89.
贄川が異形の怪物へと成り果て、殺意の奔流となって襲いかかってくる。
だが、俺にゃまったく通じない。
『ころころこころころころころこころおおおおおおおおおおおおおおおころすぅううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!』
贄川が暴走している。魂に修復不可能な傷ができる前に、カタを付けるか。
視界を埋め尽くすのは、襲い来る無数のタコ触手。
一本一本が太い丸太のようで、先端には鋭利な牙が生えそろっている。
物理的な質量と、魔的な呪詛が込められた必殺の連撃。
俺は反則剣を構え、嵐の中を真っ直ぐに歩き出す。
ヒュン、ヒュン、ヒュン。
タコ触手は俺の体に到着する前に、蜃気楼のようにかき消えていく。
斬る必要すらない。
俺の領域に触れた瞬間、攻撃判定そのものが「無かったこと」になるのだ。
『なんでえええええええええええええ! なんであたらないのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 領域の範囲内なのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
贄川の絶叫が響く。
彼女の常識では理解できないだろう。
必中必殺の領域内で、なぜ攻撃が当たらないのか。
「悪いな」
タンッ! と俺は水面を蹴る。
水しぶきを上げ、一瞬で贄川との距離をゼロにする。
迎撃しようと湧き出る無数の触手、数え切れないほどの肉食魚の群れ。
それらはすべて、この世界における法則――【異能】によって作られた現象だ。
この世の理から外れた超常能力。
それは、この俺、霧ヶ峰 悠仁には、通じない。
この手に握る、反則剣。
それは、俺の魂の結晶であり、異世界で培った「理不尽」そのものだ。
ボッ……!
俺の剣を中心に、透明な波動が広がる。
あらゆる異能が、魔法が、呪いが、触れた端からガラス細工のように砕け散り、消えていく。
「おまえらのやってること(異能バトル)と、俺のやっていたこと(異世界ファンタジー)じゃ……ジャンルがちげえんだよ」
俺は躊躇なく、反則剣を突き出した。
白刃が、異形化した贄川の胸を貫く。
パッキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
世界に亀裂が入るような、硬質な音が鳴り響く。
贄川を覆っていたおぞましい魔の力が、霧散していく。
彼女の体を蝕んでいたタコの足が、魚の鱗が、ボロボロと剥がれ落ちて光の粒子へと還る。
そして、周囲を閉ざしていた領域結界も、ガラスが割れるように崩壊した。
「反則剣は、全ての異能を消し、異能による傷を癒やす」
俺は剣を引き抜く。
そこに傷跡はない。あるのは、人間に戻った贄川の姿だけだ。
「ま、当然。魔に浸食されていようが、これがありゃ関係ない。全て、元通りさ」
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