第123話 いつも優しい
お待たせ致しましたー
国綱さんは、私の前に立ってからゆっくりとしゃがみました。手を私の頭に置くと、そろそろと撫でてくださいます。
「自分で頑張ろうとした?」
私にしようとしていたことはお見通しだったようです。
頷くと、国綱さんはもっと頭を撫でてくださいます。
「……焦るのはわかるよ。けど、急ぎ過ぎてもいけない」
僕と同じように。そうおっしゃいますと、国綱さんは少し苦笑いになられました。
「……国綱さんも?」
「うん。君が行方不明になった時は、そりゃもうね? 子供のように泣きじゃくって……探して探して、見つけた時は幽体化した君の時だった」
「……あの時」
記憶のほとんど身体を失っていたあの時。
落ち着いていらっしゃるように見えましたが……実際は違ったのですね。国綱さんに、辛い思いをさせてしまったのでしょう。きゅっと、手を握ると……国綱さんはまだ頭を撫でてくださいます。
「でも、結果こうして……翠羽が帰って来てくれた。僕は嬉しいよ」
「……お役に立てるかどうか」
「その気持ちはわかるよ。けど……僕は、君が大事だ」
心に染みる言葉を……記憶がない時でも、くださいました。
こんな……こんな幸せでいいのでしょうか?
役に立っているようでいない……半端者の異能の持ち主なのに。
ただただ……幸せでいていいのかわからない。
ですが、私もこの方からもう離れたくはありません。
国綱さんにぎゅっと抱きつくと、彼は抱き返してくださいました。
「……学校、行った方がいいでしょうか?」
「世間的にはね? けど……君の時蟲の勘が冴えているなら、無理にとは言わない」
乃亜さんにまた聞いてみよう。
それを決めて、今日は髪をきちんと乾かしてから……二人で同じ布団で寝ました。
次回はまた明日〜




