第124話 透明人間の考察
お待たせ致しましたー
翠羽さんが戻られた。
身体も記憶も。
ですが、それは犠牲を出してからの結果でした。
彼らの友人を……二人も失ってしまったのです。そのご友人も、先代の時蟲の宿主でいらっしゃった……紅羽さんの導きでした。
万が一、娘の翠羽さんに何か起きた時の保険。
ご自身の命をかけても……護りたい娘のことはわかりますが。
では、何故。
娘を優先しても、己の命を失うのを防がなかったのでしょう?
私には、その意図が読めませんでした。あの活発でいらした彼女の意図がわかりません。
身体を奪われても、幽体させて……許嫁のところへ導いたこと。その意味が……時蟲継承とどのように繋がるのでしょう?
紅羽さん達が亡くなる……殺されたあの事故を防ぐくらい、紅羽さんだったら簡単だったのでは? 何故、それをしなかったのでしょうか?
矛盾が多過ぎます。
私は自分のデスクでじっと考え、自販機で買ってきた甘味の強いカフェモカには手を伸ばしませんでした。
「……課長。大丈夫ですか?」
ずっと考えていますと、螺子君が声をかけてきました。手には書類の束が。私の目を通さなくてはいけないものばかりですね。
「……いえいえ。大丈夫ですよ」
「課長は透明人間ですが、難しい雰囲気は伝わってきました」
「……彼らのことです」
「私もわかります。色々あり過ぎたところに……また問題が起きましたしね」
「……穏やかに過ごせませんね」
「……そうですね」
国綱さんは学業も優秀でしたのに、何でも屋を引き継ぐと大学に行かれませんでしたから……勿体無いことです。
すべては、翠羽さんの為でしょうが。
翠羽さんに起きたことで、色々変わってしまいましたから……これから、また気を引き締めて私達も彼らに協力しましょう。
冷めたカフェモカをひと口飲むと、甘い液体がひどくぬるく感じましたね。そして飲み終えたあたりで、国綱さんからメールが届きました。
次回はまた明日〜




