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86.バケモノ



 なんか黒いものを食って、変貌した贄川にえかわ


 やつの張った結界の中に、俺たちはいる。


 ここは領域結界といって、異能者の使う結界の、奥義みたいなもんらしい。

 封絶界のさらに上位版で、心の中の世界を構築できるとか、なんとか。


「死になはれ!」


 ぱんっ! と贄川にえかわが柏手を打つ。

 乾いた音が、結界内に響き渡った。


 がぶっ!


「んあ……? なんだこれ……?」


 俺の体の周りに、突如として無数の魚たちが現れていた。

 ぎょろりとした目、鋭利な牙。ピラニアの群れだ。

 俺はガシガシと頭をかいた。まじかよ。


「俺が視認できないほどの速さで食らいついてきた……?」


『いや、勇者よ。違うぞ。そこに、突然現れたように、我には見えた』


 魔王さんがそうおっしゃる。

 ほーん。突然現れる?


「魔力で創生したってかんじ……じゃあないな」


『うむ。生命をゼロから作り出したというより、生命を別の次元から持ってきたようじゃな』


 うーん、わかるような、わからないよう。


「しゃははあ! ピラニアの餌食になってまえぇ!」


 がぶがぶがぶっ!

 無数の牙が俺の皮膚を噛もうと、カチカチと音を立てている。

 ま、効かないんですけどね。


「ピラニアに食われた程度で、俺が死ぬわけないだろ?」


「グッ……! な、ならこれでどうや!」


 ザシュッ……!

 鋭い風切り音と共に、何かが俺を貫いた。


「……今度はカジキマグロ……!? お兄ちゃん!」


 咲耶が両手で口元を覆い、目を見開いて叫ぶ。その瞳が不安げに揺れていた。


「なぁーにー?」


「あ、うん……大丈夫だよね」


「もちのろん」


 体中を鋭利なカジキマグロのツノで貫かれている。串刺し状態だ。


「なんで平然としとるや!?」


「そらカジキマグロくらいで、俺が死ぬわけないだろ?」


「クソが! ならこれならどうやぁ……!」


 ドポンッ!

 目の前の空間が歪み、巨大な影が現れた。

 ホオジロザメだ。

 強烈な生臭さと共に、巨大な顎が俺を捉える。

 体に、がぶりっ! と正面から噛みつかれる。


 ごりゅっ……!

 嫌な音がした。


「はっはっはー! 体を完全にかみちぎった! これで仕舞いやぁ……!」


「なにが?」


「なんやとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 地面でホオジロザメがビチビチとジタバタしている。邪魔なので、軽く蹴っ飛ばしておいた。

 ドォォォォォン!

 衝撃波と共に、サメが空の彼方で、きらんっ! と光った。


「……目で追えなかった……。お兄ちゃんなにしたの?」


「サメを星にした」


「……そ、そう……蹴ったのね、凄いスピードで」


「おう」


 あわわ、と贄川にえかわが腰を抜かさんばかりに慌てている。


「あ、ありえへん……体をかみちぎられたんやで!?」


「サメに食われた程度で、俺が死ぬとでも?」


「ありえへんわ! ピラニアに食われても、カジキに貫かれても、サメに体を食いちぎられても! 生きてられるやつなんておらへんわ!」


「え、ここにいるけど?」


「あああああああああもぉおおおおおおおおおおおおおお!」


 贄川にえかわが髪を振り乱して絶叫する。

 まったく、コノ女は何もわかってない。

 俺はため息をつき、肩をすくめた。


「あのなぁ、俺、異世界帰りの勇者なんだぜ? 現実にあるもので、俺を殺せるわけないだろ?」


 体は魔力でガードされてる。

 防御壁を突破してきても、治癒魔法で再生できる。


「俺を殺したいなら、異世界の魚でもつれてくるんだな」


「く……くくく! そうやなぁ……! じゃあ、これならどうやぁあああああああああああああああああ!」


 ぱんっ、と贄川にえかわが柏手を打つ。

 ゴゴゴゴゴ……!

 地響きと共に、背後の水面が大きく膨れ上がる。


 どぱぁああああああああああああああああああああああん!

 大量の水しぶきが舞い上がり、雨のように降り注ぐ。


「な、なにあれ!? ウミヘビ!?」


『アレは海魔蛇リヴァイアサンじゃな』


海魔蛇リヴァイアサン!? あの……ファンタジー定番の、海に出てくるヤバいウミヘビ!?」


 おー、あいつ、異世界の魚を召喚して来やがった。

 青白い鱗がギラギラと輝き、その巨体はビルほどもある。


「ここは、うちの領域! うちが……できるって思ったらできる! 異世界のばけもんを連れてくるくらい、造作もない!」


『ギシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』


 空気がびりびりと震えるほどの咆哮。

 でっけえウミヘビが、大口を開けてこちらに向かってやってくる。


「はっはー! お望み通り異世界のバケモノつれてきてやったでぇ! 死ねぇえええええええええええええええ!」


 凄い勢いで噛みついてきた。

 ぱしっ!


「なんやてぇ! 正面から、受け止めたやとぉおおおおお!?」


「……し、しかも……小指一本で!?」


 咲耶が信じられないものを見るように目を丸くし、口をあんぐりと開けている。

 贄川にえかわは白目を剥いて硬直していた。

 コノ程度で驚いてるようじゃ、まだまだだな。


「あ、わり。異世界のバケモノの場合は、殺し慣れてるんだわ、俺」


 左手、つまり利き手と逆の手の、小指一本で、海魔蛇リヴァイアサンなんて受け止め可能だ。


「小指ででこぴんっと」


 俺は軽く、指を弾いた。


 どごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!


 衝撃波が炸裂し、海魔蛇リヴァイアサンの上半身が霧散する。

 血の雨が、ざあざあと降り注いだ。


「……な、んやの……あいつ……異世界のバケモノを……瞬殺するなんて……」


 膝から崩れ落ち、呆然とつぶやく贄川にえかわに、咲耶が言う。

 彼女は誇らしげに胸を張り、ふふん、と鼻を鳴らした。


「……異世界の勇者バケモノだよ」



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※12/24


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― 新着の感想 ―
フビライ・カーン(男塾)やゲッパーランド(キン肉マン2世)のような戦い方する贄川さん、仲間になってもモブになりそう感なのがいいですね。
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