24.行き場のない異能美少女たちを養う
浅間の土蔵に閉じ込められていた子供達は、全部で四十八人いた。
どこぞのアイドルグループかっての……。
で、現在浅間の家には、四十八+ももか、併せて四十九人の妖術師がいることになる。かなりの大所帯だ。
場所は、浅間の家の客間。
「悠仁おにさまっ」「お兄」「兄さまぁ~♡」
……なんか知らんが、四十八人の妖術師たちから、めっちゃ懐かれていた。
俺の周りには大量の十歳児がいて、みんな俺を【兄】と呼ぶ。
「俺は君たちのお兄ちゃんじゃあないんだけど……」
「そうよ!」
クソでかボイスで否定したのは、咲耶だった。
「お兄ちゃんは、わたしのお兄ちゃんなの! おまえたちのじゃあない!」
「「「お兄ちゃーん♡」」」
しかし咲耶を無視して、幼い妖術師……否、幼児術師とでも言えばいいか。
幼児術師たちが、俺に押し寄せる。
しかもこれが、みんなけっこー可愛いのだ。
「ももかっ。止めなくて良いの!?」
咲耶がなぜだか切れ気味に、ももかに言う。
しかしももかは「え? なんで止めるの?」と首をかしげる。
「あの子たちは、アタシの家族。悠仁も将来はアタシの家族になるわけだから、別によくない?」
「なによその謎理論!?」
ほんと、それな……。
しかしももかは、この幼児術師たちを妹って呼んでいるのか。そらそうか。
ももかは十六歳、でも他の子たちは年下(十歳)だからな。
四十八人の幼児術師たちに、もみくちゃにされる俺。
子狐姿の葛葉が、ニコニコと笑っていた。
『あらあら、ゆーくんモテモテね♡』
「どうにかしてくれ……こいつらを……。落ち着いてこれからの話ができないだろ」
『それもそうね。はーい、みんな~。そろそろゆーくんを離してあげて~』
「「「はーい!」」」
幼児術師たちは、俺から離れていく。
ややあって。
「んで、これからこいつらどーすんの? この家で置いてけるわけ?」
俺はももかたちに尋ねる。
「……現状だと、難しいわね」
ももかが険しい表情で言う。ほう。
「なんでだよ。こいつらも妖術師……つまり、対妖魔の戦力だろ? 戦力は多いに越したことないんじゃあないか?」
咲耶がふるふると首を振る。
「お兄ちゃん、忘れたの? 現実世界で妖魔を倒せるのは、わたしたち妖刀使いと契約式神だけなのよ?」
あ、そういえばそっか……。
『前から思っておったんじゃが……』
と魔王が言う。
『妖刀を新しく作るのはできんのか?』
「あ、たしかに。十二本以上あったほうが、絶対良いだろ」
すると、ももかが首を横に振る。
「できないわ。妖刀を作ったのは、伝説の刀鍛冶、七福塵っていうの」
「しちふくじん……」
なんか縁起の良さそうな名前だな。
「妖刀を作れたのは、後にも先にも、その天才刀鍛冶である七福塵だけ。彼はもう、とっくに死んでるわ」
なるほど……唯一の作り手が死んだから、妖刀がこれ以上作れないってわけか。
『妖刀を装備してない妖術師は、はっきり言って非術師と同じよ』
まあ、葛葉の言うとおりだ。妖魔が見える一般人と大差ない。
「じゃあ、非術師として生きてけば?」
「……それもできません」
と、四十八人の幼児術師の中のひとりが前に出る。
丸眼鏡をかけた、真面目そうな子だ。
「どうして?」
「うちの戸籍は、ありません。ももかちゃんだけが浅間ももか、という戸籍を与えられ……他の四十八人は……この世にいない子扱いされてます」
眼鏡ちゃんがうつむきながら言う。……くそが。
戸籍のない子を集め、戦闘訓練だけさせて、使えないやつらは妖魔に喰わせて処分……だと。
「クソだな、浅間の家……」
「というより、妖術総監部が腐ってんだよ、お兄ちゃん。このやり方を……認めてるんだから」
咲耶も、そしてももかも暗い表情をしていた。二人もこのやり方をよしとしていないのだろう。
俺だって、妖術総監部のやり方は気に入らない。才能がないから妖魔に喰わせて処分とか……。
俺の大っ嫌いな、異世界の連中によく似てやがる。聖武具がないからって捨てられたよ……。
『で、どーすんじゃ、勇者よ?』
魔王は、俺に尋ねてくる。でもそれは質問って感じじゃなかった。
話を前に進めるため、振った、そんな感じがする。……俺がここから何をするのか、わかってるようだった。
