ミニ挿話 師弟の夜なべ仕事
ジェスロのとある一軒家は
毎晩遅くまで灯りが点いている。
青い髪と赤い髪の師弟が夜な夜な何やら作業をしているのだ。
「ねぇ、ツェリーちゃんってどんな子?」
師匠と呼ばれている方の青い髪のイグリードが、テーブルに向かい合って熱心に何かをしている赤い髪の弟子、アルトに尋ねた。
「……ツェリシアですが。なんですか急に」
アルトは手を止める事もなく、目線を師匠イグリードに向ける事もなく言った。
「なんとなく☆だって青春時代を投げ打ってまで救いたい子ってどんな女の子なんだろうって思ってさ」
「べつに、ただの普通にカワイイ、元気で面白くて誰にでも優しく、結構頭も良くて艶々ふわふわの黒髪が綺麗なめちゃくちゃ良い子ですよ」
「ベタ褒めじゃん☆」
「ホラ師匠、手が止まってますよ。集中して下さい、集中」
「え~~……」
アルトに指摘され、作業に戻るように言われたイグリードがテーブルに突っ伏した。
「もう~毎晩毎晩イヤだよ~!もう結構貯まったからイイんじゃない?」
「何言ってるんですか、あなたが最初に提案してくれたんでしょう。まだまだ全然足りませんよホラ出し惜しみしないで今日の分を出しまくって下さい」
「だって今日は疲れてるんだもん。ねぇもう早く寝たいんだけど」
「いや師匠、あんた寝ない人でしょう。ふざけた事言ってないで頑張って下さい」
「イヤだ!今日はもう出ない!!これ以上何も出ない!!押したって、振ったって、搾り取ったってもう魔力なんて出て来ないよっ!!」
イグリードが座っていた椅子から立ち上がって地団駄を踏む。
どうやら何かの為に魔力を出しているらしい。
それがもう嫌だと駄々を捏ねているのだ。
弟子が冷静な目で師匠を見遣る。
そして宥めるように告げた。
「そこまで言うのなら無理にとは言いません。今日は終わりにしましょうか。でもその前に師匠、ちょっとその場でジャンプしてみて下さい」
「ん?こう?」
600年も生きてるとは思えない素直さで、大賢者がジャンプをした。
チャリンチャリン……
「まだ出んじゃねぇかっ、ったく出し惜しみしてんじゃねぇ。オラとっとと魔力を出しやがれ」
「ヒィッ!!魔力のカツアゲ!!
言っとくけど今のチャリンチャリンはポケットの小銭の音だからね!そんな異世界のショーワ時代のカツアゲの仕方なんてどこで覚えたのさっ!」
「つべこべ言ってないで有り金……じゃない、有り魔力を全部出して下さい」
「ヒィィィ弟子がカツアゲするぅぅ!!」
こういうやり取りがほぼ毎晩、繰り広げられているという。
師弟が毎晩しているこの作業。
これが陽の目を見て功を奏するのはこれよりまだ先、数年後の事である。




