探索庁の大講堂は、まるで企業の入社式のような緊張感に包まれていた。

 壁一面のスクリーンが白く光り、壇上にはスーツ姿の職員たちが整然と並んでいる。

 列を成す新人探索者たちは、ひとりずつ呼ばれては前に出て、端末にカードをかざしていく。


「探索者登録の際は、カードを端末に差し込み、スキル情報の初期読み込みを行います。誤作動防止のため、動かないように」


 職員の声が響くたび、会場の空気が少しずつ張り詰めていく。

 誰かが小さく息を呑み、別の誰かが緊張した笑い声を漏らす。


 遼は椅子の上で身を乗り出しながら、前方を見つめていた。

 光の強弱で、登録した者の“力の質”がわかるという噂があるらしい。

 隣では、亜里沙が興味津々の顔でスマホを握りしめていた。


「ねぇ、見た? さっきの人、光ピンクだったよ! かわいい!」

「かわいいって感想おかしいだろ……」

「だって光るんだよ? 女子的にはテンション上がるって!」


 ……緊張と興奮がないまぜになった会場。

 遼の心臓も、なんだか妙に早く打っていた。


(この静けさ……まるで、教室で誰かが告白を待つ時みたいだな)

 現実味があるようで、どこか夢の中の出来事のようでもある。




 壇上では、職員が淡々と新人の名前を呼んでいく。

 「次――白鳥亜里沙さん」

 その瞬間、遼の心臓がひときわ大きく跳ねた。


「じゃ、行ってくる!」

「おい、緊張とか……ないのか?」

「むしろワクワクしてる! 見ててね!」


 彼女は軽やかに壇上へ向かう。

 その途中で、ふと立ち止まり、なぜか後ろを振り返った。

 視線が一瞬だけ遼と重なる。

(……今、何か感じたか?)

 まるで何かに“呼ばれた”ような、奇妙な仕草だった。



 端末にカードを差し込む。

 瞬間――


 講堂全体を包むような“白金色の光”が爆ぜた。


 バッと周囲が眩しく染まり、空気が震える。

 職員のモニターが一斉に点滅し、ざわめきが走った。


「光量が……? ま、待て、出力制御を――!」

「計器が反応してません!」


「え、な、なに? これ……!」

 亜里沙が目を見開き、身をすくめる。

 その姿に、遼は思わず立ち上がった。

「亜里沙!」


 次の瞬間、光がふっと収束する。

 残ったのは、静けさと――床に浮かぶ、淡い紋様のような光跡。

 まるで“羽根”の形をした模様が、彼女の足元に浮かんでいた。


「……機器の誤作動です。問題ありません」

 職員が冷静にアナウンスするが、声の端には動揺が滲んでいた。


 講堂内はざわめきに包まれる。

 遼は胸の鼓動を押さえながら、ただ彼女を見ていた。

(……あれは、“誤作動”なんかじゃない)




「どうだった?」

 説明会の休憩時間。

 亜里沙は元気そうに戻ってきて、遼の机にドンと両手をついた。


「ひ・み・つ。でもね、たぶん遼の役に立つよ!」

「その笑顔が一番怖ぇんだよ……」

「なんで!? 信じてくれてもいいじゃん!」


 亜里沙は頬を膨らませる。

 けれど遼はまだ、さっきの光の残像を引きずっていた。


(胸の奥が熱くなった……あれは恐怖じゃなくて、何か呼応するような感覚だった)

 自分の中の“何か”が反応した。

 それが何かは、まだ言葉にできない。


「……ほんとに、大丈夫なんだな?」

「うん! ちょっとくすぐったかったけど、平気!」

「“くすぐったい”って……それが一番フラグなんだよな」

「なにそれ、遼、またラノベ脳発動してるでしょ!」

「お前が言うな!」


 笑い合う二人。

 その笑顔の奥に、互いがまだ知らない“光の余韻”が潜んでいた。




 説明会が終わり、講堂を出た廊下。

 職員たちが無線で短くやり取りしているのが耳に入った。


「……さっきの測定値、記録に残しておけ」

「例の“反応”が二人分出た。間違いない」


(……二人分?)

 遼の足が、一瞬だけ止まる。

 けれど彼は何も言わず、そのまま歩き出した。


「ねぇ、遼! ラーメン食べて帰ろ! お祝いだよ!」

「……はぁ。まぁ、そういうテンションの方が安心する」

「でしょ? あと餃子も頼もう!」

「お前、探索者になる前からエネルギーお化けだな……」


 夕焼けの街を、笑いながら歩く二人。

 だが、ふと亜里沙が立ち止まった。




「……あれ?」

 彼女の手首の内側が、淡く光っている。

 まるで皮膚の下に小さな星が埋め込まれたみたいに。


「なんか、光ってる?」

「な……おい、冗談だろ!?」


 その瞬間、遼の胸ポケットの探索者カードが“震えた”。

 同時に――心臓の鼓動が、彼女と同じリズムで打った気がした。


(――同じ、だ)

 遼の呼吸が止まる。

 風が街路樹を揺らし、時間がわずかに伸びる。


 目と目が合う。

 言葉は交わさずとも、何かが確かに繋がった。


 すぐに光は消えた。

 街のざわめきが戻り、車の音が流れる。


「……やっぱり、お前の“ひみつ”って、普通じゃないな」

「ふふっ、共鳴? とか、そういうのだったりして?」

「冗談言うなよ。……でも、たぶん、それ、当たってる」


 夕陽が沈み、夜の街が始まる。

 遼はもう、心の奥で知っていた。

 今日という一日が、ただの“始まり”じゃないことを。


>――あの日、確かに何かが始まった。

それが運命なのか、偶然なのか、まだわからない。

けれど俺たちの“光”は、確かに同じリズムで脈打っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