87.
変貌した贄川とのバトル中。
やつの領域結界に引き込まれた、俺は。
相手の召喚した最強の魔獣、海魔蛇を、ワンパンで霧散させたところだ。
辺りには、魔力が散ったあとの静寂だけが漂っている。
「なあおい、これで終わり? ちょっとさー」
はーあ、と俺はわざとらしく大きなため息をついた。
がっかりだぜ。
「なんで……そんながっかりしてはるの……?」
「そりゃ、だってさー、呪いのアイテムでバフされたってわりに、雑魚なんだもん」
「ざ……こ……」
贄川が、焦点の合わない瞳で、視線を、地面に、というか海面に落とす。
「雑魚……? うちが……雑魚やて……?」
「うん。まあ、あんたがってわけじゃあないけど」
あんたも含めて、現代の異能者(妖術師)は、みんな雑魚なのだ。
まるで相手にならない。あくびが出るレベルだ。
「なんでおまえらって、こんな弱いの?」
『言ってやるな、勇者よ』
魔王が見かねたのか、脳内でフォローを入れてくる。
『常に魔物の脅威にさらされている異世界と違い、こちらは平和なのだ。戦う術を極めなくてよいのだから、妖術師のレベル低下は……平和ボケというやつじゃな』
まあ、そりゃそうか。
生きるか死ぬかの日常を送ってきた俺たちとは、根本的に覚悟が違う。
「うち……同情、されてはるの……?」
ぷるぷる、と贄川が小刻みに体を震わせる。
握りしめた拳から、血が滲んでいた。
「雑魚……低レベル……は、はは……ふ、ふふふ」
壊れた玩具のように、乾いた笑い声を上げ始めた。
こわ。
「うち……うちが……どんな思いで……幼い頃から……! 血反吐を吐いて! 死ぬ思いで! 鍛えてきたと思ってはるの!?」
彼女が顔を上げる。その目は血走り、鬼のような形相になっていた。
「知らん」
俺は冷たく言い放つ。
そんなの本人しかわからないだろうに。俺にぶつけられても困る。
「馬鹿に……しよって! 馬鹿にしよってええええええええええええええええええええええええええええええ!」
ゴォオオオオオオオオオ!
彼女の体から、どす黒い闇が噴水のように吹き出す。
肌を刺すような冷気と、腐臭が混じった瘴気だ。
「邪神・才賀様ぁ……!」
「邪神……才賀……?」
なんだ、聞いたことないぞ。
『我も聞いたことない……サイガ……だれじゃ、一体……?』
贄川がギラつく目を、天に向ける。口の端から泡を飛ばし、狂信者のように叫んだ。
「我が身を、御身にささげますぅう! だからぁ……! この男を、滅するお力をお与えくださいぃい! 才賀さまぁ……!」
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※12/27(土)
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