53.閉じ込められた白馬
まあ、楽勝で人の幽霊をぺしぱし払っていく。
妖刀使いの白馬は完全に足手まといだ。そもそも人型妖魔を視認できてすらいない。
「なーんか心霊スポットなのに全然怖くないね~。ゆーじくんがいるおかげだねっ!」
ユリアが抱きついてくる。やめろって、マジで。
御嶽山監督がカメラをガン見してくるから!
「…………ナカイイデスネ」
咲耶さんもマジギレモード突入するから、ほんとやめて。
「くそっ」
「んだよ白馬」
「べ、別にっ! なんでもないよっ!」
ずんずん進む白馬。俺らが辿り着いたのは――。
「わ、おっきな体育館! なにここ~?」
でけえ体育館だ。けどここ寮だろ? なんで……。
「……バスケ部の寮生が自主トレで使うトレーニングルームだって」
と咲耶。なるほど。
白馬が中に足を踏み入れた、その時――。
ずぉお……!
「封絶界……?」
突如として体育館の入り口を覆う封絶界。出入り口を完全に塞いだ。
「白馬が展開したのか?」
「……違う。呪文を唱えてなかった」
そういえば封絶界って詠唱必要なんだっけ。じゃあ別の妖術師の仕業……?
咲耶でもない。俺でも魔王でもない。
まさか妖魔が……? 何のために?
「お兄ちゃん、どうしよう……白馬さん、閉じ込められちゃった」
咲耶が入ろうとするが、ばちん、と弾かれる。
「凄く強力な封絶界……完全に人の出入りをシャットアウトしてる」
「ほぉん」
ずぶぶぶ……。
「な……!?」
ずぶぶぶ……。
「通れましたが?」
「な、んでぇ……!?」
咲耶が驚愕してる。いや、そんな大げさな……。
確かに壊すのは手間だが、通るくらいはできるだろ。
『くく……これは“人”の出入りを禁じる結界。勇者は……人ではないからな』
「そっか……お兄ちゃん、歩く全身聖武具だもんね。文字通り人間じゃないから通れるのか」
いや、単にこの結界、穴だらけだからそこを通っただけなんだが……まあいい。
「ユリア、監督。おまえらここで待ってろ」
「あ、ちょっと! お兄ちゃんは?」
「白馬助けてくるー」
いけ好かねえやつ(女だけど)だが……まあ、弱者を助けるのも勇者の仕事ってね。