「こいつらは、俺が面倒見る」
「「「「!?」」」」
幼児術師たちが驚いてる。ももかもだ。
……一方で、咲耶と葛葉は、何も言わなかった。咲耶はため息をつき、葛葉は微笑んでいる。
「「「「お兄ちゃぁん!」」」」
わっ! と四十八人の幼児たちが、俺に抱きついてきた。ぐええええ……。
美少女、美女の卵たち四十八人に囲まれる俺……。凄い良い匂いがする……。
「ぐす……うわぁああああああ! 悠仁ぃいいいいいいい!」
そいつらに混ざって、ももかが俺に抱きついてきた。
「あんたは……ほんっと良い奴だわ! まさに聖人よ! もう好きっ! 好き好き! 愛してるっ!」
「「「「お兄ちゃん大好き~~~~~~~~~~~~~!」」」」
……可愛い妹から大好きって言われるの、なんか……いいな。
「…………」
「はっ! さ、咲耶さん!?」
咲耶が冷たいまなざしで俺を見下ろしてる。
「すみませんね、可愛くない妹で……」
「いやいやいや、そんなことないから! 可愛いからおまえも!」
「……ふんだ。お兄ちゃんのばか。本物の妹はわたしだけなのに。ばかばかっ」
咲耶がそっぽ向いてしまった。ああ……義妹に嫌われてしまった……。しょっく……。
『勇者は戦闘以外ポンコツじゃのぅ』
と魔王が楽しそうに言う。うるせえやい。
「あんたが面倒見てくれるなら、安心できるわ」
とももか。
『でも……この子達の面倒を見るの、大変よ? そもそも……育てていくのに、お金がいるわけだし』
と葛葉。
「屋敷は……ここ使っていいか?」
と俺は浅間の人間であるももかたちに尋ねる。
「それはいいけど……。お金はないわよ。お父様からは、アタシの生活費くらいしか振り込まれてないし」
残り四十八人を養うほどの金はないと。
「問題ねえよ」
俺は、アイテムボックスから大量の金貨を出してみせる。
「な、なにこれ!?」
「異世界で手に入れた財宝。で、それを金に換える魔法も持ってる」
しゅんっと大量の札束が出現した。
『これ……通貨偽装じゃありませんの……?』
と帰蝶がツッコむ。
『勝手にお札を刷るのは、法律的にまずいんじゃあありませんの?』
『それは問題ないのじゃ』
と魔王が答える。
『等価交換の魔法は、お金を無から作り出してるのではないのじゃ。交換元となる財宝を通貨発行元に送り、金を発行してもらい、それが送られてくるんじゃ』
『そんな身元不明な財宝を送られてきたら、怪しむんじゃあありませんの? 国も馬鹿じゃあないんだし』
『そういう疑問を持たぬよう、発行元に暗示も同時にかける仕組みになっておるのじゃ』
『魔法ちょっと便利すぎじゃあありませんの!?』
まあ、あれだ。
「こいつがあれば、この子らを養ってけるだろ」
『でも……ゆーくん。いいの? それは……貴方の大切なお金でしょう? 見ず知らずの子らに寄付していいの?』
たしかに、異世界で苦労して手に入れた金だ。
「気にすんな。まだまだ金はあるし、使い道に困ってたところだよ。別に高い車も、時計も、服も欲しいって思わないしよ」
それよか、と俺は続ける。
「使える妖術師が増えた方が、俺にとって、妖刀使い達にとっても、絶対良いしよ」
現状、雑魚妖魔狩りにも俺や咲耶たちが出動してる。
それって俺、かなり無駄が多いと思ってるんだ。
現実世界の雑魚妖魔くらい、倒せる人材が増えた方が絶対良い。
だって活動時間、夜なんだぜ? 毎日のように夜遅くまで起きて、敵と戦いをするなんて……体壊しちまうし。生活の質も下がる。
「ぐす……お兄さま……やさしい」「神様だ……」「慈愛の神……」
幼児術師四十八の皆さんが、泣いてらっしゃる。いや神って……。
「あんたって、すごいわ。強いだけじゃあない、こんな優しい心を持ってるんだもん」
『苦労して稼いだお金を子供達の将来のために寄付するなんて……誰にもできることじゃあないわ。すごいわ、ゆーくん』
とももかと葛葉に絶賛される俺。
なんだか気恥ずかしいぜ。
何はともあれ、俺は四十八人の幼児術師達を養うことになったのだった。
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