11.勇者のおかげでレベルアップする妹
咲耶に引きずられ、俺は学校の屋上へとやってきた。
俺たちの通う高校は、屋上が誰にでも開放されている。
……まあ、授業中だから、誰も入ってこないだろうけど。
「で、なんだよ、咲耶」
「え……?」
「えって……なんだよ。話したいことがあるから呼び出したんじゃないのか?」
なんで目を丸くしてるんだ……?
「え、いや……えっと……話そうとしただけ……」
「何を話そうとしてたんだ?」
咲耶は頭をがしがしかいて、はぁ……とため息をついた。
「……じゃあ、お兄ちゃんがさっき滅した妖魔について」
「アイラに憑いていたやつか?」
「うん……。あれ、どうやって倒したの?」
あれ、俺が何したのか、わかってなかったのか。
「普通に魔法でワンパンしただけだぞ。風の魔法、風刃ってやつでさ」
「…………」
咲耶がその場にしゃがみ込んでしまった。
「ど、どうした……?」
「……お兄ちゃん、自分がどれだけ凄いことしてるのかわかってないでしょ」
「凄い? なにが……?」
「妖刀使いに見えない妖魔って時点で、かなり位の高い妖魔なの。位が高くなるほど、妖術師にも見えづらくなる」
前にラジオのたとえで、そんなこと言ってたな。
「じゃあ、そういう妖魔って、おまえたち倒せなくないか? 視認できないんだから」
「そう。だから式神がいるの」
「……式神が?」
『ううぅうう……』
帰蝶の声がする。だが、姿が見えない。
『面目次第もないですわ……。まさか、わたくしでも見えない相手がいるなんて……』
「妖刀使いでも式神でも見えない妖魔だったってことか」
「そういうこと。それを、お兄ちゃんはワンパンしたの」
そうやって聞くと、なんか凄いことしたみたいに聞こえるな。
「……ごめんね、お兄ちゃん」
咲耶が俺に深々と頭を下げる。
「なんで謝ってんだよ?」
「……妖魔を滅するのは妖刀使いの仕事なのに、お兄ちゃんに任せちゃって」
「あ、そんなこと気にしてんのか。言ったじゃん、俺おまえを手伝うって。だから……気にすんなって」
俺は咲耶のサラサラの黒髪をなでる。
咲耶はほおを赤く染め、「……子供扱いしないでよ」とつぶやく。
「おお、悪いな」
ぱっと手を離そうとする。
「……別に離してって言ってないけど」
「そ、そう……?」
わからん……お兄ちゃん、妹の気持ちがわからん。
あれ? こういうとき、帰蝶が突っかかってくると思ったが……。
『わたくし……式神失格ですの……』
帰蝶が沈んだ声で言う。
『おねえさまの目となり助けるのが式神の使命なのに……わたくし、なにもできてない……』
「なんとかしてやれないかな?」
見えない妖魔がいるって時点で、だいぶやばい気がする。
「なあ、どうして俺は、咲耶や帰蝶が見えない妖魔を見えると思う? 魔王」
『思うに、レベルが足りないからじゃないか。我や勇者は普通に、さっきの妖魔も見えておったぞ』
レベル……。俺と魔王、咲耶と帰蝶。この二組の違いは、レベルの高さか。
「そういや、咲耶たちってレベルいくつなんだ? 【鑑定】」
~~~~~~
【名前】霧ヶ峰 咲耶
【種族】人間
【レベル】1
~~~~~~
~~~~~~
【名前】帰蝶
【種族】下級精霊
【レベル】10
~~~~~~
うーん……弱い。帰蝶もレベル二桁しかないとは……。
「どうだった?」
「とんでもない雑魚だった」
「『ふぐぅう……』」
『異能力者とパートナーが、ここまで低レベルとはのぅ。サクヤじゃ、スライムにも苦戦するぞ』
「レベルを上げるにはモンスターを倒すのが早いよな? なら妖魔を倒せばいいんじゃね?」
『いや、我はそう思わない』
「どゆこと?」
『おぬしは昨日今日と妖魔を倒しておるが、レベルは変わらん。一方、サクヤは長く妖刀使いをやってるのに、レベルは1のままじゃ』
「妖魔がモンスターなら、咲耶がレベル1なのはおかしいってことか」
『そのとおり。思うに、妖魔はいくら倒してもレベルアップしないのじゃろう』
うーん……妖魔を倒しても異能者は強くなれないってことか。不憫だな。
「……ん? 魔物を倒せばレベル上がるんじゃね?」
「魔物なんて、どこに居るの?」
俺はアイテムボックスから姿見を取り出す。
人間大の鏡が、俺たちの前に現れる。
「こ、これ……なに?」
「世界扉っていう、向こうとこっちを行き来できる魔道具だよ」
魔王の所有物だ。修復で治して、行き来できるようにした。……まあ、もう異世界に行く気はないが。
「この魔道具を使えば、異世界の魔物がいる場所と、こことをつなげられる」
鏡にスライムが映る。俺は手を突っ込んで、スライムをわしづかみにして引き寄せる。
「よっと、成功」
「ぴぎっ!」
~~~~~~
【名前】スライム
【種族】魔物
【レベル】1
~~~~~~
「よし、じゃ咲耶。こいつ倒せ」
「た、倒せって……ぐにょぐにょで……キモいんだけど……」
「大丈夫、倒してみ?」
「う、うん……」
咲耶が妖刀を取り出し――。
「血刀【桜】……一の型、血湧肉躍」
ふぃいん……! と体が赤く染まる。
身体強化状態で、スライムに斬りかかる。
「でやぁ……!」
だが……。
ぱぃんっ……。
「あっ!」
スライムのぷるぷるボディにはじかれ、尻餅をつく。
「しゃーない。身体強化」
俺は身体強化をかける。
咲耶の体が輝いた。
「か、体が軽い……羽のようだわ……!」
「俺の魔法で体を強化した。それでやってみ」
「うん!」
「せやぁ……!」
ズバアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
屋上の床が粉砕。スライムは木っ端みじん、フェンスも消えていた。
~~~~~~
【名前】霧ヶ峰 咲耶
【種族】人間
【レベル】2
~~~~~~
「お、レベル上がってるぞ」
「な、な、なによこれ?! なんなのこの威力!?」
「身体強化の効果だな。弱かったか? もっと強くかけられるけど……」
「『強すぎるのよ……!』」
俺は修復で屋上を直す。
「で、レベル上がったみたいだな。何か変化あるか?」
「一の型……使える回数が増えた。今まで1日2回までだったのに」
今朝アイラを助けるときに一度使い、今一度使ったから、本来ならもう使えないはずだが……まだ使えるらしい。
「すごいわ……お兄ちゃん……。わたしたち妖術師はいくら妖魔を倒しても強くなれない。だから才能がすべてって言われてる。でも……お兄ちゃんのやり方なら、才能関係なしに強くなれる……」
『世界扉の所有者は勇者だけじゃ。つまり、妖術師を強くできるのは、現状、勇者だけってことじゃの。さすがじゃ』
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