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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第六話

20時に予約投稿です。金曜日なので検証としては不十分ですが

 朝だ。大変気持ちのいい朝だ。この地は朝でもなかなかに暑く。雲は少ない。というかない。

 太陽の光が目に入ると体が起きて活動を始める。脳はまだ寝ぼけているが、しばらくすればぼやけた目も安定し、すべてがクリアに見えるだろう。

 昨日の戦いによって消費したエネルギーもほぼ回復しきり、体調も悪くない。

 自分の体調を確認していると、隣でごそごそと音がする。


「おはようジダオ、気分はどうだ? ガス欠とかになってはいないか?」


「問題はないさ。どうやら力を使い切っても、数時間睡眠をとればほぼ完全に回復するようだ。どころか、以前よりも大量の力を使えるようになった。今まで上限だと思っていたところは、実は上限ではなかった。力を使うための出力装置が貧弱だっただけだ」

 

 なるほど、確かに俺も以前より力を大量に使えるようになった気がする。

 出力装置が強化された、ということか。


「力を使い切った際の検証もある程度データが取れた。

 一つ目に、力を使い切ると出力が強化され、使える力の上限が増える。

 二つ目に、力を使い切っても多少疲れが来るだけで身体機能に特に異常はない。

 三つ目に、力を使い切る寸前にそれまでの能力を大きく上回るパワーを出せる。

 最後に、起きた時が最高に気持ちいい」


 こいつ、あれだけムキになって力を使い切ったのはそのためか。ジダオが最後にエネルギーを送った時の出力は、最初の氷弾をはるかに上回っていた。


 ジダオだって、最初の発射で決着がつくならその方がよかったはずだ。もし最初の時点であれが使えていたら、俺の鎧も一撃で粉砕されていた。だが結局あれが使えたのは最後の最後である。

 あと、力を使いまくった後に寝ると最高に気持ちがいいのは同意する。

 今日も寝起きは最高だった。


「これからしばらくは南を目指して進むぞ。昨日の跳躍で相当東に移動したからな」


 いきなり方針の話か。寝起きに難しい話いきなりされてまだ脳が起きてないんだが。


「それはいいけど、その前に朝ご飯な」


「朝ご飯? そんなものの用意はしてないが、俺が寝ている間に用意を?」


「俺も寝起きだっての。朝ご飯ならその辺に転がってるだろ」


 そう言って俺は背後を指さす。

 見るとそこにはアフリカにいるとは思えないほどの凍て地が広がっていた。低い草は凍り付いて崩れ落ち、遠くでこちらの様子をうかがっていた動物が氷の彫像になっていた。

 あれは、鹿かなんかか?


「おい、あれなら食えそうだぞ。昨日のライオンよりはるかにうまいだろ」


「鹿肉か。確かにうまそうだ」


 俺は早速鹿の死骸を分解する。ただ単に凍っているどころか体感-70℃程度まで冷やされていた。

 まずは形が崩壊しないよう、慎重に解凍していく必要があるな。流石に肉みたいな粉を食べる気にはなれない。


「すぐに飯にするからちょっと待ってろ!」






 鹿肉を堪能した俺たちは早朝から南を目指して歩き始めていた。


「なあジダオ、この先に何があるのかわかってるのか?」


「でかい川か池があるはずだ。水と草のにおいがする。見ろ、朝飯を食っていたところよりも草が多いし、高いだろ」


 言われてよく見てみると確かに草が多い。さっきのところよりも動物や虫が多そうだ。


「なるほど、水場の近くは人がいる可能性が高い、ということか。だが、人じゃなくて肉食獣や凶暴な野生動物が支配しているかもしれないぞ」


「それはそうなんだがな、何のヒントもなしに歩くよりは良いだろ。敵と勝ちあう前に情報を集める必要があるんだから。こっちがハズレなら直で奴のもとに向かうさ」


 木とか高い草とかだいぶ景色が変わってきたし、動物も増えてきたから向こうから吹っ掛けてきそうなものだが、向こうさんだいぶビビッてやがるな。俺たちから気配かなんか出てるんか?


「気づいてるかチャンクー? 何か来るぞ」


「ああ、確実に動物じゃねえ。生まれた時から感じてた気配だ。向こうさんから来てくれるとはな。消し炭にしてやるぜ」


 今日の俺は気分がいい。朝から最高の目覚め、うまい朝食。さらに強い奴が向こうからやってきた。最高の気分だ。


「さあ来い!」


 砂埃を巻き上げ、軽い音が響いてくる。大きいが、重量はないのか? だがとんでもない速さだ。

 なんだありゃ? 砂埃……じゃねえ! とんでもない数のバッタだ!


 先頭には人型サイズのバッタを無理やり立たせて人のまねごとをしているみたいな歪な姿をした奴が走っている。二本の足と四本の手をテキトウにわしゃわしゃさせている。だがやはり速い。


「相手はバッタの群れか。俺の力で燃やし尽くすか。リーダー格の奴はお前に譲ってやる」


「あんがとさん。野生動物よりは強そうだが、拍子抜けだな。こいつが俺らの敵か?」


 先頭の人型バッタが右手の一本を挙げると、飛んでいたバッタたちは一斉に進行をやめる。


「オレハ、蝗魔王サマノ眷属ガ一体。貴様ラノ情報ヲ集メルタメニ来タ。ダガ、蝗魔王サマニハ、ソノママ殺シテシマッテモイイト言ワレテイル」


 !!?? こいつ、虫のくせに知能があるのか!? 頭部は全然原始的な虫だし、手も物はつかめそうだがそれを加工できるほど器用だとは思えない。

 だがどうやら、こいつが大将じゃないようだな。


「チャンクー、この状況がどういうことかわかっているか?」


「あ? なんだ? 俺は今からあのバッタの群れをどうやって壊滅させるか考えてるとこなんだ」


「そのバッタの群れが重要なんだ。よく見ろ、黒かったり、黄色がかったりしてるだろ。あれは群生相のバッタだ。今アフリカ大陸では蝗害が起きている。そして、知性のないバッタどもを指揮するやつがいる」


 ! 本来なら本能の赴くままに草を食い荒らすだけのバッタたちが、目的をもって移動先を決めることができる。情報を活用している! それは自然の動物ができる芸当ではない!


「俺たちの敵は相当なやり手のようだなジダオ」


「楽しみになってきたなチャンクー。だが、そいつらに攻撃され続けている人類が心配だ。こいつをさっさとぶちのめして人里を探すぞ」

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