112.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
朝の心地よい日差しが部屋に差し込み、俺はゆっくりと目を覚ました。
なんだか、やけに布団が重くて温かい。そして、すぐ隣から女の子特有の甘くていい匂いがする。シャンプーのフローラルな香りと、ほんのりとした石鹸の匂いだ。
不思議に思って隣を見ると、そこには見慣れた黒髪の美少女がすやすやと幸せそうに眠っていた。
俺のたった一人の大切な妹、咲耶だ。
長く艶やかな黒髪が真っ白なシーツに広がり、スースーと規則正しい寝息を立てている。無防備な寝顔は、天使のように可愛らしい。
「んんっ」
俺が身動きを取ると、咲耶がパチリと目を覚ました。
寝ぼけ眼をこすりながら、俺とバッチリ至近距離で目が合う。
「お、おはよう咲耶。って……お前、なんでここにいるのん?」
「ふぇ!?」
俺の言葉に、咲耶はボンッと音を立てて顔を真っ赤に染め上げた。
慌てて布団をぎゅっと胸元で抱きしめ、激しく視線を泳がせる。
「こ、これは! その……よ、妖魔の仕業よ!」
ビシッと指を突きつけてくるが、声が思い切り裏返っていた。
妖魔。それは人間のドロドロとした負の想念が具現化した、恐ろしい化け物だ。そしてそれを人知れず狩るのが妖術師であり、目の前で涙目になっている咲耶もまた、妖魔特効の力を持つ妖刀使いである。
「まじか」
俺はガバッと勢いよく起き上がり、周囲を鋭く警戒した。
異世界で数々の修羅場を潜り抜けてきた俺の感知能力は、並の妖術師を遥かに凌駕する。その俺の感知を完全にすり抜けて、妹を俺のベッドに転送した(と勘違いしている)妖魔がいるというのか。
「俺の感知を完全にすり抜けるなんて、相当すごい敵なんだわ。なるほど……」
部屋の隅々まで魔力視で探るが、怪しい気配は微塵もない。
「くっ、安心しろ咲耶! どんな強敵だろうと、お兄ちゃんが絶対に守ってやるからな!」
俺が妹の肩をガシッと掴み、力強く頼もしく宣言する。
すると、咲耶はなぜだかひどく気まずそうにスッと目を逸らした。
「あ、う、うん。そ、そうね。お兄ちゃんが守ってくれるなら、安心……かな……」
もごもごと口籠もる妹。
すると、俺の脳内に直接、呆れ果てたような声が響き渡る。声の主は、俺の中に同居している強大な魔王だ。
『主よ。あの小娘、また見え透いた嘘をついておるぞ』
魔王の呆れ声に、俺は素で首を傾げた。
「なに、嘘? なんで咲耶がそんな嘘をつくんだ?」
俺が無意識に口に出して尋ねると、咲耶の顔がみるみるうちに沸騰したように赤く染まっていった。
「ひゃわわっ!? な、なんでもないわよ!」
ぷくーっと可愛らしく頬を最大限に膨らませて、ジト目で俺を睨みつけてくる。
「う、ううううるさいっ! お兄ちゃんのわからずや! 朴念仁! もう知らないっ!」
咲耶はドタバタと大きな足音を立てて、勢いよく部屋から駆け出していってしまった。
パタンッ、と乱暴に扉が閉まる音が虚しく響く。
「なんなん? 突然キレて出ていったぞ。やっぱり妖魔の精神攻撃か?」
『主よ。貴様には本当に、人の心がないのう』
脳内の魔王から、呆れと憐れみが入り混じった、ひたすらに生温かい声が降ってきた。
なんだって言うんだ。俺は真剣に妹の心配をしているだけなのに。
腑に落ちないまま着替えを済ませ、リビングへと向かう。
扉を開けると、朝から賑やかな光景が広がっていた。
「ゆーじ! 遅いわよ! 早くあたしに一発やらせなさい!」
リビングに入るなり、ももかがズカズカと歩み寄ってきて、ビシッと人差し指を突きつけてきた。
