88.そうだが?
贄川が、才賀とかいう存在に、力を借りようとしているらしい。
ズズズズズ!
空気が重く澱み、贄川の体に、どす黒い力が集まっていくのがわかる。
「魔の気配だな……」
『うむ……それも、かなり高位の魔……じゃな』
魔。すなわち、人間とは異なる高次元の怪異のこと。
魔族。魔神。邪神。
それらから、贄川は禁断の力を借りようとしている。
『まずいの、これ以上、魔の力を取り込むと、あの女……体はともかく、精神に深く傷をおうぞ』
体の傷は、治癒魔法で治せる。でも精神――心は傷つく。
心は心臓って意味じゃあない。文字にはできるが、目には見えないものだ。
そして、目に見えないものは、得てして、修復するのが難しい。
『じゃが……ま、不可能ではないんだろ?』
「まーね」
俺の手には、反則剣が握られている。
あらゆる異能を無効化、そして異能の傷を癒やす理外の剣が、この手にあるのだ。
不安になることなんて、ない。
「さ、きな。気が済むまで……相手してやるよ」
『ウボロォオエオオオオオオオオオオオオオオ!』
贄川の体が、さらに醜悪な変貌を遂げる。
ボコボコと肉が波打ち、下半身からヌメヌメとした粘液を滴らせる、タコのような極太の触手が生えてきたのである。
タコ人間、とでも言えばいいのか。
生理的な嫌悪感を催す、生臭い磯の香りが漂ってくる。
『オボオロロロオ! 才賀ざまぁあああああああああ! ありがとぉおおおおおおおおおおお!』
触手の先には、三つ叉の矛がそれぞれ握られていた。
『あれ一本一本が特級の呪具じゃな』
『七福塵様ァアアアアアアアアアアアアア! 援護アリガトウゴザイマスゥウウウウウウウウウウウウウウウウウ!』
また別のやつの名前が出てきたな。
才賀に、七福塵か。バックに何人ついてるんだ。
『くたばれ異端児ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!』
ザバァアアン! と地面から水柱が立つ。
瞬間、周囲が真っ白な濃霧に包まれた。
肌にまとわりつくような湿気。
「おろろ、視界を潰す作戦かい?」
『そこまでして勝ちたいのかの』
「なー」
目潰ししてまで勝ちたいもんかね?
だが、俺は肌で感じ取っていた。敵の、ドロドロとした攻撃の気配を。
四方八方から、あのトライデントで攻撃してきた。
俺は反則剣を、ハエでも払うように軽く振る。
パキィイイイイイイイイイイン!
小気味よい破砕音が響き渡る。
『なぜだぁあああああああああ! 七福塵さまのぉお! 呪具がぁああああああ! どうしてそんな軽々とぉおおおおおおお!?』
「あのなぁ……おまえ、アホだろ。呪具なんて、異能の塊みたいなもんだろ? 反則剣が効きまくるに決まってんだろ」
『うぼらぁああああああああああ! てめええええええええええええええええ!』
逆上した贄川が、今度は無数の触手で俺を捕まえようと殺到してくる。
俺は欠伸を噛み殺しながら、左手一本を突き出した。
シュパパパパパパッ!
触手の全てを、左手一本で、全部捕まえてみせたのである。
『視界を潰したのに、どうして触手を捕まえることができるのぉお!?』
贄川が信じられないといった様子で、ガクガクと震えている。
「俺、殺意や敵意にちょー敏感なんだよ。おまえが俺を殺そうと思ってる限り、俺は殺せない」
『なん……なん……』
絶句し、白目を剥く贄川。
『そんなの……反則やん!』
「そうだが? なにか」
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