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異世界帰りの最強魔術師、現実世界でも無双する。 ~唯一魔法が使える俺、なぜか英雄扱されて困ってます~【26年5月発売】  作者: 茨木野


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97.

「くふふ……。可愛いわねぇ、その小さな手足」


 上松みつるが、嗜虐的な笑みを浮かべて妖刀を変化させる。

 刀身がジャラララ……と不気味な音を立てて砕け、無数の刃がついた鎖へと変貌した。

 妖刀・鎖鎌形態。

 中距離から一方的に獲物を切り刻む、暗殺者の武器だ。


「大人と子供。その体格差リーチで、アタシに勝てる道理がないのよ。……ママのお腹に還りなッ!」


 ブンッ!


 みつるが手首を返すと同時に、分銅のついた鎌が唸りを上げて迫る。

 子供の目線では、それは巨大な鉄球が飛んでくるような威圧感だ。

 速い。

 子供の動体視力なら、何が起きたか分からぬまま頭蓋を砕かれていただろう。


「オラァッ!!」


 裂帛の気合と共に、死の鎌が俺の眉間へと振り下ろされる。


 パシッ。


 乾いた音が、薄暗い空間に響いた。


「…………は?」


 みつるの動きが止まる。

 彼女の細い目が、限界まで見開かれた。

 振り下ろされた鋼鉄の鎌。

 それを、俺は左手の親指と人差指の二本だけで、つまむようにして受け止めていた。


「な……う、嘘……?」


 みつるが顔を引きつらせ、鎖を引こうとする。

 だが、ビクともしない。

 俺の小さな指は、万力のように鋼鉄の刃を固定している。


『くくく……。大人げないのう、我があるじは』


 脳内で魔王が愉快そうに笑う。

 俺はつまらないおもちゃを見るような目で、見下ろしてくる女を見上げた。


「なんだ。遊びか?」

「ふ、ふざけるなぁぁぁっ! 離せぇっ!」


 みつるが激昂し、全身の体重をかけて鎖を引っ張ろうとする。

 その力が重心に乗った、一瞬の隙。

 俺は指を離すどころか、逆に鎖を強く引き寄せた。


 グンッ!


「えっ――!?」


 予想外の怪力に引かれ、みつるの身体がたたらを踏んで前につんのめる。

 俺の目の前、無防備な腹部がさらけ出される。


「がら空きだぞ、お姉さん」


 俺は右の拳を握りしめ、その鳩尾みぞおち目掛けてカチ上げた。


 ボゴォッ!!


 重厚な打撃音が響く。

 小さな拳が、みつるの腹の肉に深々とめり込んだ。


「ぐ、えぇぇぇぇぇっ!?」


 カエルの潰れたような悲鳴。

 みつるの身体がくの字に折れ曲がり、砲弾のように後方へと吹き飛んだ。

 背後の資材の山に突っ込み、鉄パイプやコンクリート片を派手に撒き散らして転がる。


「がはっ……ご、ぼ……っ」


 みつるは口から大量の血を吐き出し、痙攣しながら俺を見上げた。

 その目には、理解不能な事象への恐怖が張り付いている。


「ば、馬鹿な……。幼児化したのよ……? 筋力も、体力も……子供のそれになっているはず……」


 彼女は震える声で呻く。


「なのに……なんだ、そのデタラメな威力は……! ありえない……アタシの計算では……!」

「計算?」


 俺はブカブカのズボンを上げながら、ゆっくりと歩み寄る。


「おいおい、勘違いするなよ」

「ひっ……」

「肉体が縮んだ。……それがどうした?」


 俺は冷徹に告げる。


「幼児になったくらいで、この俺が弱くなるとでも思ったか?」


 俺の力は、筋肉の量だけで決まるものではない。

 膨大な魔力による身体強化ブースト

 そして、魂に刻まれた数万の戦闘経験。

 器が小さくなろうと、中身(俺)の強さは1ミリたりとも摩耗しない。


「たとえ細胞レベルまで退行させようと、俺は俺だ。……貴様ごときが勝てる相手じゃない」


 俺が殺気を放つと、みつるは「ひぃっ!」と悲鳴を上げ、ガタガタと震えながら後ずさった。

 勝負あったな。

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※2/5(木)


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― 新着の感想 ―
まぁオラオラの人も、子供になったくらいじゃへこたれませんでしたしね(笑)
>「幼児になったくらいで、この俺が弱くなるとでも思ったか?」 >器が小さくなろうと、中身(俺)の強さは1ミリたりとも摩耗しない。 しってた。 まあ、ただ子供にするんじゃなく、マジで戦闘経験から何から完…
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