第130話 来ないあの子
お待たせ致しましたー
あの子が、学校に来なくなって……どれくらい経つんだろう?
空席が嫌に目立つ気がしたのは、私だけじゃないと思うんだよね。
(……今日も、か)
担任はホームルームでも特に何も言わずに出欠の確認を取るだけ。あの子のところになると、出欠簿にチェックを入れていただけだった。
病欠……らしいけど、入院なのかな?
怪我とか病気にしても、いきなりだったからびっくりした覚えはある。いや、そう言うのって緊急事態だから……いきなりかな?
けど、入院期間って普通どれくらいなんだろう? したことないから、だいたいの平均ってよく知らないし。
あの子……翠羽さんは目立つ子だった。
見た目もだけど、誰にも笑顔で嫌な顔ひとつしないって表現が当てはまるくらい、良い子で。私なんかのモブ子にも、普通に話しかけてくるくらい優しいクラスメイトだった。
友達? って言うのには、微妙な距離だったけど……私は好きだった。一方的かもしんないけど、獣人族では平凡な顔でしかない私にも、優しく接してくれるんだもん。女としても好ましく思ってた。
だから担任からある日、『しばらくお休みされるそうです』って言われた時にはガッカリ以上に、『ガーン』って気持ちになったもん。あんまり話せていなかったけど、翠羽さんは居るだけでも教室内を清浄化させてくれるような存在でもあったから。
(お見舞い行くべき? けど、連絡交換してないや)
今時校内でスマホ厳禁とかあるけど、別に授業中は電源切っておけば大丈夫。緊急連絡用とかには必要だもの。とは言え、翠羽さんとはちょこっと親しくなった以外何もしていない。
学校外で遊びに行ったことも、特にないクラスメイト。だから、交換したら迷惑……と勝手に思っていたけど、今はひどく後悔している。
もう二ヶ月以上も学校に来ていないから……やっぱり心配だった。
学校行事とかも、色々進んでいく時期なのに。翠羽さんがいないのが寂しい。私の鍵尻尾もしゅんと垂れていく。小さいから他から見てわかりにくいだろうけど。
『手を貸してやろうか?』
次の授業の準備をしている時に、変な男の声が聞こえてきたけど……なんとなく怖くて無視したわ。
次回はまた明日〜




