表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載】チャラ男オタクvs薄い世界  作者: 福郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/16

薄い世界の神に愛されしチャラ男

日間ローファン5位ありがとうございます!

 横山流道場という知る人ぞ知る修練場が存在する。


 道場の主、武芸百般を体現した横山三蔵という男は裏の武術界で武名が轟いており、護衛任務を務める人材や、あまり表にすることが出来ない作戦に従事する者が門下生に名を連ねている。


 つまり若干世界観を間違えている様な場所、それが横山流道場なのだが、一人だけ超問題児が在籍していた。


 初老ながらも筋骨隆々で、短い髪は黒々としている巌のような横山の眉がピクリと動いた。高度な殺人術を習得している門下生に至っては、露骨に動きを止める。


「せんせー。戻りましたよー」


「うむ。ご苦労」


 門下生の職業上、口数が少なくあまり目立つ格好をしない者が多い中、異端も異端の巨漢を横山が労う。


(手に負えないかもしれないとは思ったが……)


 ネックレス、ピアス、指輪は当たり前。髪はどぎつい金髪で肌を焼いている男、相沢太一と初めて出会った時を横山はよく覚えている。


 太一の祖父の紹介でやって来た、まだ十代前半だった頃の彼を見た横山は、その底知れぬ才能に戦慄したことがある。


 様々な天才鬼才の類と相対しながら、その全てに勝利してきた横山をして、今まで出会った中で一番恐ろしかった人物はと問われたなら、自分の半分も生きていない太一の名を挙げるだろう。


 まさに天に愛されたとしか表現できない、単に才能の一点だけで他を圧倒する男は、肉体からして常軌を逸している。


 筋肉の大きさだけで競う競技なら他に幾らでも上回る人間はいるだろうが、世の万人全てが完璧だと評する絶妙な黄金比で構成されている肉体は、国宝級のギリシャ彫刻にだって負けていない。


 それこそ、ギリシャの英雄ヘラクレスはこのような男だったのではないかと思わせるような、首回りからふくらはぎまでこれが最適な筋肉量だと断言できる肉体美は、きちんとしたものが見れば絶句するだろう。


 ミケランジェロやレオナルドダヴィンチが現代にいれば、君をモデルに作品を作りたいと熱心に口説かれる男。それが相沢太一である。


 実際、見慣れている横山ですらここまで完璧な肉の付け方が出来るのかと首を傾げたことがあり、太一が鍛えてたら勝手にこんな体になると言った時は呆れ果てていた。最早努力という言葉では及ばない領域の話になっているのだ。


(しかし、たかが包丁を持った素人との実戦でこうも化けるか?)


 そんな全人類に肉体美を誇示できる男は、横山の想像を更に超えていた。


 ナイフ。下手をすれば拳銃を持った人間と相対した経験のある門下生よりも強かった男が、包丁を持った素人との実戦を経て、更に大きく見えるようになったのだから、横山の見立てが甘いというより太一がおかしいのだ。


「ところでなんですけど、あと五年後。出来ればそれ以内を目安に看板を貰おうかなあと」


「小僧め」


 突然の太一の発言に門下生はぎょっとして固まったが、横山は小僧とだけ言い捨て、増長したかなどとは言わなかった。


 子も明確な後継者もいない横山は、看板が風雨で朽ちるよりも自分より強い道場破りに譲った方がマシだと考えていた。


 つまり太一の発言は、横山が衰えきって動けなくなる前に、師への恩返しをするという意味であり、色々と世界観を間違えているものだ。


(ほとほと手を焼かしてくれた馬鹿弟子め)


 そんな師匠愛に溢れている弟子だが、当の師匠はほんの少しだけ苦情を言いたかった。


 復讐や使命。力への渇望。そういった類を目標にしているのなら分かりやすい部類だし、実力も伸びることが多い。


 しかしである。


(強いと格好いいよね。でそこまで鍛える奴があるか)


 軽すぎる理由で最強に手が届きかけている男に、横山は苦笑するしかなかった。


 一方、太一もこの道場で言いたいことがあった。


(いい人ばっかりなんだけど雰囲気が怖い……)


 ジムでも似たような感想を持っていた男だが、この道場はその比ではない。


 門下生の道着の下を見れば、ナイフのものと思わしき傷があるのはまだマシ。人によっては明らかに銃創と思わしき傷まであるのだから、一応民間人である太一には刺激が強すぎる場所だった。


 なお似たようなことを述べるが、門下生が一番ヤバい体の持ち主はと聞かれたなら、相沢太一の名を挙げるだろう。


(強いとかっこいいし、必殺技とかも欲しいよなー。とか思ってたらなんか凄いことになっちゃったぞ)


 子供の夢と言うべきか。


 アニメや漫画の派手な必殺技に憧れていたお年頃の太一君は、本当に言葉通りの必ず殺す技を仕込まれてしまい、立派な人間兵器状態だった。


 これでは常人を間合いに入れた瞬間に生殺与奪権を握っている様なもので、逃走や抵抗を許さず支配できるに違いない。


 いくらそれらがチャラ男にとって必須の技術とは言え、太一の場合はやり過ぎである。なにせ下級チャラ男でも壁ドンをすれば乙女を閉じ込められるのに、最上級チャラ男に至った太一がそんなことをすれば、下手をすれば壁が崩れるだろう。


(まあそれはいいか。今日も頑張って女神箱の時間には間に合わせないと)


 薄い世界において最高の肉体と才能を約束されている存在。それがチャラ男であった。

皆様の応援がモチベーションに繋がります!もし面白いと思ってくださったら、ブックマーク、下の☆で評価していただけると作者が泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>ヘラクレスが実在したらこんな感じやろ …もしかして太一くん、範○勇次郎の隣に並べても見劣りしない恵体しちゃってる?
ファッションチャラ男しつつ修羅の門に出てきそうなキャラしてるのバグってるし、 短編時に「ちゃんと人間やってる」的な感想書いたのは取り消そうかなって気になりました
格闘剣術……アルベイン流って事? やはり筋肉、筋肉は裏切らない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