第172話 底の底
お待たせ致しましたー
どこに。
どこに?
何処に……。
何処へ?
俺は……何処へ行こうとしているのだろうか?
暗い。
暗い……昏い。
底の底。
ここは地の底??
いいや……違うだろう。
俺の『存在』として成り立っていたのは、冥府でも何処でもない。
怨嗟。
魑魅魍魎。
跋扈していた、怨念の塊。
それが……還っただけか?
にしては、幾らか明るい場所ではあるのだが。
【……返しなさい。あの子の記憶を】
呼ばれた……何かに。
何かの存在か?
ひどく……懐かしい響きを感じた。
奪うばかりの俺が……返せと?
出来るのか? そんなことが。
だが、もう存在としての意味がない俺には……持っていても意味がない。
自然とそう感じて……手足はないが、魂だけの今、その意識を向けてみた。
【……還れ】
あいつに。
あの小娘に。
俺が手に入れようとしていた、時蟲らの一部と身体をバラした記憶を。
普通なら辛いものでしかないが。
俺に立ち向かおうとした、あいつなら……大丈夫だろう。
今更善人ぶる気はないが……そんな気がしたのだ。
力と記憶は、金の光となり浮かんでいった。
次回はまた明日〜




