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ダンジョン・ブレイク――スキルコピーするだけで最強の俺、ダンジョンで恋も奪う  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第16話 バイト代数ヶ月分の宝石、手に入れた結果

宝箱罠、殺意ありすぎワロタ件について Part.12


1 :名無しの探索者 :

矢の雨罠、ガチで死ぬんだけど。庁のパンフ「挑戦の先に希望がある」とか言ってたの誰だよw


2 :名無しの探索者 :

罠っていうか虐殺装置だろwww


3 :名無しの探索者 :

でも宝箱からマナストーン出るんだろ? 売値120万?

そりゃ命賭けるやつ出るわ


10 :名無しの探索者 :

ワイ。矢に刺さりながらも盾で耐えて宝箱開けたバカです。

で、マナストーン引き当ててた。


11 :名無しの探索者 :

生き残ったんかよwwwwwwww


12 :名無しの探索者 :

動画上がってね?w


15 :名無しの探索者 :

庁は「出現率は最初から固定です」って言ってるけど、絶対裏で調整してるよな。


20 :名無しの探索者 :

宝箱のせいで死人増えてんのに「夢と希望」とか言い張る広報の人も大変だなw

---


〔学生寮・遼の部屋〕


「……え?」

スマホを見ていた遼は目をこすり、再度画面を確認した。


【ルナストーン 市場価格120万円】

と、スレッドに堂々と書かれている。


「ひゃああああああっ!? 120万!? じゅ、じゅーにまんえん!? ゼロ2個じゃなくて!? 桁ミスじゃなくて!? 俺のバイト代何ヶ月分だよ!!」


ガバッと起き上がった拍子に、ベッドから転げ落ちる遼。

ドサッ、と鈍い音が響く。

スマホも空中を回転しながら、ぽーんと跳ねて床に落ちた。


「痛っっってええぇぇぇぇ!! 背中ぁぁぁ!! 俺の背骨ポイント今のでマイナス200いったわ!!」


ゴロゴロしながら床を転がる遼。

手を伸ばしてスマホを拾い上げ、震える指で画面をスクロールした。


「……やっぱルナストーン120万で確定か……。

あれ? 待って? じゃあ俺が昨日、罠解除失敗して――」


昨日の記憶が脳裏をよぎる。

宝箱を開けようとした瞬間、天井から降り注ぐ矢の雨。


「いでででででッ!!」

思い出しただけで尻を押さえる遼。


「マナストーン……市場価格120万……。

 ……やべぇ、真琴に価値知ってるか確認する? ……いやいやいやいや!

 そんなこと言ったら絶対こうなるだろ――『はい、じゃあ売値は半分こね』って!

 いや、俺が矢の雨を必死になって避けて血ィ吐きながら拾ったんだぞ!?

 あの人は横でケラケラ笑ってただけだぞ!?

……あ、でも“笑った罰”とか言って渡してくれたんだよな……。

 そ、それを言われたら……ぐぅ……!

 クソッ! 言えねぇ! 言った瞬間、間違いなく目を細めて笑うんだ!

 あの目……マジで心臓に刺さるんだよ……矢より痛ぇ……!」


スマホを握りしめて、しばし沈黙。

「……いや、これはもう、俺のだろ」


ベッドに再びよじ登り、天井を見つめてニヤリと笑う遼。


「だって俺の尻に矢ぶっ刺さってんだぞ!?

しかも2本! 二重課金!? いや違う! でも!!

こんな痛い思いして手に入れたんだから……俺のだ! ぜっっっったい俺のだ!!」


毛布をかぶって一人ジタバタする遼。

枕に顔を埋めてバタバタ。

「よし、決めた! これは俺の秘密財産!!

