第204話 見通す瞳
お待たせ致しましたー
「あ、ここです」
到着した場所は、住宅街でも少し大きめのマンション。エレベーターもあるところでした。藍羅さんはその三階にご家族と住んでいらっしゃるそうです。
「あ、そうだ。翠羽」
国綱さんに呼ばれましたので、私はお家を出る前に持っててと渡された紙袋を差し出しました。
国綱さんにではなく、藍羅さんにです。
「え?」
「翠羽と今日一日遊んでくれたし、いただきもので悪いけど、お菓子なんだ。ご家族と食べて」
「い、いいんですか!?」
「はい。大丈夫ですよ」
気遣いMAXの国綱さんですから、このようなお手土産をご用意されるのも流石です。
藍羅さんの手に紙袋を持たせますと、彼女はつぶさないように抱えてくださいました。
「……じゃあ。次は、うちに来てください。そちらよりめちゃくちゃ狭いですけど」
「是非!」
「ありがとう」
翠羽さんは車を降りて、軽くお辞儀をしてからマンションに行ってしまいました。遅い時間ですし、お互い話し込んでいたら明日のリモート授業に差し支えてしまいますからね。
私が助手席に移動するくらいに、お家に着いたのかLIMEのメッセージに『おやすみ』が届いてきました。
「……楽しかったです」
国綱さんが車を発進させてから、私はつぶやきました。国綱さんは空いている手で、私の髪をぽんぽんと撫でてくださいます。
「いいことだよ。君に友達が出来るのは」
「……国綱さんはいいんですか?」
むーちゃんさんもですが、琥珀さん達はお母さんが与えた仮初の命だった存在。とても仲が良かったですのに、私達のために消えてしまったのですから。
国綱さんの横顔を見ると、苦笑いされていました。
「僕には翠羽がいる。けど、まあ……乃亜さん達もいるし、大丈夫だよ」
「……お友達でないのでは?」
「はは。大丈夫だよ、一人じゃないのなら」
「……はい」
お互い唯一だけ……と言う生活は寂しいわけではないですが。
異能の宿主同士、これからも一緒に居たいですし、楽しいことも知っていきたいです。今日のように、藍羅さんと過ごした時間を国綱さんとももっと増やしていきたい。
国綱さんの、蘇芳の瞳は……私の中の時蟲を見通しているのでしょうか、とても穏やかでした。
次回はまた明日〜
明日で最終回




