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ダンジョン・ブレイク――スキルコピーするだけで最強の俺、ダンジョンで恋も奪う  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第12話 探索者登録 ― 監視される才能

 朝の光はいつも通り眩しいのに、心は落ち着かなかった。

新宿ダンジョンの事件から、まだ二日しか経っていない。

テレビは相変わらずその話題ばかりだ。


『政府は“探索者登録制度”の導入を本日発表――対象者には順次通知が届く予定です』




「……探索者、登録制度?」

歯磨きしながら、ニュースをぼんやり聞く。

“選ばれた者”の響きには憧れがある。だが、報道のトーンは違った。

どこか“管理”を前提とした響き。


その時、机の上のスマホが震えた。

ピロン、と短い通知音。

その一音が、なぜか耳に刺さる。


《探索庁より通知》

《藤堂 遼様、あなたは探索者適性対象者に選定されました》

《登録は義務であり、拒否はできません》


「……は?」


口の中の歯ブラシが止まった。

何度読み返しても、“拒否はできません”の文字が変わらない。


「選ばれた、っていうより……狩られた気分だな」

遼は小さく笑ったが、その笑いは乾いていた。




数時間後、遼は市役所の特設会場に立っていた。

「探索庁出張窓口」と書かれたバナー。

職員の制服は警察と役所の中間みたいで、どこか威圧的だ。


「……これ、完全に就活の面接会場だな」

「番号札、お持ちの方~」

呼ばれても誰も動かない。

空気は重い。不安と恐怖が混ざり、みんな下を向いていた。


スーツ姿のリーマン、制服の女子高生、子連れの主婦まで。

彼ら全員が“適性あり”なのだという。


「ねぇ、これって、登録したら給料出るのかな」

「さぁ……でも拒否できないんでしょ? 怖くない?」


そんな囁きが聞こえる。

遼は番号札を見つめながら、つぶやいた。


「これ、完全に“召喚通知”だろ……」


やがて電光掲示板に数字が点った。

《45番 ― 面接室3へお越しください》

「……行くか」



面接室は無機質だった。

白い壁、無音のエアコン。

机の向こうに座るのは二人の職員。


一人は日下部くさかべ――無表情で冷たい声。

もう一人は佐伯さえき――まだ若く、どこか人間味がある。


「藤堂遼さんですね。探索者適性試験の結果、非常に高いエネルギー反応が確認されました」

「エネルギー……?」

「スキル適性と言い換えても構いません」


淡々とした声。

机の上に置かれた銀色の装置が点滅していた。

「では、手をかざしてください」


遼は装置に手を置いた。

青白い光が脈動し、装置が低く唸る。


ピッ――。


画面に浮かんだのは、名前とステータス。

だが、“スキル”の欄だけが点滅を繰り返していた。


《スキル:???》


「……エラーですか?」

佐伯が焦ったように装置を叩く。

日下部の眉がわずかに動く。


「再測定を」

「はい、ですが、何度やっても“未知領域”と……」


無機質な空気が一瞬、凍りついた。


「未知領域?」

遼が問うと、日下部はわずかに目を細めた。


「あなたの能力は、我々のシステムでは解析不能です」

「……それって、ヤバい方向の話ですよね?」

「その可能性もあります」


淡々と返される言葉に、背筋が冷たくなる。


「(俺、そんなに危険なのか……?)」


机の上では佐伯が小声でつぶやいた。

「上に報告しないと……“危険指定”の候補になるかもしれません」


遼は聞こえないふりをした。

聞いたら、戻れなくなる気がした。




テーブルの上に厚い誓約書が置かれた。

紙の端には赤い印。


「こちらに署名をお願いします」

「えっと……これ、読んでからでも?」

「お時間の関係上、必要事項だけ説明します」

説明は早口だった。

“義務”“罰則”“守秘義務”“国家機密”。

どの言葉も冷たく重い。


「拒否、は――」

「ありません。すべての探索者は国家管理下です」


その一言で、空気が決定的に変わった。

遼は黙ってペンを取る。

ペン先が紙に触れた瞬間、手が震えた。


――カリカリ。


「……これで、俺は自由じゃなくなったんだな」


署名を終えると、日下部は淡々と登録カードを差し出した。

黒いカード。表面には金色の紋章。

その光が、やけに冷たく見えた。




役所を出ると、もう夜だった。

街灯の下、遼はカードを見つめた。

そこには《探索者 登録番号0174》と刻まれている。


「……これで俺も、“国家の戦力”ってやつか」

皮肉を混ぜて呟いたその声が、夜風に溶けていく。


不意に、背後から聞き慣れた声。

「……登録、済んだ?」

振り向くと、香坂真琴が立っていた。

街灯の光に照らされ、彼女の表情は静かで、どこか優しかった。


「お前も、か」

「ええ。拒否できないみたいだし」

「……あの誓約書、エグかったよな。守秘義務って、まるでスパイ映画だ」

「笑えないけどね」


二人の間に沈黙が落ちる。

けれど、その沈黙は気まずさよりも、同じ立場の“理解”だった。


「でも、遼くんのスキル……本当に“???“だったの?」

「うん。どうやら俺、何者か分からないらしい」

「……それ、逆に怖いわね」

「自分でもそう思う」


真琴は小さく笑った。

その笑顔は強がりのようでも、どこか安心のようでもあった。


「でも――私は信じてる。あんた、危険じゃなくて、必要な人だから」


遼は少し驚いて、目を逸らした。

「……お前って、たまにズルいな」

「そう? 副長官の方がよっぽどズルい目してたわよ」

「あの人? “守らせます”って顔じゃなかったな。“使い潰します”の目だった」

「でしょ? あの目、忘れられない」


二人は顔を見合わせ、ふっと笑った。

一瞬だけ、重かった空気がほどけた。



真琴と別れたあと、遼は駅前に立っていた。

人々のざわめき、SNSの通知、ニュース速報。

「探索者登録者、全国で続出」――その文字列が次々と流れていく。


「……もう、普通の世界じゃないんだな」


そうやって軽口を叩き合っていると――

駅前の群衆がざわつき始めた。


「何あれ!?」「人が怪物倒したぞ!」

スマホを構える人々。


真琴が駆け戻ってきて、空を見上げた。

そこにはまだ、黒い穴――“ダンジョン”が口を開けていた。


「……これから、どうなんの、俺たち?」

「さぁね。でも――」


真琴の瞳が、決意を宿す。

「どうせ逃げられないなら、戦うだけよ」


遼は苦笑して頷いた。

その瞬間、遠くの空で、稲光が走った。


――ダンジョンの時代が、始まろうとしていた。

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