ルナストーン120万!! 学食一生分!! 俺の未来安泰ッ!!」


遼の部屋に、しばらくの間「ぐふふふふ」という怪しい笑い声が響いていた。



学生寮・夜 遼の部屋。


薄暗い部屋の中。

机の上にポツンと置かれた小さな宝石――いや、宝石なんてレベルじゃない。

淡い青白い光を放つ、ダンジョンの宝箱から拾った“マナストーン”。

遼はそれを前にして、正座していた。


「……はぁぁ……」

ため息。胸に込み上げてくる妙な昂ぶりを抑えきれず、何度も眺めてしまう。


「市場価格120万円……やべぇ……」

手の中で光るマナストーンを転がしながら、遼はゴクリと喉を鳴らす。

学生のバイト代なんて、月にせいぜい数万円。

食費を削って、学食で安いカレーを食って、たまにカップ麺でしのぐのが現実。そんな生活してる俺の目の前に、いきなり“現金120万”相当の石が転がってきたのだ。

そりゃ頭がおかしくなるわけで。


「……でも、これって真琴に相談するべきなのか?」

脳裏に浮かぶのは、氷の女王――香坂真琴。

宝箱の罠で矢の雨を浴びて苦しんでた俺を見て、笑ってしまった人。

罪悪感からか、“笑ったお詫び”だといって、このマナストーンを俺に渡したのだ。


……笑ったからくれたって、理屈おかしくない?


でもまぁ、ありがたく受け取ったのは事実。

だったら、これは俺のものでいいよな? 相談とかいらねぇよな?


