表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/40

04.妹が異能バトルしてた


 その夜、俺は一人ベッドでゴロゴロしていた。すると――


『勇者よ。サクヤが、家を出て行ったぞ……』


「……なに? 咲耶が?」


 俺は身を起こし、魔王に問い返す。

 時刻は、もう夜中の0時を回っていた。


『そなたの妹は、夜遊びをするような人間なのかの?』


「いや……たぶん違うと思うけどな」


 少なくとも、そんなタイプじゃなかったはずだ。

 でも、こんな時間に出歩くってのは、どう考えてもおかしい。


「ってか、よく気づいたな」


『警戒しておったからな。何かあっても対処できるように』


 優秀な相棒だぜ。


『どうする?』


「どうするって……」


 妹のプライベートに踏み込むのは、気が引ける。

 もしかしたら夜に男と会ってるとか、カレシとか。

 あいつ、美人だしな。カレシの一人や二人、いてもおかしくないし。

 それに、もう十五だ。高校生だ。自分の尻は、自分で拭く年齢だ。


『と言いつつ、出かける準備をしておるように見えるのじゃが』


「いや、まあ。俺はどうでもいいが、親父が……咲耶のこと、きっと心配するからさ」


 もし咲耶が、ヤバい連中に絡まれたりしたら――

 親父が絶対、心配する。

 それだけは、避けたかった。


『サクヤの気配は、ずっと追っておるぞ』


「優秀だな。……【飛翔フライ】、【隠密ハイド】」


 空を飛ぶ魔法と、姿を隠す魔法を使う。

 ふわりと、体が浮き上がった。


 ……現実世界で使うのは、これが初魔法か。

 問題なく発動できる。精度も、異世界のときとまったく変わらない。


 俺は窓を開け、外へ飛び出す。

 うちの二階は子供部屋。そこから、夜の街へ。


『おおっ、なんと明るい夜じゃのう。街灯というやつか、これ。すごいのうっ』


 確かに、異世界の夜に比べれば、こっちは全然暗くない。

 街灯があるってだけで、夜の快適さが違うんだな。


 しばらく飛びながら、咲耶の気配を追っていて――ふと、違和感を覚えた。


「……なんか、ずいぶん遠くに行ってねえか?」


 家を出てすぐ、魔王が気配を察知して教えてくれた。

 それからすぐに追跡を始めたはずなのに、いまだ追いつけていない。


「相手が徒歩なら、すぐ追いついてるはずなのに……」


 って、あれ?


「なんだこれ……?」


『どうした、勇者よ』


「いや……結界魔法、か? これ……」


 目の前にあるのは、確かに結界。

 だけど、ここは現実世界だ。なんで、異世界にあったようなものが――?


『まさか、この世界にも魔法使いや聖女のような者が……?』


「いや、聞いたことないけど……。しかも、結界が雑すぎる」


 本来、結界魔法ってのは、防御とか隔離とか、特殊な封印に使う。

 けど、目の前のこれは――ペラペラすぎる。

 魔法一発で、軽く砕けるレベルの強度しかない。


『見ただけで魔法の質がわかるとは……さすが、鍛え抜かれた勇者よ』


「まあな。経験は積んでるからよ」


 それにしても、この結界。

 たぶん、外から中を“見えなくする”ためだけの魔法だ。

 ……それに、何の意味がある?


「咲耶は中にいるんだよな?」


『うむ』


 ……気になるな。何してんだあいつ。

 変なことしてなきゃいいけど。

 親父を悲しませるような真似だけは、勘弁してくれよ。


 俺は結界を通過し、中に入る。

 そこは、普通の住宅街だった。……が、すぐに気づいた。


『勇者よ、気づいたな』


「ああ。血の匂いがする……」


 嫌なにおいだ。俺は警戒を強め、静かに進む。

 そして――見た。


「……咲耶?」


 咲耶がいた。手には……刀?

 血のように赤い刀身を持った、その姿があった。


「消え失せろ! 【妖魔】め!」


「よ、妖魔……?」


 咲耶は叫びながら、刀をぶんぶん振り回している。

 ……何もない空間に向かって、だ。


「…………」


 ど、どうしよう。妹……やべーやつじゃねえかこれ。

 夜中に出歩いて、模造刀ぶん回してるとか……。


「くそ! 当たらない! どこ!? どこなの!? 妖魔め……!」


 も、もうやめてくれ……。お兄ちゃん、見てられないよ……。

 高校生にもなって、厨二病こじらせるとか……末期だろ。


『勇者よ。サクヤ……けがしてないか?』


「……あ、マジだ。頭から出血してる」


 どっかでぶつけたのか……?

