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03.妹がなんだか怪しい

 俺は、異世界に召喚された五年前と、同じ日付に戻ってきたらしい。

 世界扉ワールド・ドアは、本来“世界を行き来するだけ”の魔道具マジックアイテムなのだそうだ。


 異世界で五年過ごしたなら、現実でも五年が経ってる――本来なら、そうなるはずだった。

 でも、なぜかそうはならなかった。理由は不明らしい。


 ま、別に困ることもないし、それ以上は考えないでおこう。


 さて。俺は自分の家に帰ってきた。


 どこにでもあるような、二階建ての一軒家だ。


『ここが勇者の居城か……小さいな』


 魔王が脳内で話しかけてくる。いや、居城って……。

 ただの一軒家だ。うちの親は、ごく普通のサラリーマン。


『ふぅむ……一般家庭の生まれだというのに、魔王を倒すほどの魔力とは、妙なことじゃのう』


 ……言われてみれば、そうかもしれない。


 俺は他の勇者たちと違って、聖武具を持っていなかった。

 ゼロから鍛えて、五年で魔王を倒した。強くなれたのは、努力の賜物だと信じていたけど……。


 誰でも努力すれば五年で魔王を倒せるかと問われれば、ちょっと首を傾げたくなる。


 ――もしかして、俺って特別な生まれだったりして?

 ……んなわけないか。


「ただいまー」


 五年ぶりの帰還。もっと感動するかと思ってた。……でも、意外とそうでもなかったな。


「おー、悠仁くん! お帰り~」


 俺の親父、霧ヶ峰 倫太郎。

 どこにでもいる普通の父親――職業は小説家。ずっと家にいて、炊事・洗濯・家事をこなしてる。


「…………」


「悠仁くん、どうしたの?」


「あ、いや……ただいま、親父」


「うん、お帰りっ。ごはんできてるから、手ぇ洗ってきな」


「ああ」


 親父がリビングに戻っていく。その背中を見て、ようやく――

 ああ、本当に帰ってきたんだなって、実感が湧いてきた。


 学校にいたときは、なんとなくまだ現実味がなかったけど。

 親と再会したことで、ようやく帰ってきたんだと思えた。


『よかったな、親にまた会えて』


「ああ……」


 親父。前は、何も言わずにいなくなってごめん。

 今度は、もう二度とそんなことしないよ。


『む……』


 ふと、魔王が言う。


『なんじゃ……この妙な気配は……』


「妙な気配?」


『ああ。何だこれは……魔のものが放つ闘気オーラを感じるぞ……』


 魔の闘気オーラ……?


『魔王を含む魔族たちは、闘気オーラという特別なエネルギーを扱う。

 それを使えば、常人の何倍もの力を得られるのじゃ』


 へえ……。

 だから魔族って、異世界でも厄介な相手だったんだな。


 って、それが、こっちの世界に?


『わからぬ……。闘気を持っておるが、魔族ではない。魔族にしては、あまりに弱すぎるのじゃ』


「弱すぎる……?」


『うむ。近い。この家に入ってくるぞ! 気をつけるのじゃ、勇者よ!』


 がちゃり、と玄関のドアが開く。

 現れたのは――黒髪の美少女だった。


 凛とした佇まい。切れ長の瞳。腰まである長い黒髪。


「咲耶じゃねえか」


『咲耶……?』


 俺の妹。義理の、だけどな。母さんの連れ子だ。


 親父は入り婿だ。俺を生んだ母親は、けっこう早くに亡くなった。

 で、霧ヶ峰家に、親父が“嫁いだ”。俺を連れてな。


 母さんには元々、子どもがいた。それが咲耶だ。


「…………」


 咲耶は、ちらっと俺を一瞥して――何も言わず通り過ぎていった。

 ……いつも通りだ。


『なんじゃあの女。兄が挨拶しておるというのに、愛想のないやつじゃの』


「ああいうやつなんだよ。クールってやつ」


『無愛想の間違いじゃろ……。それにしても、変じゃな』


「性格が?」


『まあそれもあるが。やはり、あの女からは微弱な闘気オーラを感じる。だが、間違いなく人間じゃ』


 ……ふぅん。

 魔族しか扱えないはずの“闘気”。それを、咲耶が持っている……か。


「なんでだろう?」


『さぁのぅ……』


 ま、今は考えても仕方ないか。


「悠仁くん、どうしたの?」


「あ、いや。ごめん親父。すぐ手ぇ洗ってくる」


 俺は玄関を上がり、洗面所へと向かうのだった。



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