「そうだよ……俺、頑張ったしな……」


遼はストーンを掲げ、天井に反射する光を見上げた。

「思い出せ、ゴブリン戦……」


【回想・ゴブリン三体戦】


ダンジョンの浅層、薄暗い通路。三体のゴブリンがギャギャッと鳴き声を上げながら襲ってくる。


遼の手には――何もない。武器、ゼロ。防具、なし。あるのは己の拳のみ。

「舐めプかよ!!」

自分で叫んで自分でツッコミ入れてた。けど当時は、なんかイケる気がしたんだよなぁ。無謀ってやつだ。

拳で殴る。ゴブリンも棍棒で殴る。ガードしてみる。痛い。骨が軋む。泣きそうになる。

でも、必死に拳を振るってた。結果……ギリギリで勝てた。


現在・寮の部屋。


「……思い出すだけでアホくさいな俺……」

あの時の拳の痛みが蘇る。右手を見つめれば、まだ拳の皮膚は硬くなっていて、痣の跡も残っている。あの戦いの証拠。


「やっぱ俺、武器欲しいわ……」

ぼそりと呟く。その声は次第に熱を帯びる。


「俺専用の、マジでカッコよくて、めっちゃ強い武器……!」

脳内に、さまざまな妄想が膨らんでいく。大剣、魔剣、槍、二刀流、はたまた銃火器まで。漫画やゲームで見たカッコいい武器たちが、頭の中で踊る。


「そうだ……」

ハッと気づいたように、マナストーンを握りしめる。

「これ売れば……! めっちゃ強い武器、買えるんじゃねぇの!?!?!」


頭の中で電卓が弾かれる。120万。

バイトじゃ何年かかるかわからない大金。

それが、目の前にある。

しかも、換金すればすぐ現金化できると聞いている。


「うおおおおおおおおっ!!」

気づけばベッドの上で叫んでいた。枕を叩き、シーツを蹴り飛ばし、布団の上を転がり回る。


「よっしゃぁぁぁ! 武器屋行くしかねぇ! 俺の専用武器だぁぁぁ!」

心は完全に暴走モード。

すでに妄想の中では、武器屋の店主が「若造、見る目があるな……」と渋い顔で最強の剣を差し出してくるシーンまで再生されていた。



「……はっ!」

妄想の熱に浮かされながらも、ふと現実に引きされる。


「でも待てよ……」

真琴に相談せずに勝手に売ったら、絶対にツッコまれる。

いや、というか怒られる。

あの冷たい目で見られる。氷の槍より刺さる視線。

想像するだけで震える。


「……クソッ、やべぇな……」

遼はマナストーンを握りしめ、布団の中でゴロゴロ転がった。


「でも……欲しいんだよなぁ、俺専用の武器……! 拳だけとかもう嫌だ! せめて剣! いや槍! できれば光ったり闇落ちしたりするやつ!」

叫んで、枕に顔を埋める。

妄想は止まらない。遼の脳内では、すでに“最強の探索者・藤堂遼”が専用武器を振るい、ダンジョンの怪物をバッタバッタと倒していた。

背中にはマント。

周囲の探索者たちは「さすが遼さん!」と拍手喝采。

真琴も横で「……やるじゃない」と、ちょっと照れながら褒めてくれる。


「……ぐふふっ」

枕を抱えてニヤける遼。

もう完全に危ない人である。


「よぉし……決めた! マナストーン売る! そして俺専用の武器を買う!」

力強く宣言した。

……が、その直後にスマホが震えた。

画面を見ると――香坂真琴からの着信。


「うおぉっ!?」

慌てて飛び起きる遼。

心臓がバクバク鳴る。

よりによってこんな時に……!

マナストーンを慌てて枕の下に隠し、深呼吸して電話に出る。


「もしもし?」

受話口から、少し柔らかい、けれども慎重な声が流れた。


『遼? 今、大丈夫?』

「うん。え、何かあった?」

『……スキル《アビリティジャック》のことなんだけど』

遼の背筋が凍りついた。

『あれは……信用できる人にしか話さないで。特に政府の人間には、絶対に言っちゃダメ』


「えっ……」

『庁は探索者を“管理”したがってる。あなたのスキルは、あまりにも特殊すぎる。知られたら……利用されるか、最悪――』

一瞬、真琴の声が震えた。


「……真琴」

遼は思わず声を低くして、囁くように言った。


「ありがとう。忠告してくれて……すごく助かる」

受話口の向こうで一瞬の沈黙。

次に返ってきたのは――

『べ、別に……心配とかしてるわけじゃないから!』

「あっ」

『あんたがバカみたいに全部喋りそうだから、仕方なく言ってるだけ。勘違いしないで』

「ああああ……ツンデレ発動きたぁぁぁぁ」

思わず天井に向かって叫ぶ遼。

『何? 今、変なこと言ったでしょ!?』

「言ってない言ってない! あ、ありがとう真琴! 本当に感謝してる!」

『……っ、もう!』

真琴はそれ以上言葉を重ねず、ふっと息を吐いた。



〔会話・続き〕


遼は電話を切ろうとしたが、真琴の声が続いた。


『……ところで遼』

「ん?」

『……何か、隠してない?』

「!!!」

『声が妙に上ずってる。あと、電話出たとき慌ててた』

「い、いや!? な、何も!? 隠してないよ!? ほんとほんと!」

『……ふふ』

「な、なんで笑うの!?」

『面白いから』

「やめて!? 怖い!!」

『何かを隠してる遼って、妙に分かりやすいのよ。顔見なくても伝わってくる』


「ぎゃああああああ!!!」

ルナストーンを布団に隠しながら、遼は必死に叫んだ。


『……まあいいわ。追及はしない。あなたが隠したいなら、それでいい。でも』

「……でも?」

『もしそれが“私にだけは見せてもいいもの”だったら……その時は、見せてね』


「!!!」

受話口から聞こえた真琴の声は、少しだけ優しかった。

遼は一瞬、心臓が跳ねるのを感じた。


「……わ、分かった。ありがと」

『……じゃ、切るわ。おやすみ』


ツー、ツー……

電話が切れる。

遼はベッドの上でルナストーンを抱え込み、ゴロゴロ転げ回った。


「やべぇぇぇぇぇぇぇ!! バレかけた!! でもツンデレ最高ぉぉぉ!!!」


壁に頭を打ちつけながら悶絶する遼。

布団の下のルナストーンが、まるでニヤニヤと光っているように見えた。


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