 厨二病が行きすぎてケガとか……ほんと、笑えねえな。


「くそ! くそっ! 妖魔は死ね! 死ねっ!」


「あー……咲耶」


「なっ!? お、お兄ちゃん……!?」


 ……お兄ちゃん。久しぶりに呼ばれた気がするな。

 昔は呼んでくれてたけど、年が上がるにつれて呼ばなくなってたっけ。


「なんで……? 封絶界、張ってあったのに……!?」


「あー……咲耶。その……なんかハマってるアニメとか漫画あるのか?

 真似するのは自由だけど、夜中に出歩いて模造刀振り回すのはやめとけ」


「何言ってるのよ!? 危ないから出ていきなさい!」


 危ないのはどっちだよ。

 あーもう、ちゃんと血出てるじゃん。どこでぶつけたんだか……。


 と、その時だった。


『怨ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』


 ん……? なんだ?


 半透明の“何か”が、こっちへ近づいてくる。

 五メートルはある。人型っぽいが、全身から手が生えてる化け物だ。


『悪霊系の魔物じゃな』


 まじかよ。……レイスか。

 こっちの世界にもいるのかよ。


「早く逃げて! ここには危険な妖魔がいるの!」


「だから“妖魔”って何だよ……?」


「それは……」


 レイスは無数の手を咲耶に伸ばす。

 咲耶は……気づいてない?

 あんなでっかいのが目の前にいるのに……。


 まあ、いいや。


 俺は右手を前に出す。


死霊送天光ターン・アンデッド


 右手に光が集まり、魔法が発動する。

 死霊系の魔物を一発で浄化する、光属性の対アンデッド魔法。


 ズガァァァァン――!


 レイスは一瞬で霧散した。


「よっわ……」


 今の一撃で消滅とか、さすがに弱すぎる。

 もっと強いレイスなら、耐えて襲ってくるはずなんだけどな。


「!? よ、妖魔の気配が……き、消えた……?」


 ……あいたたた。

 妹、まだごっこ遊び継続中らしい。


「信じられない……。このレベルの妖魔を祓えるのは、妖刀使いだけなのに……いたっ!」


 俺は咲耶の頭を軽くはたいた。


「何するのよ!」


「帰るぞ、親不孝者。

 ったく、高校生にもなって、夜中に厨二病ごっことか……親父を悲しませるなよ」


 咲耶が俺をにらむ。


「……お兄ちゃん、何やったの?」


「何って……?」


「右手! さっき光ってた! で、妖魔の気配が一瞬で消えた! 何かしたんでしょ!」


「はいはい。そういう設定ね」


「違うってば!」


 咲耶が食いついてくる。……若干うざい。


『我が主よ。妖魔とは、おぬしがさっき倒した、あのレイスのことかの?』


「まさか。咲耶には見えてなかったんだぜ? あんな雑魚レイスが」


 向こうの世界じゃ、子供でもレイスを視認できてた。

 赤ん坊だって泣いてたくらいだ。


 咲耶が見えてなかったってことは――ただのごっこ遊びだ。


『そうかのぉ……?』


「そうだよ」


「ちょっと無視しないでよ、お兄ちゃん!」


 ……しかし、俺はまだ知らなかった。


 この世界には“妖魔”と呼ばれる化け物がいて、

 それと戦う“妖刀使い”と呼ばれる異能者たちが存在することを。


 そして――

 その“妖魔”も“妖刀使い”も、異世界の魔物たちと比べれば、とんでもなく低レベルな存在であることを。


【★☆大切なお願いがあります☆★】


少しでも、

「面白そう!」

「続きが気になる!」


と思っていただけましたら、

広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、

ポイントを入れてくださると嬉しいです!


★の数は皆さんの判断ですが、

★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、

最高の応援になります!


なにとぞ、ご協力お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
可哀想な主人公に可哀想扱いされる妹ちゃん哀れ
主人公は知能にハンディキャップ持ってる系なのかな? 普通の日本人の感覚なら妹が何か普通じゃないのと争ってるのくらい普通は理解するよね 不良をぶちのめす力加減も普通の一般常識の力加減を全くの微塵も持って…
ああ、、、 不良や偽札のあたりから感じてたけど読んでて気持ち悪いレベルで主人公の認知能力がヤバすぎる、、、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