相変わらずのツンデレ全開、しかし言っている内容が完全にアウトである。幼い頃から山奥で修行漬けだった幼卒の彼女は、致命的なまでに性知識が欠如しており、ガルコミの知識を完全に勘違いしているのだ。
「朝から何言ってんだお前は……」
「あらあら。ももか、朝から随分と情熱的ねぇ。でも、そういうのは夜までお預けよ?」
ももかの背後で、式神の子狐である葛葉がくすくすと上品に笑っている。
その言葉に、ももかの顔がボンッと音を立てて真っ赤になった。
「な、なによ! あたしはただ、ゆーじと既成事実を作って……!」
「はいはい、おはようももか、葛葉。朝ごはんにしようぜ」
俺は尻尾をパタパタ振るような勢いのももかを華麗にスルーし、ダイニングテーブルへと向かう。
そこには、エプロン姿の玉姫が朝食の準備をしてくれていた。
「おはようございます、悠二さん。ふふっ、朝から元気ですね」
玉姫がふんわりとした優しい笑顔を向けてくる。
テーブルには、焼き魚に卵焼き、お味噌汁といった完璧な和朝食が並べられていた。
そこに、先ほど俺の部屋から飛び出していった咲耶が、顔を洗って少し落ち着いた様子で戻ってきた。
「……お兄ちゃん、おはよう」
「おう、おはよう咲耶。妖魔の気配はもうないか?」
「っ! も、もう大丈夫よ! それより早くご飯食べましょ!」
咲耶はあからさまに目を泳がせながら、そそくさと席についた。
全員が席につき、「いただきます」と手を合わせる。玉姫の作る朝食は、相変わらず絶品だ。異世界の高級料理にも引けを取らない。
俺はこの平和で温かい日常がたまらなく好きだった。
だが、この平穏を脅かす存在がいる。
「……いよいよ、三日後ですね」
玉姫が、お茶を啜りながら静かに口を開いた。
その言葉に、食卓の空気がピリッと引き締まる。
三日後。それは俺たちが、敵の本拠地である『関西妖術総監部』へ乗り込む日だ。
先日開かれた妖刀集会で、俺たちは突如として何者かの襲撃を受けた。その襲撃を裏で糸を引いていたのは、他でもない総監部の関西支部だったのだ。
「ああ。あいつら、許さねえ」
ももかが箸を置き、ギリッと歯を食いしばる。
「あたしたちを罠に嵌めた落とし前、きっちりつけさせてやるわ」
「お兄ちゃんも、一緒に来てくれるんでしょ?」
咲耶も真剣な眼差しで、こちらを見つめてコクリと頷いた。
「当然だ。俺の大切な妹と、その仲間を理不尽に脅かす奴らだ。根こそぎぶっ潰す」
俺が静かに、しかし確かな怒りを込めて言うと、三人の顔にパッと安堵と信頼の笑みが浮かんだ。
敵の本拠地、大阪。当然、凶悪な罠が張り巡らされているだろうし、どんな強敵が待ち構えているかもわからない。
だが、俺は霧ヶ峰悠二。異世界で世界を救った『勇者』であり、今は内に『魔王』を宿す最強の存在だ。命を懸けて守るべきものができた今、絶対に負けるわけにはいかない。
「どんな理不尽が待っていようと、俺が全部ぶっ壊してやる。お前たちは俺の後ろで安心して見ていればいい」
「ゆーじ……っ」
「お兄ちゃん……!」
「悠二さん……」
三人の熱を帯びた視線が、俺に一斉に突き刺さる。
この温かくて普通な日常が、ずっと続けばいい。俺の願いは、ただそれだけだ。そのために、立ちはだかる敵は全て圧倒的な力でねじ伏せる。
「さあ、しっかり食べて力をつけようぜ。大阪で美味いお好み焼きでも食うためにさ」
俺の言葉に、重かった空気がふっと緩んだ。
「もう! ゆーじったら呑気なんだから!」
「でも、お兄ちゃんらしいわね」
「ええ、とても頼もしいです」
リビングに、再び賑やかな笑い声が響き渡る。
決戦は三日後。俺は静かに闘志を燃やしながら、絶品の卵焼きを口に運んだ。
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